OLがたったひとりで下着D2Cブランドを起業、2つのマーケティング戦略

商品入荷後、1日で完売したD2Cランジェリーブランドがある。IT企業でエンジニアとして働いていたOLの「仕事中のブラジャーの締め付けがストレスだった」という悩みをきっかけに作ったノンワイヤーブラ専門のランジェリーブランド「BELLE MACARON(ベルマカロン)」だ。

ノンワイヤーブラとは、ワイヤーによる締めつけがなく、着心地よく着られるブラジャーのこと。BELLE MACARONは着け心地だけでなく見た目もこだわり、レースを基調とした女性らしいデザインなのも特徴だ。

経営もアパレル業界も未経験だったOLがどのように人気ブランドを作り上げたのだろうか。BELLE MACARONを販売するashlynの代表、小島未紅(こじまみく)氏に話を聞いた。

給湯室で商社や工場に電話をかける日々がはじまる

小島未紅氏:1991年生まれ。立教大学法学部卒業後に新卒で大手IT企業に入社。入社3年目に自身のブラジャーの悩みと市場のブラジャーに疑問を感じて2016年にashlynを創業する。ブラジャーの開発に奔走し、2017年にランジェリーブランドBELLE MACARONをローンチした。

小島さんが「起業しよう」と思い行動に出たのは2016年2月。まだOLとしてIT企業で働いているときだった。

「まずは仕事終わりや休みの日に、インターネットで下着の製造や企業に関する情報を集めました。調べていくうちにブラジャーを製造する工場を見つけることが必要だとわかったので、お昼休みに給湯室でひたすらテレアポをしていました」

並行して資金調達にも動き出す。資金調達先は銀行やVCではなく、クラウドファンディングだった。

「CAMPFIREで製作費30万円を集めるクラウドファンディングをしました。クラウドファンディングは資金集めだけでなく商品についても知ってもらえる機会になるから、toCサービスとの相性がいいと思ったんです」(小島氏)

とはいえ、クラウドファンディング自体も初めてだったという小島さん。まずは成功しているプロジェクトを独学で分析し、自分のプロジェクトに落とし込んだという。また、CAMPFIREではプロジェクトを成功させるため、一つのプロジェクトに対し一人の担当者がアサインされる。それをフル活用し、担当者とはプロジェクトのタイトルやサムネ画像、ページ全体のラフ案など細かな調整まで密に相談した。これがクラウドファンディングを成功させた大きな理由の一つだと語る。

「クラウドファンディングを成功させた実績により、500万円の創業融資を受けることができたのも事業を進める追い風になりました」(小島氏)

クオリティを底上げしたのはテレアポで出会ったランジェリーデザイナー

事業構想から半年後、資金調達で経営の目処が立ったため、働いていた会社を正式に退社。しかし、予算とクオリティの見合う工場探しに苦戦する。

「価格を抑えるためにアジア圏にあるいくつかの工場に試作を依頼したのですが、自分が着たいと思える物にはならずで……。最終的に国内の工場で職人さんに作ってもらうことにしました。トライアンドエラーを繰り返したため時間はかかりましたが、『国内産の高品質』という売り出し方をすることができたので、結果的にはよかったと思います」(小島氏)

事業を進めていくうちに、「アパレルを製造するには商社と取引する必要がある」ということを知った。

「アパレルを流通させるには商社と取引することが必要だ、というのけっこうあとから知りました(笑)。商品の製造と並行して片っ端からテレアポを開始。ガチャ切りをされることはザラだったのですが、ある企業から『ランジェリーを作りたいなら会わせたい人がいる』と、ランジェリーデザイナーの方を紹介していただきました」(小島氏)

紹介されたランジェリーデザイナーは、なんと日本を代表するアパレルブランドの元デザイナーだった。小島さんのビジョンに共感し、破格の価格でアドバイザーに就任することに。デザイン面だけでなく流通や品質管理のアドバイスを担当してくれたため、納得のいく商品を完成させることができた。

マーケティング戦略(1)Twitterでターゲットに合う情報を発信

2018年11月、ついにノンワイヤーのランジェリーブランドBELLE MACARONの商品が発売される。その際に立ちはだかったのが販促・マーケティングの壁だった。

「すでにクラウドファンディングで注目をされており、かつ日本初のノンワイヤーブラ専門のブランドということもあいまって、最初の売り上げは好調でした。ですが、ブランドとしては継続的な売り上げを立てなくてはなりません。ネットショップのモールに出店したり、ウェブ広告を出したりしたのですが、商品の魅力を届けられず、ほかの商品に埋もれてしまうことが課題になりました」(小島氏)

そこで力を入れたのがSNSマーケティング。最初はInstagramを主戦場にしていた。しかし、商品が1種類しかないため写真のバリエーションを見せることができず、コーディネート数がコンテンツになるInstagramではリーチに時間がかかってしまう。そこで次に試したのがTwitterだ。

「BELLE MACARONは、着心地・デザイン・品質が特徴のブランド。それらをデザインとテキストで紹介するようにしました。また、女性が下着で悩んでいることを取り上げ、その解決策を提案する投稿もしました。つまり、自分自身がメディアとなり、消費者に刺さるコンテンツを発信するようにしたんですその結果、新色を発売したり再入荷するたびに完売するブランドに成長しました」(小島氏)

マーケティング戦略(2)リピート率を上げた手書きのクリスマスカード

カスタマーサクセスを強化し、リピート率アップさせたのも、売り上げを伸ばした要因のひとつ。通常、ランジェリーブランドのリピート率は10〜15%と言われているが、BELLE MACARONのリピート率は25%以上だ。

「SNSで商品を発信してくれた人にはDMでお礼を送ったり、コーポレートサイトの問い合わせに連絡をくれた人には100%返信したりするなど、細かなサポートは私がすべて対応しています。自信のある商品を売り、自分が消費者目線だったら嬉しいと思うことをするようにしたら、リピート率だけでなく、購入単価も上がってきました」(小島氏)

また、マーケティング施策において効果が高いメルマガにも「消費者目線」を取り入れた。

「メルマガは顧客に自社ブランドを定期的に思い出してもらうために必要な施策です。しかし、メルマガを好きではない人も多いですよね。私も自分が求めていない情報を一方的に送られてきたら、いやだなと思ってしまいます。そこで考えたのが『手書きのクリスマスカード』です」(小島氏)

リピーター100人に手書きでお礼を書いたクリスマスカードを送付。すると、SNS上で「手紙が届いてうれしい」と口コミをしてくれたり、「自分のクリスマスプレゼント用に購入した」という声が届いたりするなどのリアクションが届き、手応えを感じたという。

2016年の着想から4年経ち2度目のクラウドファンディングも成功させ、新色も発売するなど順調に成長しているBELLE MACARON。最後に、今後の展開を聞いた。

「今は勢いがあるのは、SNSでのバズが後押ししているからだと考えます。今後はサイズやデザインのバリエーションを増やして、よりニーズに合う商品を作り、短期的ではなく長く愛されるものを作りたいです。また、ここにくるまで色々な方に協力していただきましたが、基本的はずっとひとりでやってきました。これからは組織を作り、メンバーも増やしていきたいと思います」(小島氏)

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TechCrunch Japan

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