いま、AMDがアツイ。
いや、AMD製プロセッサーが物理的に熱いのは今に始まったことではない。ここで指摘しているのは、ユーザーからの視線が熱いということだ。デスクトップPC向けのRyzenシリーズはいうに及ばず、ノートPC向けのRyzenモバイルシリーズは今や搭載機種が入手困難な状況にまで陥っている。メーカーの中にはすでに9月の時点で、出荷は2021年明け以降と公表しているケースもあるほど。欲しくても手に入りにくい状況なのだ。
人気の理由は、高いコストパフォーマンスにある。以下のグラフは、現行世代CPUのベンチマークスコアをまとめたもの(データは筆者計測の平均値)。TDP 45WのグループではRyzen 7 4800HがインテルのCore i7/9 Hシリーズを大きく上回っており、TDP 15WのグループでもRyzenシリーズがCore iプロセッサーUシリーズを上回っている。それでいてPC本体の値段はCore iプロセッサー搭載機種よりも安いとなれば、Ryzen搭載機を選ばない理由がない。
ハイパワーな据え置きノートPCとしてオススメしたい15.6型ノート「Bravo-15」
今回取り上げるエムエスアイコンピュータージャパン(MSI)の「Bravo 15」は、Ryzen 5 4600H/Ryzen 7 4800Hを搭載する15.6型ゲーミングノートPCだ。店頭想定価格はRyzen 5+Radeon RX 5300M搭載の下位モデルで税込13万2800円、Ryzen 7+Radeon RX 5500M搭載の上位モデルで税込15万9800円。ゲーミングノートPCとしては標準的な値段だといっていい。
だがCPU性能で見ると、30万円クラスの機種で使われているCore i9-10885Hを大きく上回っている。もっともBravo 15はGPUがエントリークラスなので、単純に価格だけでハイエンドクラスの機種と比較すべきではない。しかしGPUの性能差やそのほか諸々の要素を差し引いたとしても、なかなか魅力的なモデルに見えるのではないだろうか。
スタンダードノートPC向けのRyzenモバイルUシリーズが入手困難な現在、比較的入手しやすいRyzenモバイルHシリーズを選ぶのはアリだ。ゲーミングノートPCとしてはもちろん、ハイパワーな据え置きノートPCの候補としてもオススメしたい。
重厚感のある外観デザインを採用
ゲーミングPCというと、LEDイルミネーションによる派手な外観をイメージする人は多いだろう。確かにデスクトップPCではいまだにその傾向は強いが、最近のノートPCは以前ほど光らなくなっている。コスト削減のためかLEDイルミネーションが受け入れられなかったのかは分からないものの、筆者個人としては落ち着いてゲームをプレーしたいためこの傾向はありがたい。
Bravo 15も、比較的落ち着いた外観デザインを採用している。本体カラーは深みのあるブラックで、表面にはうっすらとしたヘアライン加工。ボディは樹脂製であるものの、重厚感のあるルックスだ。唯一ゲーミングノートPCらしいのは天板のエンブレムと、赤く光るキーボードバックライト程度だろう。この程度の装飾であれば、普通のノートPCとあまり変わらない。
Ryzen 7搭載上位モデルは、144Hzの高リフレッシュレート対応液晶ディスプレイを採用
液晶ディスプレイのサイズは15.6インチで、解像度は1920×1080ピクセル。ゲーミングノートPCとしては、スタンダードなスペックだ。リフレッシュレートはRyzen 7モデルが144Hzで、Ryzen 5モデルが60Hz。リフレッシュレート60Hzというと、テレビや据え置きゲーム機でも使われているので違和感はないが、144Hzでは画面のなめらかさがまったく違う。ゲームで遊ぶ機会が多そうなら、ぜひRyzen 7搭載の上位モデルを選んでいただきたい。144Hzの画面を見たあとで60Hzの画面を見ると、自分が今までカクカクの画面を見ていたことに気が付き、必ず驚くはずだ。
ゲームをプレーしない人にとっても、高リフレッシュレートの画面は効果があるだろう。あくまで筆者の体感と断っておくが、スクロールやウィンドウのドラッグ時に画面がカクカクしないぶん、眼が疲れにくく感じるのだ。普段の作業を快適にこなせるに違いない。
標準的なキーボードながら、ややクセがある配列やキーストロークを確認しておきたい
キーボードはテンキーなしの日本語配列だ。配列にややクセがあるものの、ゲームへの影響はほとんど感じられなかった。しかしEnterキー周辺がやや窮屈で、特に右上の「¥」キーと右下の「_(アンダーバー)」キーがかなり小さい。プログラミングなどで多用する人には、少し使いにくい可能性がある。
