Y Combinatorの2020年夏のバッチのメンバーであるRecurrencyは、大学を卒業したばかりの21歳の人物によって創業された企業だ。彼はSAP、Infor(インフォア)、Oracle(オラクル)、Microsoft(マイクロソフト)などの巨人たちが率いる、しっかりと確立された市場に参入することを決心したが、エンタープライズソフトウェアの非常に複雑な領域を一気に攻めるのではなく、卸売ビジネスを支援することから始めている。
単独の創業者でありCEOであるSam Oshay(サム・オシェイ)氏は、今回の夏バッチに参加する前に、ペンシルベニア大学でエンジニアリングとビジネスにまたがる2つの学位を取得して卒業した。オシェイ氏は、データ主導の意思決定を推進するために、機械学習を使用することで、ERPに現代的なひねりを加えようとしている。
「SAP、Infor、Epicor(エピコ)といった他のERPとの違いは、ユーザーに対して彼らがまだ知らないことを伝えることができるということです」。従来のERPは、基本的にデータ入力システムに過ぎないと彼はいう。例えば価格表を入力することはできるものの、それに対する予測については何もできない。
「私たちのシステムなら、過去のデータをスキャンして、価格の推奨と予測を行うことが可能です。つまり、私たちのシステムはデータ分析を行うだけでなく、外部データをインポートして内部データと照合し、推奨と予測を行うERPなのです」とオシェイ氏は説明する。
彼は卸売ビジネス方面だけに閉じこもっているつもりはないが、彼の家族がこれまでその方面のビジネスを経営してきたという状況を考えると、そこを出発点としたことは理に適っている。実際、彼の祖父は第二次世界大戦後に米国に移住し、彼の伯父が現在も経営している金物の卸売業を始めた人物だ。そして彼の父親は、卸売業務に使う発送用品を販売するビジネスを始めた人物である。オシェイ氏はそうしたファミリービジネスの中で育った。そうした経験がほとんどの新卒者がおそらく持つことのない洞察を、彼に与えることになったのだろう。
「私は卸売業について、非常に深いレベルまで学びました。そして私が観察できたことは、私の父のビジネスに関わる問題の多くが、彼の使うERPシステムの問題に帰結するということでした。なので、もし誰かが、ERPの拡張機能やより優れたERPを構築できたなら、これらのレガシーシステムの中に現在閉じ込められている価値の多くを、解放できる可能性があると私は考えたのです」と彼はいう。
そこで、彼は良い起業家ならそうするようにシステムの構築を始めたのだ。手始めとして彼のシステムはSAPやNetSuite(ネットスイート)などのレガシーシステムにプラグインされるが、将来的な計画はより良いERPを一度に1ステップずつ構築して行くことだ。今のところ、それは卸売を対象にしているが、彼は自身の会社ではるかに大きいビジョンを持っている。
彼は元々、大学3年だった2019年秋学期にYCに応募し、その冬のバッチへの参加を許可されていたが、実際の参加は学業が完了する2020年夏まで延期していた。彼は早期卒業を行うために、ペンシルベニア大学の残りの時間を全力で過ごし、修了するために10のクラスを履修した(現在は卒業論文が1本残されているだけだ)。
今回のYCバッチはリモートで行われており、YCチームはそれを考慮に入れていて、それでも夏のクラスに対して有意義な体験を提供していると彼はいう。「YCが通常行うイベントのすべてが、現在でもそのままリモートで行われています。そして、私の知る限り、私たちが参加しているイベントのいくつかは、この奇妙な状況に対応するために特別にデザインされています。YCチームは今回のバッチを意味のあるものにするためにかなりの検討を重ねおり、それらは成功したと思います」と彼はいった。
パンデミックは、アーリーステージのビジネスに新たな課題を突きつけたが、彼はそのおかげでより良い集中を行う役に立った点もあるという。友人たちと出かける代わりに、彼は在宅でほとんど気を散らすことなく会社に取り組んでいる。
ご想像のとおり、この製品はまだ始まったばかりだが、既に3つの顧客で稼働しており、さらに2つが実装段階にある。また、これまでに2人とエンジニアを雇用して、それぞれフロントエンドとバックエンドを担当させている。
今のところ、彼は製品とビジネスの開発を続けていく予定だが、今回のパンデミックが、企業たちがレガシーERPのようなシステムを変更することに対して、よりオープンになるきっかけになるとみなしている。「誰かが何か新しいことを試したいと思っているときに、それをより簡単に試すことができるようにしてあげられるなら、そここそが売り込める場所なのです」と彼はいった。
画像クレジット: NicoElNino / Getty Images
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(翻訳:sako)