2011年にクイズ番組「ジョパディー」で世界にデビューして以来、IBMのWatsonは、医療研究から金融まで、大規模企業アプリケーションの強力な人工知能プラットフォームとしてその名を築き上げてきた。このたびIBMは、Watsonを消費者に提供しようとしている。
今日(米国時間1/6)CES会場で、IBM CEOのGinny Romettyは、スポーツウェアメーカーのUnder Armour、Softbank RoboticsのPepper等、Watsonの機械学習アルゴリズムとAIを使って、高知能でよりパーソナライズされたアプリやサービスを動かしている会社との戦略的提携を発表した。これはIBMのWatson拡大における最新ステップだ。昨年同社は、コグニティブ・ビジネス・ソリューション部門を立ち上げ、ドイツには独立したIoTセンターを作った。そして今日のステージでRomettyは、自社の専門知識とデータを構築するために、IBMが30社に上る買収を行ったことも明らかにした。
Under Armourは、Watsonをフィットネス・健康アプリで利用すと言っている。同社のRecordアプリ ― アクティビティー集約およびモニター(Jawbone、WithingsおよびGarminのウェアラブルからのデータを統合する)アプリとして1年前に公開された - の新バージョンには様々なAI機能が追加された。
最初が “just like me”機能で、ユーザーを匿名の他ユーザーらと比較して、その人の実績に関する洞察、助言を与える。いずれはCognitive Coaching Systemと呼ばれるSiri風のパーソナルトレーナーも加わる予定だ。Recordに今出来るのは、ユーザーの活動、睡眠、および栄養データに基づいて、実績を改善するための助言を提供することだ。
Recordは、IBMとUnder Armourの第一ステップだと両社は言っており、今後はIBMが蓄積している広範囲なビッグデータ(一部は同社のWatsonアプリケーションを通じてデータを解析している)を、アスリートが利用できるアプリも作る計画だ。その中には、天候が実績やトレーニングに与える影響等、興味深いデータ分析もみられる(IBMがThe Weather Companyを買収した意味がわかるだろう)。
「デジタル医療やフィットネスの記録といえば、過去10年間はデータ収集がすべてだった」とUnder Armourのファウンダー・CEO、Kevin Plankは言った。「現在われわれは、転換機にあり、消費者はこの情報からもっと多くのものを引き出すことを要求している」。
具体的には「戦略的」とは何を指すのか。IBMによると、両社は従業員、技術、およびその他のリソースを提供して、コグニティブ・コーチング・システムを開発している。
SoftbankのPepper
IBMは日本のソフトバンクとも、Pepperの開発で提携しており、この新型ロボットは初めての海外出荷が始まっている。
Watson内蔵のPepperは、画像やテキストからソーシャルメディア、ビデオに到るまで幅広いデータソースを利用する。なぜか? IBMによると、これはロボットに「人間と同じやり方で ― 五感、学習、体験 ― 世界を理解する能力を与えるものだと言う。
「これはもうSFの世界の話ではない」と、ソフトバンクの宮内謙COOが今日のステージで語った。
Watsonを頭脳に持つ最初のロボットたちは、接客あるいは小売りの分野で試行されるとIBMは言っている。同プラットフォームの直接体験を初めて広い範囲人々に提供する。これはPepperのようなロボットが、店員を置き換えようというものではなく、既に人間を置き換えている無味乾燥なキオスク端末に取って代わるものだ。
「今日の小売店におけるセルフサービス方法といえば、タブレットまたはキオスクで、顧客体験が対話的であるか直感的であるかという点では、まだ限られている。ロボッティック・アシスタントなら、ユーザーは自然な会話が可能になり、言葉だけでなく身振りや表情も理解される」とIBMは書いている。
日本では、すでにその一部が動き始めている。Romettyによると、既に数百台のPepperが日本のネスレ小売店や銀行に置かれており、コーヒーマシンで、顧客が短いQ&Aの後に購入するといった使い方がされている。2015年中頃の発売以来、Pepperロボットは限定生産台数を完売している。
実はPepperは、単なるB2B製品ではない。WatsonをSDK経由でPepperロボットに載せることによって、デベロッパーはその動作を好み通りに変更できる。
Watsonが最初にソフトバンクと仕事をしたのは昨年のことで、Watsonが日本語を学習する目的もあった。
他に今日Romettyが話した、Metronicの新しい糖尿病検査に関する提携では、低血糖症を実際に発症する何時間も前に検知して未然に防ぐことが可能になる。Under ArmourやSoftbankのとの提携と異なり、検査システムには認可手続きが必要となるためまだ商品は販売されていない。
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook)