シアトルを拠点とするShelf Engine(シェルフ・エンジン)は、最初の数カ月間、スーパーや食料品店での在庫処理の最適化を業務としてきたが、まったくの無名だった。
4年ほど前、共同創設者のStefan Kalb(ステファン・キャルブ)氏とBede Jordan(ビード・ジョーダン)氏がソルトレークシティーの外れにスキー旅行に出かけたときから、米国の食品廃棄問題に何か具体的な手立てはないものかと話し合うようになった。
キャルブ氏は、いくつもの企業を創設してきた起業家だ。最初に立ち上げたのはMolly’s(モリーズ)という食品流通企業だった。それは2019年に、HomeGrown(ホームグロウン)という会社に買収された。
ウェスタン・ワシントン大学で保険数理学の学位を取得したキャルブ氏は、世界を変えようと食品会社を立ち上げたと語る。実際、Molly’sでは健康的な食事を提唱していた。しかし、キャルブ氏とMicrosoft(マイクロソフト)のエンジニアであったビード氏がShelf Engineで取り組んでいることは、むしろインパクトというべきかも知れない。
食品の無駄は、米国民に安全で安価な食料が行き渡らないという大きな問題を助長するばかりか、環境にも悪い。
Shelf Engineは、生鮮食料品の需要予測を提供することで、この問題に対処しよう計画している。そうすることで、発注システムから非効率性を閉め出そうという考えだ。パン売り場と、特に足が早い生鮮食品の売り場では、一般的におよそ商品の3分の1が廃棄されている。Shelf Engineは店に売上げを保証し、売れ残りについてはすべて同社が代金を支払うことにしている。
Shelf Engineは店に並ぶ特定商品の普段の売上げに関する情報から、その商品の需要がどれほどあるかを予測する。同社の利益は、供給業者に支払う商品代金と、食料品店に卸す価格との差額から得られる。
こうすることで、食料品店は食品廃棄量を減らせるのと同時に、より豊富な種類の商品を棚に並べることができるようになる。
当初Shelf Engineは、食料品店向け商品の販売で市場に乗り込んだのだが、マーケットプレイスに転向し、店の棚に陳列される特定商品の需要を予測するモデルを完成させたときから注目を集めるようになった。
ビード氏とキャルブ氏の次なる計画は、規格外農産物の小売り業者や食料品のアウトレット販売業者などの二次的販売経路の見識を高めることだ。
同社のビジネスモデルは、すでに米北西海岸地区の400ほどの店舗で実証済みであり、市場に打って出るための新たな資金1200万ドル(約13億円)も獲得したと、キャルブ氏は話す。
この資金はGaryy Tan(ゲイリー・タン)氏のInitialized、GGVからの出資だ。ちなみにGGVの業務執行取締役Hans Tung(ハンス・タン)氏はShelf Engineの役員に加わった。さらにFoundation Capital、Bain Capital、1984 Ventures、Correlation Venturesといった企業も参加している。
Shelf Engineへの投資は、Signia VenturesのパートナーSunny Dhillon(サニー・ディロン)氏がTechCrunch Extraに寄稿していたように、食料品店に新しいテクノロジーを活用するという流れに乗っている。
「食料品の利幅は常にカミソリの刃のように薄く、儲かっている食料品店と儲かっていない食料品店の差は、1ドルあたりほんの数セント程度だ」とディロン氏は書いている。「従って、食料品の電子商取引がますます受け入れられるようになるにつれ、小売業者はフルフィルメント業務(マイクロフルフィルメントセンターなど)だけではなく、顧客の玄関先まで配達してスピードと品質を確かなものにするロジスティックス(ダークストアなど)の最適化も図らなければならない」。
しかしディロン氏が提唱する、マイクロフルフィルメントセンターやダークストアを活用した配達に限った食料品ネットワークだけがすべてではない。既存の不動産や注文に応じたショッピング方法を有するチェーンにも、生鮮食料品の利益を高める道はまだまだある。
画像クレジット:nadia bormotova / Getty Images
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(翻訳:金井哲夫)