Match Groupが素性調査を行う非営利団体Garboに数億円の資金を投資

Tinder(ティンダー)、Match(マッチ)、OkCupid(オーケーキューピッド)、Hinge(ヒンジ)など、人気出会い系アプリの親会社であるMatch Group(マッチ・グループ)は、素性調査プラットフォームGarbo(ガーボ)に7桁ドル(数億円)の投資を行ったと、米国時間3月15日発表した。Match Groupのユーザーがオンラインで相手を選ぶときに、適切な情報を元に判断できるようにするのが狙いだ。この取り引きにより、MatchはGarboと親密に協力し合い、2021年後半にはTinderに素性調査技術を組み込み、その後、Match Groupが米国で展開している他の出会い系アプリにも導入していく予定だ。

ニューヨークを拠点とするGarboは、2018年、Kathryn Kosmides(キャサリン・コズミズ)氏によって設立された。コズミズ氏はジェンダーに基づく暴力の被害から立ち直った人物であり、暴力事件を起こした経歴が疑われる人物に関する重大な情報を、誰もが簡単に調べられるようにしたいと考えた。

画像クレジット:キャサリン・コズミズ氏(Match Group)

通常、非営利団体によって提供される素性調査サービスは、麻薬犯罪や軽い交通違反など、広範にわたる個人情報を表面化させてはくれるが、必ずしも暴力や虐待に関連するものとは限らない。しかも、料金は立場が弱い側のコミュニティに課せられることが多く、ジェンダーに基づく暴力には対応していないとGarboは指摘する

Garboは逮捕、有罪判決、接近禁止命令、迷惑行為、その他の暴力犯罪などに関連する公共の記録と、暴力や虐待に関する報告のみを収集し、低価格で素性調査サービスを提供している。このサービスは、相手の氏名、またはファーストネームと電話番号を入力するだけで利用できる。出会い系アプリに登録される個人情報は、大抵はこの程度しかないからだ。

するとこのサービスは「公正素性」チェックを行う。つまり、調査結果から麻薬所持容疑や飲酒または麻薬を使用しての運転、危険運転致死罪などを除外した内容が示される。

2020年、Garboはニューヨーク市エリアの500人を対象に、この技術のベータテストを実施した。するとたちまち、口コミだけで予約希望者が6000人にまで膨れ上がった。後にGarboは、この技術が全国規模で展開できる可能性を感じてテストを中止した。一般公開する前に、その準備を整えたかったからだ。

金銭的な支援をほとんど受けていない小さな非営利団体であったGarboは、そのためには大規模なパートナーが必要だと気がついた。その後、コズミズ氏はMatch Groupの安全関連の新責任者Tracey Breeden(トレイシー・ブリーデン)氏と知り合い、両者は、その技術を米国中のもっと多くのオーディエンスへ届けるために協力し合うことで合意した。

「あまりにも長い期間、世界中の女性や社会から阻害された人々は、数々の障壁に阻まれ、資源と安全から遠ざけられてきました」と、Match Groupの安全および社会的擁護責任者のブリーデン氏は、本日のニュースに関する声明の中で述べている。「企業は、そうした障壁を、テクノロジーと行動に根ざした真の協働によって取り除く役割を果たせるものと、私たちは認識しています。Match Groupとの提携により、Garboの思慮深く画期的な消費者向け素性調査は、情報による力と権利を利用者に提供し、テック界全体における安全な人間関係とオンラインコミュニティに通じる公平な道作りの一助となります」と彼女は話す。

Match Groupによる出会い系アプリの機能強化を目的とした外部の安全技術提供者への投資は、これで2回目になる。2020年初め、同社は、Tinderとその他の出会い系アプリに新たな安全機能を組み込む目的で、Noonlight(ヌーンライト)に投資を行っている。これは、ProPublica(プロパブリカ)とColumbia Journalism Investigations(コロンビア・ジャーナリズム・インベスティゲイションズ)が2019年12月に共同執筆した記事で激しく非難されたことを受けての対応だ。この記事では、Match Groupが既知の性犯罪者たちにアプリの使用を認めていたと伝えている。さらにMatch Groupには同社の出会い系アプリ利用者の素性調査に一環した指針がなく、利用者の安全は、利用者自身に責任を押しつけていたとも指摘している。

それに対して、Tinderの最大のライバルであるBumble(バンブル)は、Tinderのような旧来の出会い系アプリよりも女性に優しいことを売り言葉にし、悪質な人間から利用者を守るためにデザインされた機能を数多く展開した。最も新しいものとしては、悪質な人間が「Unmatch」(マッチ解除)を利用して自分の素性を隠す行為を阻止する手段がある。

「安全ではない」アプリという評判は、Tinderのみならず、オンライン出会い系アプリ業界全体に重大なダメージを及ぼすため、Match Groupがその問題に対処するための直接投資を決めたことは納得できる。例えばNoonlightへの投資では、Uber(ウーバー)やLyft(リフト)が採り入れているものと似た、Tinderアプリの中で目立たない形で緊急通報できる機能や不正防止対策などの導入をMatch Groupは約束した。

Match Groupによれば、Garboはこの新しい資金を使って、製品、エンジニアリング、管理を担当する人材を雇用する予定だ。これには、エンジニアリングの責任者や中心的チームとなるエンジニア5人なども含まれる。このチームは、自然言語処理やAIなどのテクノロジーを駆使して、Garboの数々の能力を構築することになっている。

Garboはまた、Match Groupからの時間と資源の多大な貢献に力を得て製品を完成させ、それをTinderを手始めに、Match Groupの各製品に展開していく。一方Match Groupは、Garboの技術を、配車サービスなどの他のプラットフォームでも利用できるようにする同非営利団体の取り組みを後押しする。

ただし、Tinderで展開される場合は素性調査は有料になる。

とはいえMatch Groupでは、利用者の反応、どれだけの人が使いたがるか、どれほどの調査を利用者が求めるかなど、さまざまな要素に基づいて価格を設定すると話している。また、どれだけ深く統合するか、つまり、アプリからGarboへの外部リンクにするのか、アプリ内の一機能のようになるのかなど、そのかたちも未定だ。

Match Groupでは、この機能を展開する時期をTinderは「2021年後半」、他の出会い系アプリはそれ以降と述べるだけで、具体的には示していない。同社では、今後数カ月内に、米国以外の利用者に向けたサービスのための同類の投資を行うことも検討しているようだ。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Match GroupGarbo投資マッチングアプリジェンダー

画像クレジット:Tinder

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(文:Sarah Perez、翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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