Microsoft Azureは近年、競合他社と同様、企業が単一のプラットフォームを使ってクラウドや自社のデータセンターの仮想マシンやコンテナを管理できるツールを数多く発表してきた。その主要なツールがAzure Arcだ。Microsoft(マイクロソフト)は米国11月2日のIgniteカンファレンスで、Arcの新機能やハイブリッド及びマルチクラウドのラインナップ全体を紹介した。このイベントがITプロフェッショナルを対象としていることを考えれば、Igniteでの発表は驚くにあたらない。
「顧客は、何千、何万ものアプリ、データベース、サーバーを様々な場所で運用しています」とMicrosoftのAzure Edge and Platform担当コーポレートバイスプレジデントであるRoanne Sones(ロアンヌ・ソンズ)氏は話す。「規制は常に進化し、拡大しています。セキュリティ攻撃はますます巧妙になっています。一貫性をもってそれらに対応することは、セキュリティ攻撃が実行される環境の広がりを考えると、非常に難しくなっています。かなりの負担を強いられます。そこで同時に、クラウドに注目し、その革新的な乗り物に便乗したいと考えますが、クラウドに移行できないワークロードがあり、それは困難です。クラウドで利用できるものを、必要な場所と方法で実際に運用するには、どうすれば良いでしょうか」
ソンズ氏は、すべてを一貫して管理する方法を見つけることが第一歩だと主張する。最近のインフラの複雑さを考えると、道のりは幾分長い。MicrosoftはIgniteで、管理を容易にするいくつかの新しい統合機能を紹介した。その中には、Azure Stack HCI、VMware vSphere、Azure Policy Guest Configurationとの統合が含まれる。例えば、Azure Stack HCI(HCIは「hyperconverged infrastructure=ハイパーコンバージドインフラ」の略)は、デフォルトでArcに対応する。また、vSphereユーザーは、AzureからセルフサービスのVMコントロールが利用可能になり、vSphereテンプレートに基づいてVMを管理できるようになる。さらに、Azure Arcは、以前のアップデートですでにArc対応環境でのモデルの構築とトレーニングが可能になっていたが、今回、機械学習の推論もサポートする。
「クラウドとエッジの間に完全な一貫性を持たせることができるようになりました」とソンズ氏は語る。「データを移動したくなければ、その必要はありません。これまでは、オンプレミスにデータを移動させる必要がありました。クラウドでは、Arcに対応したすべての機能を利用し、それを持ち帰ることができます。新しいフルライフサイクルを実現させたのです」
現在、Microsoftの顧客の多くは、そうしたAI機能を概念実証で使用しているが、必ずしも本番環境で使用しているわけではない。しかし、ソンズ氏によれば、すでにマルチクラウド環境でモデルを本番環境に投入し始めている顧客もいるという。これは、Azureの顧客(名の知れたユーザーとしてNokiaがいる)が、規制の多い業界で活動していることが大きな理由だ。
オンプレミスの利用に配慮した、もう1つの関連する新機能は、Azure Virtual Desktopsの提供開始だ。顧客のオンプレミスのデータセンターにあるAzure Stack HCI上で、マルチセッションのWindows 10および11のデスクトップインスタンスをクラウド上で実行する機能だ。ソンズ氏によると、これは規制産業のユーザーが求めていた機能だが、こうしたローカルでの展開は、レイテンシーが問題となる場合でも重要だ。
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画像クレジット:sedmak / Getty Images
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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nariko Mizoguchi)