2008年に立ち上がったクラウドファンディングサービスIndiegogoでは、支援者が何らかの“特典”と引き換えに資金を提供していた。昨年同社は、スタートアップ活性化法JOBS actに規定されているエクイティ・クラウドファンディングを取り入れた。そして今年後半には、支援者が特典とエクイティ権の両方を同時に手にする方式を導入する予定だ。〔*: エクイティ(equity)≒株、会社の将来の利益を分有する権利、権利証書。従来のクラウドファンディングの支援金の法的性質は“寄付”なので、エクイティ・クラウドファンディングはしばしば、支援者特典のある寄付ではなくて株式を得られる投資、“投資型クラウドファンディング”、と仮訳される。〕
IndiegogoのCEO Dave Mandelbrotは今日(米国時間1/6)のCESの会場で、こう語った: “企業がクラウドファンディングで初期から市場に認められるこの方式は、本当にすばらしい。エクイティ方式に関する反応は、すでにとても大きい”。
アイデアよりもプロダクト重視の企業に利点
ほぼ1年前から同社は、プロダクト主導のキャンペーンをとくに重視するようになった。それは必ずしもテクノロジー企業優先という意味ではないが、同社のクラウドファンディングのルーツであるチャリティやメディア制作(音楽、映画など)などのプロジェクトは軽視された。
Mandelbrotは述べる: “うちのサイトには今でも、アートの活動努力のための余地は十分にあるけど、でもわれわれは、プロダクトのローンチ、プロダクトのデリバリを助けることを重視したい。もちろんうちは最良のクラウドファンディングプラットホームでありたいが、マーケティング、ロジスティクス、良いパートナーを見つける、などなど、資金獲得の前や後(あと)のこともヘルプすることが重要だ。プロジェクトの所在が世界のどこであっても、彼らの起業のすべての要素を、できるかぎり支えていきたい”。
これまでの、製品の事前注文のような形を取る支援者特典と、エクイティクラウドファンディングが組み合わさるのは、時間の問題だった。
その二つには、それほど大きな違いはない。FacebookがOculusを大金を投じて買収したときは、KickstarterでOculusを支援した連中が怒り狂った。支援者の言い分は、未知の企業のリスクを引き受けたのは自分たちである、でも利益はすべてファウンダーたちが取ってしまう、というもの。これが正しいクラウドファンディングの精神なのか、そうでないのか、は別の議論だが、Kickstarter自身の見解は明白だ: 法的には、Oculusを支援した者には何の権利もない。ZuckがOculusのチームに投げ与えたキャッシュの束のわずかひときれすら、彼らに要求する権利はない。
「現物」+「株式」の二足のわらじ
クラウドファンディングの期間中には、おもしろい動きが見られる。それは、ほかの場所ではありえない、リアルタイムの情報開示だ。すなわちキャンペーンをやってる間、潜在的投資者はリアルタイムで、プロジェクトの作者が支援者からの質問にきちんと応答したか、どれだけの数の支援者が集まっているか、などなど、パフォーマンスを表す測度を見ることができる。
ぼくの個人的な経験でも、成功するクラウドファンディングキャンペーンは支援者が実際にそのプロダクトを買おうかと思うから、質問が殺到するが、でも彼らはそんな、プロダクトの予約買いのようなものだけでなく、あと2000ドルぐらいをまともに投資したいのだ。今度の新しい方式では、その両方(予約特典と投資)が可能だ。
この、特典+投資方式のキャンペーンの、具体的な形はまだ明確でない。SECがこれを認め、そしてIndiegogoに、まったく新しい方式に対する十分な事務能力があれば、新しいプロダクトを世に出したくてうずうずしている若いスタートアップにとって、新しい世界が訪れるだろう。