SEC、暗号通貨投信の取引所計画に冷水――「きわめて強い疑念が存在する」と警告

アメリカの証券取引委員会(SEC)は暗号通貨ベースの投資信託の取引所を開設する証券業界の計画を拒否し、強く警告した。

SECの投資管理担当ディレクター、 Dalia Blassは証券業・金融市場協会(Securities Industry and Financial Markets Association)、投資信託協会(Investment Company Institute)のトップ宛にきわめて強い文言の書簡を送った。この中でBlassは暗号通貨(およびこれに関連するプロダクト)形式で保有される資産の現状には「きわめて強い疑念が現に存在する」と述べ、公的規制が必要だと指摘した。

この書簡でBlassは SECにとって懸念となる領域が多数存在することを指摘した。これには各種の投資信託、上場投資信託が保有する暗号通貨資産の評価、これらの資産の実際の流動性と保護監督を行う機関の有無、市場における価格操縦、裁定取引に対する措置などが含まれる。

Blassは次のように書いている。

SEC上記の疑念が適切に解決をみるまでは、投資信託運営者が暗号通貨および関連するプロダクトに対する投資を促進するために、これらを利用する投資信託を登録する取引所を開設することは適切ではないとないと信ずる。SECはこのような取引所の開設を求めた申請を取り下げるよう申請者に求めた。

今週起きた多数の暗号通貨の暴落は暗号通貨価格の不安定性に対するSECの懸念を裏付けるものだろう。またSECは今年に入って暗号通貨に関する市場操縦の可能性について強い懸念を表明していた。

事実、Journal of Monetary Economicsによれば、2013年にbitcoin価格が150ドルから1000ドルに急騰した原因がこの暗号通貨の主要な保有者による市場操縦である可能性が高いという。今週、TechCruchもこれを報じた

またDDOS攻撃を受けて閉鎖され、2件の刑事捜査も関連しているBitconnectによる多数のごまかしも暗号通貨取引所開設の主張を補強する役には立たないだろう。このサービスはネズミ講だと報じられ、テキサスとノースカロライナの証券当局から運営停止を命じられていた。

SECが暗号通貨投信取引所開設の計画に中止させるのはこれが最初ではない。昨年の3月にもSECはWinkelvoss兄弟による同様の申請を拒否しているとWall Street Journalが報じている

このときSECは「bitcoinは取引所を開設するに足る適切な規制を受けておらず、運用にも透明性を欠く」として申請を拒否した。

ただしSECは暗号通貨ファンドを登録する取引所の開設は拒否したものの、上場投資信託に対して暗号通貨資産の保有を一切禁止しているわけではない。実際、暗号通貨に関連する会社に投資することをうたった2つのファンドが開設されたばかりだ(blockchainブームに便乗を企むインチキがあまりにも多いため、こうした事業へのリンクは当面掲載しないこととする)。

画像: NurPhoto / Contributor/Getty Images

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。