CFOは企業における全知のオーナーと考えられている。CEOが戦略や方針を設定し、文化を構築する一方で、CFOは組織内で起きていることをすべて把握する必要がある。収益はどこから来ていていつ届くのか?新規採用の費用はいくらでいつ支払われる必要があるか?どのようにしてキャッシュフローを管理し、どのような負債商品が不連続性の解消に役立つだろうか?
企業のクラウド移行が進むにつれて、これらの質問に対する回答が難しくなってきている。他部門が一元管理された記録システムとしてのERPを避け始めたからだ。さらに困ったことに、CFOは財務に関してこれまで以上に戦略的になることを期待されていながら、鍵となるデータが入手できないことで重要な予測や見通しに支障をきたしかねない。過去10年の間にマーケティングを実行するためのまったく新しいソフトウェアスタックがCMOに向けて導入されているが、CFOはどうだろうか。
Palantir(パランティア)出身の3人は、CFOたちがMosaicという新しいスタートアップに目を向けることを期待している。Mosaicは「戦略的財務プラットフォーム」で、ERP、HRIS、CRMなど企業のITを構成するあらゆる種類のシステムからデータを収集し、CFOとそのチームがより正確かつ迅速な予測を行うための戦略的プランニングツールを提供する。
Mosaicは2019年4月、Bijan Moallemi(ビジャン・モアレミ)氏、Brian Campbell(ブライアン・キャンベル)氏、Joe Garafalo(ジョー・ガラファロ)氏によって設立された。3人はパランティアの財務チームで15年以上も一緒に働いていた。その間、同社が百人ほどの小さな組織から数千人規模の従業員を持ち、百人を超える顧客を抱える組織へと成長するのを見てきた。昨年、パランティアが新規株式公開(IPO)を果たしたのは記憶に新しい。取引先は十数か国を超えているという。
戦略的な財務管理を実現することがパランティアの成功にとって不可欠だったが、既存のツールは同社のニーズに対応できなかった。そこでパランティアは独自のサービスを築き上げた。「CFO向けツールキットのデフォルトツールであるExcelの活用にとどまらず、コード作成のための技術チームを編成して組織全体にスピード、アクセス、信頼性、可視性を提供するツール構築を進めました」とMosaicのCEO、モアレミ氏は説明する。
ほとんどの組織が技術分野の人材をCFOのオフィスで使わざるを得ない状況で、3人の共同創設者はパランティアを去り財務の責任者として他に活動の場を移した。モアレミ氏は教育テック系スタートアップのPiazzaへ、キャンベル氏は訴訟管理スタートアップのEverlawへ、ガラファロ氏はブロックチェーンスタートアップのAxoniへ移り、それぞれ財務を改善する方法について考え続けていた。そしてパランティアのような成長をすべての企業で実現するために集結し、CFOオフィスのための優れたソフトウェア基盤を構築した。「この10年間でCFOのオフィスが大きく進歩したことには、デスクトップベースのExcelからクラウドベースのGoogleスプレッドシートへの移行が寄与しているでしょう」とモアレミ氏は続けた。
MosaicがCFOソフトウェアスタックの再構築に向けて取り組んでいるのはどのようなことだろうか。同社は企業全体をつなぎ、より協調的な形で財務に関する議論を行うための入り口となるプラットフォームを構築したいと考えている。財務部門の中心である報告と計画に焦点を当てながら、より多くの人々が起きていることを理解し、CFOにフィードバックできるように、ダッシュボードと予測を企業の中に広げていくことを目指している。
ここ10年間でAnaplan(アナプラン)などの上場企業がこの分野に参入している。モアレミ氏によると、こうした既存企業は重要な課題をいくつか抱えており、Mosaicはそれらの解決を図っているという。まずオンボーディングが挙げられる。コンサルタントがソフトウェアを企業のワークフローに統合するため、一部の企業では数か月かかる場合がある。第2に、これらのツールを運用し続けるには専任の常勤スタッフが必要となる。第3に、これらのツールは基本的にCFOオフィス以外の人には見えない。Mosaicはすぐに統合でき、組織内に広く分散され、最小限のメンテナンスで使えるような環境を整えたいと考えている。
「誰もが戦略的であることを望んでいますが、それを実行するにはかなりの困難が伴います。なぜなら、これらの異種システムからデータを引き出し、整理し、マッピングしてExcelファイルを更新することに8割の時間を費やし、残りの時間で検討し直したり、データが何を意味しているか理解しようとしたりしているからです」とモアレミ氏は言う。
このことから、同社がターゲットにしている顧客はシリーズBやCで資金を調達している企業であり、多量のデータが既にアクセスしやすいデータベースに保存されていることは間違いないだろう。最初は小規模な企業が相手だったが、「ここ12か月の間、より大規模で複合的な顧客との取り組みを進めながら少しずつ前進しています」とモアレミ氏は語っている。同社の従業員数は30人に成長し、売上高は7桁に達しているが(モアレミ氏によると営業部門はない)、このスタートアップはそれ以上具体的には教えてくれなかった。
こうした成長と活気を背景に、Mosaicは投資家の注目を集めている。同社は本日、General Catalyst(ゼネラル・カタリスト)のTrevor Oelschig(トレバー・オエルシン)氏が主導するシリーズAラウンドで1850万ドル(約19億1550万円)を調達したことを発表した。GCはFivetran、Contentful、Loomなどのスタートアップへの企業向けSaaS取引を率いている企業だ。このラウンドは昨年末に完了した。
Mosaicは250万ドル(約2億5900万円)のシード投資をXYZ VenturesのRoss Fubini(ロス・フビーニ)氏(以前はVillage Globalの投資家)から2019年半ばに調達している。フビーニ氏はメールで、Mosaicの創設者たちがパランティアでCFOのソフトウェアの状況について「共通の課題」を感じていたこと、さらに「彼ら全員が仕事をするために必要なツールに対して深いフラストレーションを体験していた」ことに興味を持ったと伝えている。
シリーズAの他の投資家には、Felicis Venturesに加えてXYZとVillage Globalが含まれている。
Mosaicは資金調達と併せて、パランティア、Dropbox(ドロップボックス)、Shopify(ショッピファイ)など9つのテック企業の現CFOまたは元CFOを含むアドバイザリーボードを設立することも発表した。
ビジネスの多くの機能はソフトウェアにおいて完全なる変革を遂げてきた。そして今こそCFOの時だとMosaicは期待している。
関連記事:機械学習で中小企業の会計経理を自動化するDocytが拡張シードで1.5億円調達
カテゴリー:ソフトウェア
タグ:資金調達
[原文へ]
(文:Danny Crichton、翻訳:Dragonfly)