Apple(アップル)は9月に、米国のユーザーが自分のデバイスから健康調査に参加できるアプリの計画を発表していた。米国時間11月14日、米国でiPhoneとApple Watchのユーザー向けにそのアプリが公開された。この「Apple Research」アプリから、ユーザーは現時点では3種類の調査に参加できる。女性の健康調査、心臓と運動に関する調査、聴覚に関する調査だ。
アップルはこれまでも研究者や医療機関とともに調査をしてきたが、参加するユーザーは自分のiOSデバイスに調査ごとの専用アプリをインストールする必要があった。このほどリリースされた「Research」アプリには参加に関するアクティビティがまとめられていて、複数の調査に参加したいユーザーにとってはシンプルになる。
アップルのデバイス(そしてそこに内蔵されている多くのセンサー)から収集されたデータを利用して、研究者はこれまでは不可能だった大規模な健康調査を実施することができる。アップルは、これまでこの種の調査には費用と時間が必要だったが、これからはユーザーが参加することで心臓、運動レベル、アクティビティ、騒音など、健康に関する情報を研究者に直接共有できるとしている。
アップルのプライバシーに関する取り組みは、ここでも同様だ。データの共有はユーザーのコントロール下にあり、データは暗号化され、販売されることはなく、研究者はユーザーに対しデータがどう活用されるかを知らせなくてはならない。そして参加者はいつでも参加を取りやめることができる。
最初にスタートする3つの調査のうちの1つは、ハーバード大学T.H. Chan公衆衛生大学院および米国国立環境健康科学研究所と連携した女性の健康調査だ。この調査は、女性の月経周期と不妊、骨粗鬆症、更年期、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)との関係を明らかにすることを目的としている。この調査では、iPhoneの「ヘルスケア」アプリまたはApple Watchの「周期記録」アプリから、ユーザーの周期記録のログを収集する。
心臓と運動に関する調査では、米国心臓協会およびブリガム・アンド・ウィメンズ病院と連携する。この調査では、ワークアウト中のデータに加え、心拍数とアクティビティのデータがApple Watchから収集され、簡単なアンケートも実施される。このデータは、運動のシグナルおよび心拍数とリズムから、心房細動、心臓病、運動能力の低下などの早期発見につながるサインを発見できるかを研究するために使われる。
聴覚に関する調査ではミシガン大学およびWHO(世界保健機関)と提携し、iPhoneやApple Watchの「ノイズ」アプリからユーザーがさらされている音に関するデータを集める。アンケートと聴覚検査も実施する。この研究では、大きな音が検出されたときに「ヘルスケア」アプリの通知によってユーザーが自分のリスニング行動を変えるかどうかも調査される。
アップル最高執行責任者のJeff Williams(ジェフ・ウィリアムズ)氏はアプリの発表の中で次のように述べている。「今日はアップルが健康調査に乗り出した重要な日だ。この取り組みは、医療関係者が長く求めていた領域に大きな成果をもたらすだろう。「Research」アプリの参加者は、新しい発見につながり健康な生活に貢献できるような、とてつもない影響を生み出すことになる」。
iPhoneとApple Watchで利用できる「Research」アプリは米国で配布されている。
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(翻訳:Kaori Koyama)