Juggleが210万ドルを確保、上級管理職の「柔軟な働き方」を促進するSaaSマーケットプレイスの拡大を目指す

ご存知の通り、世界はCOVID-19パンデミックによって大きく様変わりし、一部のスタートアップ企業はビジネスモデルの軌道修正を余儀なくされている。一方で、創業当時は夢にも思わなかったものの、自社のビジネスモデルがこんな時代にほぼぴったりであることが明白になった企業もある。

わかりやすい例として、SaaSマーケットプレイスのJuggle(ジャグル)がある。元々はエグゼクティブレベルの女性が結婚や出産の後に仕事に柔軟に復帰しやすくするためのマーケットプレイスとして設計されたもので、その後さらに、自由に働きたい人やそういったタイプの人材を必要とする雇用主も対象に市場を広げてきた。パンデミックによって世界が一変した今、最も重要とされているのがまさにこの「柔軟性」である。

Juggleの発表によると、同社は英国と米国の投資家から210万ドル(約2億2千万円)の資金を集めたという。これには、英国有数のエンジェル投資家が含まれているほか、Oxford CapitalSocial Capital7percent Venturesも名を連ねている。その他にも、Oculusを支援したAndrew Gault(アンドルー・ゴート)氏、シリアル投資家のAndreas Mihalovits(アンドレア・スミハロヴィス)氏、Magic Ponyを支援したAndrew J. Scott(アンドリュー・Jスコット)氏、Casperを支援したCharlie Kemper(チャーリー・ケンパー)氏、Charlie Songhurst(チャーリー・ソングハースト)氏、Uberの初期メンバーのCurtis Chambers(カーティス・チャンバー)氏、企業家で投資家のPip Wilson(ピップ・ウィルソン)氏、東海岸投資家のRajiv Kapoor(ラジーブ・カプール)氏といったそうそうたる顔ぶれがそろう。

リモートワーク、パートタイム、役割分担など多くの企業が柔軟な働き方へ移行するのに伴い、Juggleは「9時から5時」の勤務時間を基本とする人たちではないプロフェッショナルと企業を結び付けている。

仕事における柔軟性とは、働く時間や場所はもちろん、ジョブシェアリングなどの働き方にも及ぶ。英国の1996年雇用権利法により、26週間以上勤務している従業員には理由に関係なく、柔軟な働き方を要求する制定法上の権利がある。つまり、Juggleにとって状況はそろっている。Avivaの2019年のレポートによると、英国の従業員の5分の1は受け入れられるはずがないと柔軟な働き方を要求するつもりはなく、35%はより柔軟な働き方を雇用主に要求しづらいと感じている。しかし、従業員の5分の1以上がより柔軟な働き方を求めて転職または部署を異動しており、約半分は自分のワークライフバランスのニーズに合った新たな役職が提示されれば変わることも検討するという。つまり、こういった人たちの受け皿となるプラットフォームを用意すれば、同社は他の方法では働きたくないと考えている多くのプロフェッショナル達を拾い上げることができるだろう。

プロフェッショナル達は同サービスにサインアップすると、求人ツールを使って求職の申し込みをスケジュールして管理できるほか、コーチングやサポートも利用できる。またJuggleは「スマートマッチング」や柔軟な働き方に備えるための必要な事務処理の機能も提供する。求人にJuggleを利用する企業は、柔軟な働き方に確実に対応できるか事前に調査されるため、雇用主と雇用者の双方にミスマッチが生じることはない。

かつてヘッドハンターであったRomanie Thomas(ロマニー・トーマス)氏が創設したJuggleの基本使命は、2027年までに企業の経営幹部の50%を女性にすることだという。2017年の創業以来、Juggleによる全職業斡旋の62%が女性であった。

画像クレジット:Juggle

「これまでシニアエグゼクティブのヘッドハンティングで数々の成功を収めてきましたが、その一方で優れた社員が出産のために退職し、なかなか復帰できない様子を見てきました。企業は申し分のない候補者でも、個人の要望に合わせた契約設定が面倒なために採用を見送り、社員は自分にとって最も効率的で生産性の高い方法で働けるようにするための変化を要求することはありません。柔軟性を持つことで人々はエネルギーとスキルを最大限に発揮できるため、これを実現できれば雇用主にとって莫大な利益になります」とトーマス氏は述べている。

Juggleには同社のB2Bプラットフォームを使っている多様な企業が集まっており、Reallife Tech、Hopster、Hubble、White-Hatなどがクライアントに名を連ねている。

7percent Venturesの創設パートナーであるAndrew Gault(アンドリュー・ゴート)氏は次のようにコメントしている。「現在のパンデミックは私たちの仕事のあり方に今後もずっと影響を及ぼしていくことでしょう。私たちが重大な変化の瀬戸際にすでに立たされていたとき、Juggleは先手を打って先回りしていました。多くの雇用主や雇用者が柔軟な働き方に目を向けるようになった今、Juggleは企業と人材を適正にマッチングし、幅広い知識を提供して柔軟な働き方を実現する態勢を完璧に整えています。データによると、優れた柔軟性はだれにとっても有益であり、また優秀な女性たちに上層の役割に就いてもらえるようになるため男女格差にも大きな影響を及ぼすことになるでしょう」。

TechCrunchのインタビューでトーマス氏は次のようにも付け加えている。「この会社自体、私の個人的な挫折とヘッドハンターをしていて企業の経営層に女性がいないことを肌で感じていたことから生まれました。企業にあるのは男性用の回転ドアだけのように見えました。男女比を均等にするには柔軟な働き方が重要です。Juggleで私たちが扱うセグメントは技術的なものではなく、一般的には技術プラットフォームの対象外です。しかし、プロフェッショナルが柔軟な働き方でキャリアを積上げられる環境を作ることには、製品としてのチャンスがあります。問題は実際には女性ゆえの問題ではなく、人間の問題なのです。私たちが女性ばかりに注目してしまうと、私たちがやっていることはすべて男女の役割を固定させてしまうことになります」。

同氏によるとJuggleは、現代の労働者の需要に適応していない従来型の人材紹介業界にもその手を伸ばすつもりだと言う。「私たちが直面している労働力の問題は技術プラットフォームを使って解決する必要があります。そもそも問題を作った従来型の業界だけでは何も解決しません」。

パンデミックを受けた今、性別や多様性に対する時代遅れの姿勢によって後れを取っているこれら既存の産業に立ち向かうスタートアップに終わりはないように思われる。

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カテゴリー:ネットサービス
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(翻訳:Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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