nanapiの新サービスemosiは、テキストを使わずにコミュニケーションを実現する

ハウツーサイトの「nanapi」やコミュニケーションサービスの「Answer」、英語メディア「IGNITION」などを手掛けるnanapiが、実はひっそりと新サービスを公開している。その名称は「emosi(エモシ)」。App Storeにて無料でダウンロードできる。

emosiは、画像や動画、音声を投稿するコミュニケーションサービスだ。そう聞くとInstagramだってVineだってあるじゃないかと思うかもしれないけれど、このサービスがユニークなのは、テキストが投稿できないところにある。以前のバージョンでは画像にタイトル程度のテキストをつけることができたが、最新版ではそれすらできないようにしている。

アプリを立ち上げ、画面下部中央にある投稿ボタンをタップすると、「動画」「音声」「静止画」「アルバム」のアイコンが表示される。いずれかをタップして撮影、録画・録音(アルバムの場合は写真などを選択して)し、色みを変えるフィルターをかけて投稿できる。

投稿一覧画面。テキストがつくのは前バージョンまで

投稿一覧画面では、画像や動画はモザイクがかかった状態(音声の場合はアイコン)で表示されており、それぞれをタップしてはじめてその詳細が分かるようになっている。投稿を閲覧したユーザーは、一般的なコミュニケーションサービスでいうところの「コメント」のかわりに、画像や動画を投稿(リアクション)できる。リアクションで投稿された画像や音声には、Facebookの「いいね!」にあたる「Nice」というボタンが用意されている。投稿は匿名でも、ニックネームでも本名でも可能。デフォルトのアカウント名は「emosi」になっているが、そのまま利用することも、アカウント名を変更したり、自己紹介ページに自分の画像や音声、動画を登録することもできる。

nanapi代表取締役の古川健介氏に聞いたところ、サービス自体は2014年中にローンチしていたのだそうだ。だがプロモーションなどはしてこなかったこともあって投稿の数もまだまだこれからという状況。なので、コミュニケーションが成り立たずに画像1つあるだけ、という投稿も少なくない。だが中には、曇天のビーチの写真をアップしたユーザーに対して、他のユーザーが晴れたビーチの写真や青空の写真を投稿するとか、お弁当の写真をアップしたユーザーに対して、他のユーザーが別のお弁当や、カレー、焼肉、といったように次々に食事の写真を投稿する、「つらい」という音声に対して他のユーザーが爽やかな景色の写真を投稿する、といった不思議なコミュニーケーションが生まれている。

動画、または音声に特化して、特定のテーマに沿った投稿をしていくようなサービスも出てきているが、コミュニケーションをテーマにしながらもテキストがまったく使えないサービスなんて見たことがなかったので、その発想にはちょっとびっくりした。nanapiはなぜemosiを提供したのか。

古川氏はその理由についてこう語る。「チームラボの猪子さん(代表取締役の猪子寿之氏)が以前、『言語を介さないと怒りの感情はは長続きしない』と話していた。例えば格闘家が試合前に罵り合うのは、そうでもしないとそのあと殴れないからではないか。それはつまり、言語がない状態であればポジティブなやりとりしかできないということではないか」(古川氏)

そこで試験的にemosiをリリースしたところ、あるユーザーが落ち込んでいるような写真を投稿すると、それに対してまるで慰めるかのように、きれいな空の写真を投稿してくれるという画像だけのやりとりが起こったということもあり、サービスの作りこみを進めたそうだ。そういう経緯もあって、App Storeでのemosiの紹介には「ネガティブな感情をポジティブに変えてくれる、新感覚コミュニケーションアプリ」という説明がある。通報機能もあるので、公序良俗に反するような画像などは削除されるようだ。

nanapiがemosiに先行して手掛けるAnswerは、「即レス」をうたうテキストベースのコミュニーケーションサービス。2013年12月5日のサービス開始から約1年で総コメント数1億件(2014年12月22日時点)を突破している。emosiは当初、テキストではなくリッチメディアに対応した「次世代版Answer」という位置づけで考えていたそうだが、「さすがにサービスが尖りすぎていたので、別のサービスとしてリリースした」(古川氏)という。

また人をポジティブにすることをモットーとするこのサービス、ちょっと変わった機能が付いているそうだ。投稿をした人(Aとする)にリアクションした人(Bとする)がいたとして、そのBがまた新たに投稿し、それにリアクションした人(Cとする)がいたとする。そしてそんなCがまた新たに投稿をし、Aがリアクションするというような、A→B→C→Aという「リアクションの輪」ができたときに、その旨が通知されるのだそうだ。「お金を稼ぐのも大事だが、少しでも世界平和とか、世界を変えられるようなアプリを作ろうと思っていた時期があってサービスを企画した。人に親切にして、それがつながっていけば」(古川氏)


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TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。