3Dプリントが一般消費者に普及しない理由は山ほどあり、スピードは主な理由の一つではないが、上位の理由ではある。硬貨よりも大きなものをプリントしようと思ったら、そう、先月亡くなった偉大なる哲学者がかつて言ったように、その仕事のいちばん困難な部分は待つことだ。
ただし、この研究は実用化まであと数年は要するだろうが、でもMITのエンジニアたちは、3Dプリンターを今の消費者製品の最大10倍まで速くできることを示した。彼らによると、これまで1時間かかっていたオブジェクトを、ほんの数分でプリントできるようになる。
プリントの方式は、今のデスクトップ3Dプリンターの多くが採用しているものと同じFDM(Fused Deposition Modeling, 熱溶解積層法)だ。溶融したプラスチックを層状に沈積して形を作る。MITは、プリントヘッドに工夫を加えることによって、そのスピードを上げた。たとえば、らせん状の機構でフィラメントを高速で供給し、プラスチックを従来のピンチローラー方式よりもしっかりと保持できる。
そのプリントヘッドはまた、レーザーを新たに設計されたプラスチック溶融機構の至近に置いて、相当速く溶けるようにした。またプリントヘッドを動かす移動台座も、プリントヘッドの可能なスピードアップに合わせて速く動く。
いつごろ市場に出回るか、という問題は、MITがこの技術をどこにライセンスするか、などにもよるだろう。
しかし准教授のJohn Hartはこう語る: “市場に出回るようになれば、とても嬉しいけど、そのために今後どんな経過をたどるのか、まだよく分からない。既存の3Dプリンターのメーカーにライセンスするか、自分たちで会社を興すか、どっちかだろうね”。
一般消費者ばかりでなく、今のデスクトップ3Dプリンターをプロトタイピング用に使っている企業も、スピードアップの恩恵は量り知れない。しかしFDMデスクトップ3Dプリンターの、もっと高度な応用技術になると、さらなる研究開発が必要だろう。