inahoは10月3日、自動野菜収穫ロボットの従量課金型のビジネスモデル(RaaS、Robot as a Service)を正式にスタートさせ、佐賀県の農家に第1号となるロボットを導入した。市場の取引価格×収穫量の一部を利用料として徴集する従量課金の料金体系を採っており、農家は初期導入費を抑えられるほか、故障によるメンテナンス費が不要なのが特徴だ。
ロボットのサイズは、全長125×全幅39×55cmで、重さは約65kg。バッテリーで駆動し、フル充電で最大10時間の連続駆動ができる。バッテリーは家庭用コンセントに接続して充電可能だ。このロボットでアスパラガス1本を12秒ほどで収穫できるという。
ロボットは、移動、探索、収穫という一連の流れで自動運転する。具体的には、畑に設置した白い線に沿ってルート走行するため、ビニールハウス間の移動や夜間の利用もOK。操作には専用アプリをインストールしたスマートフォンを使うが、遠隔でコントロール可能だ。また、ロボットが詰んでいるカゴが収穫物でいっぱいになった場合はスマーフォンに通知が届く。収穫する野菜の大きさはセンチメートル単位で指定できるほか、収穫対象となる野菜はロボットが内蔵するAIを活用した画像認識により枝や茎と判別したうえで、設定したサイズ以上のものだけがカゴに入れられる仕組みだ。
収穫するための手には医療用のロボットアームをカスタマイズしたもので、収穫物にキズを付けずにカゴに入れられるとしている。同社では収穫できる野菜の種類を増やすことを計画しており、将来的にはアスパラガスのほか、トマトやイチゴ、キュウリなど目視が必要な野菜を中心に対応作物を広げていく。今後さまざまなデータを収集し、農家へ生産性向上のアドバイスなども実施していくという。
同社は今後の目標として、ロボットの生産台数を今年中に数十台、2020年に数百台、2022年には約1万台を目標としており、九州を中心に新たに拠点を開設していく。さらに2020年にオランダに拠点を開設し、グローバル展開も目指すという。
農林水産省が公開している「農業構造動態調査報告書」や「農林業センサス」によると、基幹的農業従業者数は2010年の205万人から、2020年には152万人、2030年には100万人と20年間で半減しているうえ、施設園芸農家数、面積ともに過去15年で約25%減少。1戸当たりの施設面積も規模拡大が進んでいないなど、国内農業を取り巻く現状は非常に厳しい。
同省の「農業労働力に関する統計」や「2017年農業構造動態調査」によると、農業就業人口や基幹的農業従事者の平均年齢は約67歳、49歳以下の割合は約10%というデータもある。これらのデータから、国内農業は高齢の現役世代に支えられており、後継者がいないため年を追うごとに従事者が減るという悪循環に陥っていることが浮き彫りになってくる。
inahoは、農業従事者数の減少と高齢化を食い止めるため、開発したロボットの初期導入コストやランニングコストを抑えられる従量課金のRaaSモデルを選んだ。初期導入費用が高額になればなるほど、跡継ぎ問題の解決を含めて農家側に長期的な経営展望が必要だが、それを高齢の現役世代に求めるのは難しい。従量課金であればとりあえず導入してみることも容易だ。まずはロボットを導入してみて人件費や労働時間の削減、収穫量の安定化が図れれば、作付面積の拡大などに着手できるだろう。ロボットとの共働で農業で安定的な収益を確保できるようになれば、後継者問題も自然と解決するはずだ。