Impossible Foodsの元データサイエンティストが機械学習を活用してチーズ業界に参入、8億円を調達

Oliver Zahn(オリバー・ザーン)氏の最初の職業は星の研究だった。データサイエンスを利用して動物性タンパク質を植物性の代替製品に置き換えるスタートアップClimax Foodsの創業者である彼は、カリフォルニア大学バークリー校で空を凝視しながら数年を過ごし、その後、Pat Brown(パット・ブラウン)氏とImpossible Foodsを知り、同社の主席データサイエンティストになった。

この経験のため、ザーン氏は空よりも地上の物に関心を持つようになり、Climax Foodsを立ち上げるに至った。

そして今や、Google Xの共同創業者であるTom Chi(トム・チー)氏が興したAt One VenturesをはじめManta Ray VenturesやS2G Ventures、Valor Siren Ventures、Prelude Ventures、ARTIS Ventures、Index Ventures、Luminous Ventures、Canaccord Genuity Group、Carrot CapitalそしてGlobal Founders Capitalなどから750万ドル(約8億円)を調達して、ザーン氏は食べ物の未来に挑戦することになった。

投資家への売込みはJust Food(元Hampton Creek)のJosh Tetrick(ジョシュ・テトリック)氏と似ており、シンプルでエレガントだ。自然界には今、動物から作られて製品化されているものと同等、もしくはそれよりも優れた性質のタンパク質がある。話の骨子はそれだけだ。

では、動物製品の何がそれをおいしいと感じさせるのだろう。同社は植物の中にそれと同等な物を見つけて、生産を開始するつもりだ。

データサイエンスの応用がどれもそうであるように、ここでも分類学が鍵となる。Climax Foodsは、分子の構造を処理して相互参照して、最適なものを見つけ出す機械学習のアルゴリズムを構築している。同社はそれを、チーズで始めた。

チーズのような平凡な物に天体物理学に匹敵するほどの挑戦価値があるとは思えないが、現在ではさまざまな企業が、数億ドル(数百億円)を調達して大規模な乳業業界に挑戦しているのだ。

「工業化によって爆発的な人口の増加と動物製品の消費が可能になったが、そんな時代は終わろうとしている。今日では哺乳類動物の90%以上、そして地球上のすべての鳥類の70%以上が、植物の代謝というたった1つの目的のために存在し、食糧に換えられている。この産業は複雑で無駄が多い。そして気候変動の原因としては、地球上のすべての自動車を合わせたよりも大きい。しかも、地球上の水と利用可能な土地の1/3以上を使っている。Climax Foodsは、食品科学のイノベーションを加速することで、環境への悪影響なく植物を美味な食品に換えることができる」とザーン氏は声明で述べている。

チーズの巨大産業複合体とそのミルク製の怪物を倒すクエストでザーン氏の仲間になったのは、業界の経験豊富なベテランたちだ。まず共同創業者のCaroline Love(キャロライン・ラブ)氏は同社のCOOで、以前はJust Foodの営業と業務担当役員だった。そしてPavel Aronov(パベル・アロノフ)氏は、スタンフォード出身の化学者で、これまで巨大化学企業であるThermo Fisherにいた。

植物タンパクの分野に大きな投資をしているS2G VenturesのSanjeev Krishnan(サンジーブ・クリシュナン)氏は、次のように語っている「Climax Foodsは市場と食品の体系を変えるという類似他社と同じ機会に取り組んでいるが、しかし彼らの技術的アプローチはまったく新しい。彼らはデータサイエンスを利用して、新しいカテゴリーの食品を作ろうとしており、それらは既存の動物製品と競合するだけでなく、味や栄養密度そして価格の面でそれらに打ち勝つ素質がある。Climax Foodsが開拓中のマシンインテリジェンスによるアプローチは、究極のデジタルレシピを作るために用いられるおびただしい数の原料や自然な加工技術を正しく有効に活用していくために欠かせない技術である」。

クリシュナン氏は、植物タンパクの企業として最も成功している上場企業であるBeyond Meatにも投資している。

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カテゴリー:フードテック

タグ:Climax Foods 資金調達

画像クレジット:Steven Lilley/Flickr CC BY-SA 2.0のライセンスによる

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

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TechCrunch Japan

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