エンタープライズソフトウェアの世界では、ときどき不思議な組み合わせが出てくるものだ。米国時間11月13日、Salesforce(セールスフォース)はCloud Information Modelに関してAWSとの大きな意味を持つ連携を発表した。そしてその翌日、セールスフォースは同社のMarketing CloudをMicrosoft Azureに移行すると発表した。エンタープライズの協力関係があっちに行ったりこっちに行ったりして混乱することがあるというのを体現しているようだ。
セールスフォースとMicrosoft(マイクロソフト)は、セールスフォースのSales CloudとService CloudをMicrosoft Teamsと統合することでも協力すると発表した。
同社は、自社のデータセンターで稼働してきたMarketing Cloudを数カ月以内にMicrosoft Azureに移行する計画だ。ただし現時点では移行の明確なタイムラインは示されていない。AWSと熾烈な争いをしているマイクロソフトにとって、これは大きな意味を持つ。AWSが市場をリードしていることは明らかだが、マイクロソフトはここしばらく強力な2番手となっている。セールスフォースを顧客として迎えることは、マイクロソフトにとって品質の証明のひとつになる。
CRM Essentialsの創業者で長年業界をウォッチしているBrent Leary(ブレント・リアリー)氏は、この連携はビジネスに対するマイクロソフトの現在のアプローチを強く表していて、同社はゴールを達成するために幅広い連携を望んでいるのだと語る。リアリー氏はTechCrunchに対し「セールスフォースがアマゾンよりもマイクロソフトとの関係を深めることを選んだというのが重要なニュースで、セールスフォースの強化によってマイクロソフトのCRMツールであるDynamics 365が脅かされるおそれがあることをマイクロソフトは問題視していない。マイクロソフトの成長を最も大きく担っているのはAzureであることが、その主な理由だ」と述べた。
両社はこれまでもずっと複雑な関係にあった。マイクロソフトのCEOがSteve Ballmer(スティーブ・バルマー)氏だった時代には、CRM製品をめぐって法廷で争っていた。その後、マイクロソフトのCEOになったSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏は2015年のDreamforceカンファレンスで仲良くする意向を示した。それ以降、両社の関係は一進一退だったが、今回の発表で敵というよりは友に近づいたようだ。
とはいえ、セールスフォースがCloud Information Modelに関してAWSとの連携を発表したばかりであることも見逃せない。Cloud Information ModelはAdobe、Microsoft、SAPのパートナーシップと直接競合するものであり、セールスフォースはデータの統合に関するAWSとの大規模な連携を昨年発表している。
こうした矛盾するような関係はややこしいが、現在のコネクテッドクラウドの世界においては、市場のある部分で激しく戦う企業同士であっても、別の部分では両社と顧客のためになるなら協力しあおうとすることの表れだ。今回の発表はこうしたケースと思われる。
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(翻訳:Kaori Koyama)