NSAのスパイ疑惑は、米国クラウドビジネスの信用を失墜させる。EC副委員長が警告

NSAのスパイ疑惑は、アメリカのクラウドコンピューティング・ビジネスを支える信用を失墜させる、とNielie Kroes欧州委員会副委員長が今日(米国時間7/4)のスピーチで警告した。さらにKroesは、クラウドビジネスへの波及効果を避けるために、ヨーロッパに住み事業を展開している個人や企業のデータへの監視とアクセスの範囲と実態を「明瞭かつ透明」にするよう再度アメリカに要求した。

ヨーロッパ人の信用を失うことは、アメリカのクラウド事業に「数十億ユーロ規模」の影響を与えるだろう、と彼女は付け加えた。

Koresが話したのはエストニアで行われた記者会見中で、クラウド購買のEU共通仕様合意のために開かれた欧州クラウドパートナーシップ運営委員会の後に行われた。

スピーチの一部を下に引用した。この中で彼女は、クラウドコンピューティング・ビジネスは広範囲に影響を与える米国政府監視プログラムの中でも特にリスクが大きく、それはこのビジネスが顧客の〈預けているデータが安全に保管されているという〉信用の上に成り立っているからだと語った。

Kroesは次のように語った。

もし企業や政府が自分はスパイにあっていると考えるなら、彼らがクラウドを信用する理由は減り、その結果機会を逃がすのはクラウド事業者である。

もし、データが自分の意志に反して共有されていることを疑いあるいは知っているなら、誰が企業秘密や他の重要データを金を払って他人に預けるたろうか。表玄関であれ裏口からであれ、賢明な人間はそもそも情報が公開されることなど望まない。顧客は合理的に行動するので、事業者は膨大な機会を失うことになるだろう。

ここで機会を失うのは主としてアメリカの事業者だ。なぜなら主として彼らがクラウドサービスのリーダーだからだ。ここから最近の疑惑に関する新たな関心事が想起される。具体的には、米国政府によるヨーロッパのパートナー、同盟国の監視に関わる疑惑だ。

もしヨーロッパのクラウド利用者が米国政府やその保証を信じられなければ、米国クラウド事業者を信じることもないだろう。それが私の予測だ。そしてもし私が正しければ、米国企業への影響は数十億ドル規模になる。

もし私が米国のクラウド事業者なら、たった今自国政府に対して強く不満を感じているだろう。私には何の思惑もない。私は、開かれた市場、自由の価値、そして新しいデジタル革新の機会に全力を注いでいる。

彼女は、国家安全保障局(NSA)が行っているとされる大規模監視プログラムで、米国企業がデータ採取の手先として利用されていることを挙げ、プライバシーの保障能力は競争上の強みであり、クラウドを提供する米国以外のスタートアップや企業にとって心の糧になると示唆した。

「プライバシーに力を入れている企業は今すぐ名乗り出て実践すべきだ。それが賢い企業というものだ。2013年こそがその年だ。これには優れたプライバシー保護を提供するサービスへの関心を活用すべきヨーロッパ企業も含まれている。

Kroesは、「場合によって」権力が「オンラインに保管されているデータをある程度アクセスする」ことには正当性があるとを認め、子供の保護とテロリズムを「好例」として挙げた。ただしそのようなアクセスは「法律の透明な規則」に基づくべきであり、それは「規則の例外」であることを強調した。政府によるデジタルデータの定期的監視は、スパイ行為をルール化することで、これを根本から覆えそうとしている。そして、日々定期的にスパイを強要される米国企業を傷つける危険をはらんでいる。

「クラウドセキュリティーへの懸念は、市場のオープン化よりもセキュリティの保証を優先させるよう、欧州の為政者たちを容易に動かす ― そして影響は米国企業に及ぶ」と彼女は付け加えた。

「クラウドには大きな可能性がある。しかし可能性は不信な空気の中では意味を持たない。ヨーロッパのクラウド利用者とアメリカのクラウド事業者や為政者たちは慎重に考える必要がある」

しかし、Kroesの発言と同じ日に、フランスにも独自のPRISM風データ収集プログラムがあるというニュースが浮上した。一方英国は以前諜報機関GCHQを通じて同様の組織的データ収集に熱中していると指摘さている。このため、NSAに後押しされた米国企業への反発も、その恩恵を受けるヨーロッパのクラウド企業はKroesが言うほど多くはないかもしれない。

[画像提供:DJ-Dwayne via Flickr

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi)


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。