READYFORが4.2億円を調達、新たな資金流通インフラ確立目指す——8年でプロジェクト数は1万件を突破

写真右からREADYFOR代表取締役CEOの米良はるか氏、Salesforce Ventures日本代表の浅田慎二氏

クラウドファンディングサービス「Readyfor」を展開するREADYFORは3月29日、セールスフォース・ドットコムの投資部門であるSalesforce Venturesを引受先とした第三者割当増資と、みずほ銀行を含む金融機関からの融資(当座貸越契約の極度額を含む)を合わせて約4.2億円を調達したことを明らかにした。

今回は2018年10月に実施したシリーズAラウンドの追加調達という位置付け。10月時点ではグロービス・キャピタル・パートナーズなどから約5.3億円を調達していた。

またREADYFOR代表取締役CEOの米良はるか氏が「シリーズAは次の事業を作ることに向けて、経営力をあげるのが大きな目的のひとつ」と話すように、前回に続き同社に強力な助っ人が加わった。

具体的にはアドバイザーにSalesforce Ventures日本代表の浅田慎二氏、技術アドバイザーにディー・エヌ・エー執行役員の小林篤氏、ソーシャルプロデューサーにGOの砥川直大氏が就任している。

READYFORでは「社会を持続可能にする新たな資金流通メカニズムの確立」に向けて経営体制を整えつつ、クラウドファンディング事業のシステム強化やSaaS事業の立ち上げを進めていく計画だ。

お金が流れにくい領域に、資金が行き渡る仕組みを作る

Readyforは「CAMPFIRE」などと共に、日本のクラウドファンディング市場を黎明期から支えてきたサービスと言えるだろう。ローンチは2011年の3月29日。今日でちょうど8周年を迎えたことになる。

これまでのReadyforの変遷については、10月の記事で詳しく紹介したのでそちらを参照頂ければと思うが、マーケットの拡大と共に同サービスもまた、様々なアップデートを行ってきた。

特に近年、資金調達の方法が多様化し国内でもプレイヤーが増加する中で、Readyforでは「社会的な意義はあるが、既存の金融サービスではなかなかお金が流れにくい領域」に注力。具体的には地域や医療、大学、裁判などの分野にクラウドファンディングを通じてお金を流通させる仕組みを作ってきた。

たとえば地域との取り組みについては、2016年に自治体向けの「Readyfor ふるさと納税」をローンチ。返礼品合戦が問題視されていた旧来のふるさと納税に、新しい仕組みを持ち込んだ。直近ではこの仕組みを活用して広島県呉市と起業家支援プロジェクトにも取り組んでいる。

医療領域では前回も紹介した国立がん研究センターがん研有明病院など、医療施設がクラウドファンディングを活用して資金を集める事例が増加。大学関連では2017年1月に立ち上げた「Readyfor College」を通じて、複数の大学と包括提携を結んだ。

これらは今まで補助金や助成金といった形で国がサポートしてきた領域。そこを補完するような形で、Readyforが使われることもここ1〜2年で増えてきているのだという。先日紹介した名古屋大学医学部附属病院のプロジェクトや、すでに1000万円以上の資金が集まっているエボラ出血熱の新薬開発に向けたプロジェクトはまさにその一例だ。

今後もパブリックセクターの支援強化へ

サービスローンチから8年間でReadyfor上に掲載されたプロジェクトは1万件を突破。57万人から80億円以上の資金が集まった。提携パートナー数も新聞社や金融機関、自治体など約250機関に及ぶ。

READYFORが8周年記念に公開している特設ページに詳しい記載があるが、ジャンル別では病院や医療施設への寄付が累計で約1億円、大学や研究が約1.5億円、ガバメントクラウドファンディングが約1億円、裁判や社会的活動の費用が約1500万円ほど集まっている。

まだまだ全体に占める割合は大きくないものの、こういった領域にお金を流通させる仕組みとしてクラウドファンディングが機能し始めているとは言えそうだ。米良氏も「(ここ数年の間に)パブリックセクターにおいてもお金が必要になった際に、1つの選択肢として検討されるようになったのは大きな変化」だという。

「(補助金などでは)カバーできない部分を補うということに加え、補助金の対象にはならないような“ちょっとチャレンジングな取り組み”のために資金を集めたいという新たな需要が生まれている。クラウドファンディングが社会に広がってきた中で『数百万円でもあれば何かしら新しいことが始められる』というプロジェクトに対して、以前よりもお金が集まりやすくなってきている」(米良氏)

READYFORとしては、今後もパブリックセクターの支援を強めていく方針。その一環として3月には裁判費用やアドボカシー、社会実験、政治活動などを目的としたプロジェクトを応援する「Readyfor VOICE」をスタートした。

過去にもこういった形でクラウドファンディングが利用されるケースはあったが、たとえば裁判費用を調達する場合、弁護士法などに照らした法的整理が必要となることもある。Readyfor VOICEではそのような専門的な知識が求められる領域を、弁護士資格を持つ法務担当者らがしっかりとサポートするのが特徴。すでに1件目のプロジェクトも始まっている。

「自分たちの特徴は『これまでお金が流れにくかった領域』に対して、民間の人たちの応援金を通じてお金が流れる世界を作っていること。これからも医療や大学の研究費、裁判費用などこれまでは国が支援していた公的な分野を中心に、必要な資金が行き渡る仕組みを開発していきたい」(米良氏)

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TechCrunch Japan

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