キーピッチは19mmで標準的なサイズ、キーストロークは平均1.08mmだった。押した瞬間に固めのクリック感があるものの、ストロークが浅くて若干の物足りなさを感じる。ただしゲームにおいてはアクチュエーションポイント(スイッチの認識点)にまで短時間で達するので、キーの反応に優れる効果があるかもしれない。
インターフェースとして、USB 3.2 Gen1×2、USB 3.2 Gen2 Type-C×2採用
周辺機器接続用の端子類はUSB端子が4ポートでうち2ポートがType-C、そのほかは映像出力用のHDMIと1000BASE-T対応の有線LAN、ヘッドホン端子など。種類は多くはないものの、構成としては標準的だといえる。ただしUSB端子が右側面にしかないため、USB接続のゲーミングデバイスを複数使う際はケーブルの取り回しが面倒かもしれない。ひとつもで左側にあれば取り回しが楽になるだけに、この点は少々残念だ。
ゲーミング性能自体はエントリークラス
ここからはBravo 15のRyzen 7モデルについて、ベンチマーク結果を交えながらパフォーマンスを解説しよう。
CPU性能を軽装するCINEBENCH R20では、ノートPC向けCPUとしては最高クラスの結果となった。同じRyzen 7 4800Hの平均値をやや下回ったものの、大きな影響のない範囲だ。ゲームはもちろん、動画編集やRAW現像、高度なデータ処理などでも活用できるだろう。
グラフィックス機能としては、外付けGPU(dGPU)のRadeon RX 5300MまたはRadeon RX 5500Mが使われている。いわゆる「オールAMD」な構成だ。Radeon RX 5500M搭載の試用機で3D性能を計測するベンチマークテストを行なったところ、エントリー(入門)クラス相当の結果となった。ただし同じエントリークラスであるNVIDIAのGeForce GTX 1650よりもパフォーマンスは上で、GeForceシリーズでいえばエントリーとミドルレンジの中間相当をイメージするといいだろう。値段もエントリークラスなので、そのぶんコスパに優れているわけだ。
ゲーム系ベンチマークテストでは、やや重い程度のタイトルであれば問題なくプレー可能という評価が出ている。ただし処理の重いタイトルについては解像度や画質をガッツリ落とさなければ厳しいようだ。
夜間にゲームで遊ぶなら、排気音の大きさを意識したい
「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」実行中における本体の熱を計測したところ、ゲームでよく使うWASDキー周りは42度前後だった。温度としてはそれほど高くはないものの、指先にやや熱を感じる。キーボード以外の部分、例えばキーボード上部のスペースや電源アダプターは意外と高温になるため、不用意に触れないほうがいい。
簡易騒音計で駆動音を計測したところ、53.4dB(デシベル)とかなりうるさく感じた。「50dB」は「家庭用エアコンの室外機(直近)」、「60dB」は「走行中の自動車内」などと例えられる。ヘッドセットなどを付ければ気にならないものの、深夜は周囲への配慮を意識したほうがいい。
なお、標準収録の設定ユーティリティ「MSI Dragon Center」の「Cooler Boost」機能を有効にすると、空冷ファンを最大出力にした状態で利用できる。本体内部は効果的に冷却されるものの、駆動音は59.8dBと非常にうるさい。ここまでになると、部屋の外に音が漏れている可能性が高いので、利用する際は注意が必要だ。
ゲーム以外でも活用できるハイパワーノートPC
ベンチマーク結果をご覧いただくとお分かりの通り、MSIのBravo 15のCPUパフォーマンスはとにかく素晴らしい。インテルの第10世代Core iプロセッサーは陳腐化してしまったといっていいだろう。これで価格が13~15万円台とは驚きだ。インテルは第11世代で巻き返しを図ると思われるものの、Ryzenシリーズと同等の価格に抑えられるかという点に疑問が残る。あくまでも筆者の予想だが、コストパフォーマンスの面では、しばらくRyzenシリーズが優位なのではないだろうか。
これだけ高性能であれば、ゲーム以外の用途でも活用できる。動画編集はGPU性能が影響するものの、CPU依存が高いRAW現像や高度なデータ処理/数値演算などでは大いに役立つはずだ。CPUパフォーマンスを重視する人は、まずBravo 15からチェックしていただきたい。
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