MITがテスラ車ドライバーは「オートパイロット使用時に注意散漫になる」研究結果を発表

今週末までには、数千人のTesla(テスラ)車ユーザーが、同社の「Full Self-Driving(フル・セルフ・ドライビング)」と呼ばれる機能の最新ベータ版ソフトウェア(バージョン10.0.1)を、公道で試すことになる可能性がある。だが、米国の規制当局や連邦政府は、いくつかの顕著な事故が起きていることを踏まえ、このシステムの安全性を調査している

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テスラの「FSD」や「Autopilot(オートパイロット)」システムは、名前から想像するのとは違い、実際には完全な自動運転が可能なシステムなどではなく、いわゆる先進運転支援システム(ADAS)に過ぎない。マサチューセッツ工科大学(MIT)は、このシステムが実際にはそれほど安全ではないのではないかという懸念を裏づける新しい研究結果を発表した。人間のドライバーが開始させた同社の運転支援システムが解除されるエポックのデータ290件を調査した結果、部分的にこのシステムを使用している場合、ドライバーが不注意になる傾向があることがわかった。

「視覚的な行動パターンは、『Autopilot』の解除の前後で変化する」とこの研究報告には書かれている。「システム解除前のドライバーは、手動運転に移行した後と比較して、路上を見る回数が少なく、運転に関係のない領域に集中している。手動運転に切り替わる前は、視線が道路から外れている割合が大きく、より長く前方に視線を向けて補われることはなかった」。

テスラのElon Musk(イーロン・マスク)CEOによれば、(オプションとして設定されている)FSDソフトウェアを購入したすべての人が、より多くの自動運転機能を約束するこの新しいベータ版を利用できるわけではないという。テスラはまず、ドライバーが十分な注意力を維持していることを確認するために、テレメトリーデータを使って、7日間にわたって個人の運転指標を取得する。このデータは、所有者の車両を追跡する新しい安全性評価ページにも使用される可能性がある。このページは保険にリンクされる。

MITの研究は、ドライバーがテスラのAutopilotシステムを推奨通りに使用していない可能性があることを示すものだ。Autopilotには交通状況に合わせて機能するクルーズコントロールや、自動的にハンドルを制御するオートステアリングなどの安全機能が搭載されているため、ドライバーは注意力が低下し、ハンドルから手を離すことが多くなる。このような行動が起きるのは、ドライバーがAutopilotの機能やその限界を誤解していることが原因である可能性があり、この機能がうまく働くほど、それらの誤解は強化される傾向があることを研究者たちは発見した。タスクが自動化されたドライバーは、視覚的・身体的な注意力を維持しようとすると自然と飽きてしまい、それがさらに不注意を生むと、研究者たちは述べている。

「A model for naturalistic glance behavior around Tesla Autopilot disengagements(テスラオートパイロット解除時の自然な視線の行動モデル)」と題されたこのレポートは、テスラの「Model S(モデルS)」および「Model X(モデルX)」のオーナーの日常生活を、1年以上にわたってボストン全域で追跡調査した後にまとめられたものだ。調査対象となった車両には、CAN-BUSとGPS、そして3台の720pビデオカメラから継続的にデータを収集する「Real-time Intelligent Driving Environment Recording(リアルタイム・インテリジェント運転環境記録)」データ収集システムが搭載されていた。これらのセンサーは、車両の運動、ドライバーと車両制御装置の相互作用、走行距離、位置情報、ドライバーの姿勢、顔、車両前方の景色などの情報を提供する。MITは約50万マイル(約80万キロメートル)分のデータを収集した。

この研究に関わった研究者たちは「自然主義的なデータに基づき、自動運転下におけるドライバーの注意力の変移の特徴を理解し、ドライバーが運転タスクに十分に従事し続けるためのソリューションの開発を支援することができる」という視線行動のモデルを作り上げた。これは、ドライバー監視システムが「不規則な」視線に対処するために役立つだけでなく、自動化がドライバーの行動に及ぼす安全上の影響を研究するためのベンチマークとしても利用できる。

Seeing Machines(シーイング・マシーンズ)やSmart Eye(スマート・アイ)のような企業は、すでにGeneral Motors(ゼネラルモーターズ)、Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)、Ford(フォード)などの自動車メーカーと協力して、カメラを使ったドライバー監視システムを、ADAS搭載車に導入するだけでなく、飲酒運転や運転障害による問題にも対応している。技術はすでに存在しているのだ。問題は、テスラがそれを使おうとするかどうかである。

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画像クレジット:Bloomberg / Contributor under a license.

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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