編集部記:James Hanは、Crunch Networkのコントリビューターである。また、彼は株式のクラウドファンディングプラットフォームを展開するSeedInvestの共同ファウンダーであり、 Francisco Partnersで投資家を務めていた。
あなたはUberが既存ビジネスのあり方を刷新するといち早く気づいていた、あるいは早い段階からAmazonやGoogleを利用していただろうか?
2011年にUber(現在の評価額は400億ドル)に投資していたのなら、現時点で600倍のリターンを得ていたことだろう。しかし残念ながら、当時から既にかなりの富豪でなかったのなら、これらの企業に投資することを証券法が許さなかった。
アーリーアダプターが一般のカスタマーと投資家との間にある一線を超えることはこれまで叶わなかった。しかし、6月19日から施行されるSECの新規則により、コンシューマーと企業との関係性に根本的な転換が起きる。
プライベート企業を支援したいと考える多くのアーリーアダプターが企業を支援する方法は、謝礼が予め設定されているクラウドファンディングという手段に限定されていた。このタイプのクラウドファンディングは、アーリーステージの投資の代替手段としては乏しい手法だ。Kickstarterのように謝礼が設定されたクラウドファインディングのウェブサイトでは、個人がプロダクトを事前予約したり、世界に登場してほしいと願うものに寄付することができる。この「支援者」が会社の株式や優先株を得ることはない。支援者は大きなリスクを取っているにも関わらず、大きな見返りが得られることはないのだ。
Oculus VRの顛末が分かりやすい例だ。謝礼が設定されたクラウドファンディングのキャンペーンが大成功したおよそ2年後、OculusはFacebookに20億ドルで買収された。Kickstarterで早くからOculusを支援していた人は、裏切られたと怒りを感じた。彼らはOculusの一部を保有していた感覚だったが、その買収において何の利益も得ることができなかったからだ。一方、OculusのKickstarterのキャンペーンの後、それもKickstarterのキャンペーンの成功を受けて、投資を決めた機関投資家や投資を許可された人は、短期間の内に大金を得ることができた。Kickstarterのキャンペーン時に、300ドル分のOculusの株式を保有していれば、およそ145倍の4万5000ドルになっていたのだ。
成功するテクノロジー系スタートアップは、企業の資金面でアーリーアダプターの力を借りているので、彼らに借りがあると言えるだろう。アーリーアダプターは大多数の人が気がつく前から、会社のポテンシャルに気づき、目標を達成のためにポテンシャルを引き出す助けを提供しているのだから。
早期のカスタマーにとっての影響は相当なものだ。なぜなら企業は、プライベート企業である期間が長くなっているため、企業が実際にIPOに踏み切る(する場合は)までに、アーリーアダプターとしての知識的な優位性は消え去り、早くからの投資により多額のリターンを得るチャンスに気がつくこともない。
LendingClubやGoProのような先進的な会社は、これに気づき、カスタマーが機関投資家と同じ価格でIPOに参加できるようにすることで見返りを提供した。
しかし、このようなことを正式なIPOの前に行うことは非常に難しかった。証券法により、承認されない投資家(例えば、年間20万ドル未満の所得で資産が100万ドル未満の人)に株式を販売することは実質不可能だった。今後これが変わる。
本日付けで施行される、JOBS ActのTitle IVの新Regulation A+により、企業は、5000万ドルを上限とするミニIPOで公開市場から資金を調達することができる。これに早くから注目していたカスタマーも参加できる。企業は、市場の温度感を確かめ、ユーザーが投資に興味を持つかどうかを問うことができる。
十分な関心が集まれば、企業は証券取引委員会(SEC)に申請書類を提出し、認可を得ることで取引を開始することができる。そのプロセスは簡単なものではない(10万ドル以上の費用と3ヶ月から6ヶ月の期間を要す)が、通常のIPO(100万ドルの費用と1年から2年の期間を要す)より相当、容易になる。
早期のカスタマーにとっての影響は相当なものだ。なぜなら企業は、プライベート企業である期間が長くなっているため、企業が実際にIPOに踏み切る(する場合は)までに、アーリーアダプターとしての知識的な優位性は消え去り、早くからの投資により多額のリターンを得るチャンスに気がつくこともない。
Reg A+は、個人が先見の明で利益を得ることを可能にし、ブランドに対するロイヤリティに見返りを得ることができる。アーリーアダプターが企業のカスタマーに留まることはない。心酔した企業のステークホルダーとなり、企業の最大の成功が投資した個人の経済的な成功と連動するようになる。
カスタマーにとっても魅力的な制度だが、同時に企業にとってもアーリーアダプターから資金調達できることは魅力的だ。Reg A+により、企業はビジネスの経済的な成功を得るための道筋でブランドのエバンジェリストに協力を得ることができる。
Regulation A+は、カスタマーと企業の関係を再定義するポテンシャルを持ち、アーリーアダプターと投資家の線引を曖昧にするだろう。
更に、カスタマーがシェアを保有することで、彼らのブランドに対するロイヤリティを高めることができる。カスタマーとシェアホルダーを兼ねる個人は、企業の長期的な成功に興味を持っている。彼らの投資ポートフォリオに有利になるようにお金を使う、つまり投資した会社サービスを利用することが予想される。上場企業の株式の調査からも、株式を所有している企業にカスタマーは54%多く費用をかけ、倍ほど他の人に紹介することが示されている。
Regulation A+は、カスタマーと企業の関係を再定義するポテンシャルを持ち、アーリーアダプターと投資家の線引を曖昧にするだろう。Uber、Airbnb、Instacartといった企業は、シェアリングエコノミーの拡張に伴い得られたネットワーク効果から利益を生み出した。Reg A+を通し、シェアリングエコノミーの理念がプライベート企業の資本市場に持ち込まれたと言える。今後、先見の明を持つコンシューマーは、お気に入りの企業の市場での成功を共有するチャンスが得られるのだ。
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