noteが「note pro for HR」で採用領域に進出、“noteに書くと良いことが起こる”体験の拡大目指す

メディアプラットフォーム「note」を展開するピースオブケイクが、新たな取り組みとして法人向けの「note pro」をローンチしたのはつい先日のこと。そのnote proを軸とした次なる一手が、早くも明らかになった。今回の舞台は“HR”だ。

ピースオブケイクは3月15日より、採用広報業務を支援する「note pro for HR」の提供をスタートした。

同サービスはnote proを活用した外部サービスとの連携事業のひとつ。プロフェッショナルチームによる採用代行サービスを展開するキャスターと業務提携し、noteを活用した広報コンテンツ制作を含む採用支援サービスを展開する。

実はnoteが1000万MAUを突破した直後の2月上旬、ピースオブケイクCEOの加藤貞顕氏とCXOの深津貴之氏に取材した際から「ひとつの方向性として、今後HR領域で新たな発表を予定している」という構想が話に上がっていた。今回はその時の内容も踏まえて、同社がこの領域にサービスを拡張するに至った背景や、今後の展望などを紹介していきたい。

採用広報用途でnoteを活用する企業が増加

最初にnote pro for HRの概要について補足しておくと、同サービスには2種類のプランがある。ひとつが採用広報コンテンツ作成に特化した月額35万円からのシンプルなプラン。もうひとつが、記事の作成に加えて採用業務の代行もセットになった月額59万円からのプランだ。

どちらもnote proが使えるほか(オプションは別)、専属のライターと編集担当がコンテンツの企画から取材、執筆、校正などを担当する。採用業務の代行も含めたプランでは、採用のプランニングや面談の日程調整も丸っとサポートしてもらえる。

これについてはパートナーであるキャスターが「CASTER BIZ recruiting」というサービスを展開していて、そことタッグを組む形だ。

直接的な背景としては、note proローンチ時にも触れたように採用広報を目的としてnoteを使う企業ユーザーが増えてきたことが大きい。加藤氏は一例としてZaimの運営するブログを挙げていたが、従来であればWordPressや既存のCMSを使ったり、もしくは最近だとWantedlyのブログ機能を使って発信していたような情報を、note上で展開するような企業がちらほら出てきている。

Zaimがnote上で運営するブログ

note proの場合は独自ドメインの設定やメニュー・ロゴのカスタマイズをしつつ、noteのユーザー基盤やプラットフォームを用いてすぐにメディアを始められるのが特徴。

とはいえ、そもそも採用広報に力を入れたいが、リソースが不足していて実行に移せない企業もいるだろう。note pro for HRはそんな企業をバックアップするためのオプションだ。

「noteに書くと、良いことが起こる」の実現へ

ただ、HR領域のサービス展開はnoteにとって大きなアクションであることは間違いないだろうが、あくまで位置付けとしては「(note上で)ユーザーが選択できる経済活動のひとつ」にすぎないとも言えそうだ。

加藤氏と深津氏の話を聞いていて印象的だったのが「noteはまちづくりをしているようなもの」だと表現していたこと。その上で近年まちのサイズが急速に大きくなり、パートナーも増え、やれるアクションも広がったという。

深津氏は「劇場や体育館など新しい施設が生まれてきている」とも話していたが、まさにnoteという“まち”に新しく生まれた施設のひとつがnote pro for HRというわけだ。このことからもわかるように、noteとしては今後もパートナーを増やしながら、新しい取り組みを実施していく計画だという。

HRについては「各種求人サイトの埋め込み連携機能はつくりたいなと思っていて、まずは最初にしっかり組めるパートナーを見つけたい」(加藤氏)と考えているそう。また「すでにECカートとの連携は実験的にはじめているが、ウェブ上で展開できるビジネスとはだいたい連携できると思っているので、パートナーにあわせて柔軟に展開していく」方針だ。

もちろんこれは法人向けのサービスに限った話ではない。そもそも以前から加藤氏はnoteをクリエイターの本拠地にすることを目指し、本気で創作活動を継続できるような空間にするべく、様々なアプローチを行なっていると話していた。

この「クリエイターが創作活動を継続できる」ということがnoteにおいて核となる考え方であり、もっとも重要視しているKPIも「継続率」なのだという。プロダクトの改善においてはCXOの深津氏らが中心となり、大きいものだけでも年間で100件以上の施策を実施してきた。

クリエイターがnoteに来て、コンテンツを投稿し、そこに読者が集まる。それをきっかけに認知が増えて、投稿を継続する意欲が高まったり、他のクリエイターを呼び込むフックになる。「各フェーズを点で捉えるのではなく、線にする」(深津氏)ことがいいサイクルを生み出し、noteの成長にも繋がった。

創作活動を続けていく上では収益を上げることも必要なので、その手段としてコンテンツ単体の課金やサブスクリプションの仕組み、メディアとのパートナーシップやECカートとの連携などにも取り組む。

パートナーと共にクリエイターの活躍の場を増やすという観点では日経新聞社の「COMEMO」も同様だ。これはある意味「note for 経済」のような形で、日経新聞がカテゴリーオーナーとなってコンテンツを整備している。

「結局のところ『noteに書くと、良いことが起こる』と思ってほしい。そのためにいろいろな経済活動ができる場所を提供したいし、クリエイターにとっての出口を増やしたい」(加藤氏)

インターネットで1番ポジティブな言論空間を維持する

今後も引き続き継続率を高めることに重点を置きつつ、外部との連携も進めながらnoteをより強固なプラットフォームにしていく方針。

2018年12月にnote.comとnote.jpのドメインを取得したのも「検索流入を増やすこととともに、将来的なグローバル展開も見据えてnoteを一層強化していく」という決意表明の意味もあったという。

「まずは当初からやっているCtoCの部分をしっかり育てていくこと。(MAUベースでは)今は約1000万だが、数年で5倍くらいまでには伸ばしたい。Twitterのように、誰でもアカウントを持っているようなレベルを本気で目指す。それと並行しながらアライアンス面も強化していきたい」(加藤氏)

「15〜16年ずっとブログを書いていることもあり『2003〜2004年ごろのブログスフィアの空気感を2019年、2020年のテクノロジーで復活させる』というのが個人的なテーマのひとつ。当時はここで議論を交わせば、その内容を読んだ次の世代がさらに議論を上乗せして、議論がものすごい速度で成熟していくとみんなが信じていた。(その空気感を復活させるためにも)成長速度を保ちつつもインターネットで1番ポジティブな言論空間を維持することを大切にしたい」(深津氏)

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TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。