Periscope、配信者がコンテンツを収益化できるスーパーハート機能をローンチ――仮想通貨ビジネスへの参入も?

Twitter傘下のPeriscopeは新機能をローンチし、新たな収益源と人気配信者の獲得を狙っている。本日(現地時間6月21日)ローンチされた、スーパーハートと呼ばれるアプリ内購入機能を使えば、ユーザーは好きな配信者に特別なハートマークを送り、コメント欄で注目を集めることができる。さらに配信者は、集めたスーパーハートの数に応じてTwitterから毎月現金を受け取れるようになる。

スーパーハートの収益は、まずiOS・Android版どちらについても30%のアプリストア利用料と決済手数料が引かれ、残りの金額の70%が配信者へ、30%がTwitterに入るようになっている。また、この機能は世界中のiOS・Androidユーザーが利用できるが、受け取った”チップ”を現金化できるのは現在のところアメリカに住む配信者に限られており、Periscopeは今後対象エリアを広げていこうとしている。

今回発表された新機能は、恐らく中国のライブストリーミングサービスで人気のバーチャルギフトからヒントを得たのだろう。中国のYingkeやYizhiboなどでは、ファンがバラのマークや種々のステッカーをアプリ内で購入し、お気に入りの配信者に送っている様子がよく見られる。先週には、チップや換金可能なバーチャルグッズをクリエイターに送れる機能の利用をAppleが正式に許可した。しかし、Appleの決定とPeriscopeの新機能に直接的な関係はなく、同社は「私たちがやろうとしていることを(Appleが)たまたまサポートしてくれた」と語っている。

スーパーハートの買い方、送り方、換金方法

残念ながら新機能は少し複雑だ。まず、視聴画面には新しくスーパーハートのアイコンが表示されるようになっており、ユーザーはそれをタップするとスーパーハート専用のストアに移動できる。しかし、スーパーハートを購入するためには、まず枚数に応じて0.99ドルから100ドルの値段がついたバーチャル”コイン”を購入しなければならない。スーパーハートは全部で3種類準備されており、ひとつめはベーシックなハートマークにプラスサインがついたもの、ふたつめは泡で囲まれた光り輝くハートマーク、そしてもっとも高価な3つめは、中央にユーザーの顔写真がフィーチャーされており、配信者に送ると小爆発を繰り返すもの。なお、購入したスーパーハートはどの配信者に対しても送ることでき、0.99ドルだと約30個のベーシックなスーパーハートを購入できる。

多くのゲームアプリでは、普通にプレイしているだけでも無料でコインを獲得できるが、Periscopeでコインを入手するためにはお金を使う以外の方法がなく、所得の少ないユーザーは新しい機能を十分に楽しめない可能性がある。

スーパーハートを送ったユーザーは、以前からある無料のハートマークを送ったユーザーに比べて配信画面上で目立つように表示される。さらに、配信中にスーパーハートを送ったユーザーの名前はリーダーボードに掲載されるため、配信者は誰に動画内で感謝すればいいのか把握できる。他のユーザーはその様子を羨望の眼差しで見つめることになりそうだ。今のところスーパーハートの購入や送信はPeriscope上でしか行えないが、配信をTwitter上で見ている人もやりとりの様子を確認することはできる。

配信者のプロフィールには、受け取ったスーパーハートに対応するコインの枚数が”スター”として表示されるようになる。そして、175ドル分のスター(約18万5000スター)が集まると、その配信者はPeriscopeのSuper Broadcasterプログラム加入申請できるようになり、申請が受け入れられれば、月末にスターを現金化してACH送金(日本版注:アメリカの一般的な国内送金の手段)で受け取れるようになる。また、ファンからお金を受け取りたくないという配信者であれば、スーパーハートの機能をオフにすることも可能だ。

料金設定やTwitterの取り分について、PeriscopeのSara Haiderは次のように語った。

「スーパーハートは、一定の要件を満たした配信者の中で、コンテンツから収益を得たいと考えている人のために作られた機能です。私たちは、配信者が最大限の収益を得られるように、この機能の様子を観察しながら改善していこうと考えています。アプリ内購入や決済にかかる手数料を除いた金額のうち、約70%が配信者の元に渡ることになりますが、手数料や為替レート等の変動によって、実際の割合は多少変化する可能性があります」

コインを購入し、そのコインでスーパーハートを購入し、さらにそれがスターに姿を変え、その後ようやく現金化されるというプロセスをややこしく感じる人もいるかもしれない。というか、これは大変ややこしいプロセスだ。ユーザーは自分がどのくらいお金を使っているのかわかりづらいし、どのくらいの金額がお気に入りの配信者の元に届いているかもよくわからないため、ユーザーと配信者どちらにとっても新機能を利用するには多少のハードルがあるかもしれない。

しかしコアなファンからしてみれば、自分の好きな配信者のコメント欄やリーダーボードで目立つことができ、さらには配信者から直接お礼を言われるかもしれないとなれば、多少の複雑さなど問題ではないのかもしれない。

Twitterは仮想通貨ビジネスへの参入を画策中?

もしもスーパーハートが広く利用されれば、好調な2017年度第一四半期の業績でカムバックを果たしたTwitterにとっては重要な収益源となる。さらに配信者からすれば、Facebook Liveで収益をあげるには邪魔な広告を動画の途中に挟まなければならず、SnapchatやInstagramではマネタイズの手段が準備されていないため、Pericopeで動画配信を行うインセンティブが生まれる。

しかし、配信者たちはこの機能が大きな収益に繋がるとは考えていないようだ。Periscope上で有名なある配信者は「素晴らしい第一歩ではありますが、現実的に考えるとスーパーハート機能で稼げるのはお小遣い程度でしょう。つまり、これは大金を稼げるようなマネタイズ機能ではないため、配信者側もあまり期待し過ぎない方がいいと思います」と語っている。

そのため、仕事として動画配信を行いたい人は、引き続き応援機能のあるTwitchや、クリエイターの収益を中心に考えて作られたBusker、最近課金ユーザーのみを対象にした限定配信オプションが追加された月額制会員プラットフォームのPatreonなどを利用することになるだろう。視聴者のコメントを目立たせるためのSuper Chatと呼ばれる機能や広告からの収益を考えると、YouTubeも有力なオプションだと言える。

もしかしたら、Periscopeは自分たちで新たなコンテンツを追加しなければならないかもしれない。というのも、同社はユーザー数や配信者数をここ2年ほど発表しておらず、これは悪いサインである可能性が高い。

さらに、彼らはスーパーハートを使ったアダルトコンテンツの配信にも気をつけなければならない。だからこそ、Super Broadcasterプログラムは許可制で、175ドルというハードルが設定されているのだろう。元からアダルトコンテンツを配信するつもりの人の申請は通らないだろうし、急にアダルトコンテンツで稼ごうと思った人も、現金を手にする前に一定額を稼ぎ、さらには申請が許可されなければならないのだ。

今後スーパーハート機能がTwitterからも利用できるようになるかや、Periscope上のコインを他の目的で使えるようになるかに関しては、Twitterはコメントを控えている。しかし、彼らにとって初となるバーチャルグッズの導入がうまくいけば、Twitterは特別なステッカーからプロフィールを飾るバッチまで、各ユーザーのツイートがより多くの人の目につくようなものを色々と販売できるようになるだろう。

さらに、もしもTwitterが多様な意見が受け入れられるプラットフォームという信念を曲げずに、ユーザーがお金を払いたくなるようなモノを発見できれば、広告収入のためにユーザー数を増やさなくとも、コアな一部のファンから十分な収益をあげられるようになるかもしれない。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

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