Rocket LabのベックCEOがより大きなロケットが必要な理由と株式公開の理由を語る

米国時間3月1日月曜日、Rocket Labは多くのニュースを発表した。SPAC(特別買収目的会社)との合併による株式公開がその1つであり、またより重量のあるペイロードにも対応できる新しい大型打ち上げロケットであるNeutron(ニュートロン)の建造も発表された。Rocket Labの創設者兼CEOであるPeter Beck(ピーター・ベック)氏に、なぜ今ニュートロンなのか、そしてなぜ同時に株式公開しようとしているのかを聞いた。当然のことながら、この2つは密接に関連している。

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「当社は多くのクライアントのためにElectron(エレクトロン、Rocket Labの現在の小型打ち上げロケット)を飛ばして利益を得ています。また、メガコンステレーションを含む多くの宇宙探査機に資材を供給する宇宙システム部門もあります」と、ベック氏は語る。「多くの、さまざまなクライアントと非常に強い関係を築いていることから、業界の今後、そして問題点について独自のインサイトを得ることができると思っています」。

再利用可能な2段式ロケット、ニュートロンの開発にもこれらの問題点が意識されている。ベック氏はかつて打ち上げロケット市場のニーズについて別の考えを持っていたが、Rocket Labでは、エレクトロンを部分的に再利用可能にすることで、その過去の考えと決別したかたちだ。そして、同社はさらにこの新たなコンセプトを前進させており、ニュートロンではSpaceX(スペースX)のFalcon9(ファルコン9)のように、1段目のブースターが地球に戻り、海に配置されたプラットフォームに着陸するかたちとなる。しかし、Rocket Labによるエレクトロンの開発以降、市場はエレクトロンのもたらした成果により変化してきた。

「ニュートロンは2つの個別の要因が発端となり開発されました。1つは、現在の市場におけるニーズです。また、近い将来、ニュートロンは、地球を回る人工衛星、計画途上にある人工衛星の90%以上を打ち上げることになります。これらの衛星は、80%がメガコンステレーション用です。多くのクライアントと話をするうちに、市場が本当に必要としているのはメガコンステレーション構築用のマシーンであることが明らかになりました」。

ベック氏は、このような市場のニーズと、ほとんどの大型ロケットの積載量が最大積載量の半分であったことを示す現在までの分析を組み合わせた結果、ニュートロンの8トンという積載量が決まった、と話す。ほぼ毎回、最大積載量での打ち上げを行う必要があるとはいえ、将来に至るまで、ほぼすべての衛星における大量のニーズを満たすこともできる。

「エレクトロン開発の道のりは厳しいものでした。私がElon Musk(イーロン・マスク)氏に強く同意することの1つは、ロケット開発の最も難しい過程は実際のスケーリング(規模拡大)の過程だということです。ロケットを軌道に乗せるのも簡単ではありませんが、製造を実際にスケーリングするのは途方もなく難しいことです。幸いなことに、私たちはそのすべてを経験してきました。製造とは製品だけではなく ERPシステム、品質システム、財務、サプライチェーンなど、さまざまなものを内包します。これらのインフラすべてを構築する必要がありました」。

エレクトロンとニュートロンは、工場、製造プロセス、インフラストラクチャの他、コンピューティングやアビオニクスなど、サイズに依存しない要素を共有している。エレクトロン打ち上げの許可を取得するまでの作業の多くはニュートロンにも適用できるので、エレクトロンの開発から打ち上げ、飛行までに必要だったコストと時間に比較して相当の節約になる、とベック氏は指摘する。Rocket Labは、エレクトロンを製造するプロセスを経て、全体的なコストにフレキシブルに対応しており、これは必ずニュートロンでの競争力に反映される、とベック氏はいう。

「エレクトロンの価格は750万ドル(約8億円)です。そのため、私たちは物事を極めて効率的に行う方法を見つける必要がありました」とベック氏。「価格が750万ドルでは、飛行安全分析やペイロード環境分析などに200万ドル(約2億2000万円)を費やすことはできません。このコストを償却できるのは6000万~8000万ドル(約65億〜87億円)のロケットでしょう。そのため、私たちはすべてを非常に効率よく進める必要がありました。さらに、ここまでの過程には、システムだけではなく、基本的なロケットの設計が含まれています。私たちが学んできたことをすべてをニュートロンに適用すれば、非常に競争力のある製品を市場に投入できると信じています」。

SPACとの合併に関して、ベック氏は株式公開という決断は2つの理由に要約されると話す。1つ目は、ニュートロンの開発や「その他の」プロジェクト必要な資金を調達すること。もう1つは、一種の「公的通貨」を獲得して、Rocket Labが達成したいと考えているビジネス面での買収を行うこと。従来のIPOではなくSPACとの合併を決断した理由の根本には、効率と固定資本目標がある、とのことだ。

「当時、IPOに向けた計画を進める中で、私たちの念頭にあったのは自社のことだけでした。しかし非常に多くのSPACパートナー候補が当社に強い関心を持っていることがわかったのです」とベック氏は私に語った。「最終的には、タイムラインのバランスを考え、SPACとの合併が当社がやりたいことを進める能力を加速させてくれると判断しました。なぜなら、ご指摘のように、SPACとの合併によりプロセスを合理化できるだけでなく、収益の確実性も確保されるからです」。

SPACとの合併が完了すると、Rocket Labは約7億5000万ドル(約817億円)をキャッシュで持つことになる。SPACルートの利点の1つに、調達する金額がその日の株価に依存しないことが挙げられる。ベック氏とRocket Labは、合併完了に向け予期せぬ障壁や障害を排除しつつ、約7億5000万ドルを手にし、計画に組み込むことができる。

「現在私たちには必要とする資本があり、準備もできています。つまり、Rocket Labには強力な実行力があるということです」とベック氏は語る。「Rocket Labの歴史において、これまでに実行したすべてを合計しても、数億ドルの資金しか調達していません。したがって、7億5000万ドルを調達したことで、大きなことができると期待しています」。

カテゴリー:宇宙
タグ:Rocket Labインタビュー

画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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