Siempoの新しいアプリであなたのスマートフォン中毒も解決?

Siempoという名の新しいアプリが狙っているのは、スマートフォンと沢山の注意を奪うアプリ群による中毒から、あなたを解放することだ。そのことを実現するために、SiempoはAndroidデバイスのホーム画面を置き換える一方で、割り込みを遠ざけるデザインを利用し、通知に対してより細やかな制御ができるようにしている。

数週間前にGoogle Playでアプリを提供し始めたこの立スタートアップは、もともとはハードウェア会社として始まった会社だ。

ハードウェアスタートアップがソフトウェアにシフトした

2015年、同社のもともとの共同創業者だったAndreas GalaとJorge Selvaが、現代の常時オンライン文化に対する懸念から、Miniumという名のミニマリスト指向のフィーチャーフォン(いわゆるガラケー)の開発に着手した。しかし、ハードウェアを全くゼロから設計するのは難しいため、途中からは、既存の中国製電話機を利用してSiempoというなのスマートフォンを作り上げることに方針を転換した。

翌年Siempoは、以前にNetAppでデータストレージエンジニアリングチームを率いていたMayank Saxena(CTO)と、以前はFlexportの16番目の従業員であったAndrew Dunn(現CEO)を迎え入れた。

「私はティーンエージャーの頃、スマートフォンとソーシャルメディア中毒で苦労しました。そして人びとがテクノロジーとの関係のバランスをとることができるように、ウェアラブルを相手に働いてきたのです」とDunnは説明する。一方Mayanは、Siempoに入社する前から「デジタル時代の中で、バランスの取れた子供たちを育てることにますます関心が高まっていたのです」と語る。

残念ながら、同社が2017年にKickstarterで資金調達を試みたときには、その目標を達成することはできなかった。

チームが過小評価していたのは、人びとにスマートフォンの買い替えを決心させることがどれほど難しいかということだった。それは、単に新しいハードウェアを買うように勧めることだけではなく、全く新しいタイプのモバイル体験を試すことも勧めていたのである。

だがKickstarterは失敗したものの、チームには貴重なフィードバックが提供された。 「Kickstarterキャンペーンを開始したとき、コンセプトは大好きだが、既に持っているデバイスの上でのソフトウェアバージョンならお金を払ったり試したりしてみたいという声が多く寄せられました」とDunnは言う。「もしソフトウェアバージョンであったとしても、望んでいることの95%は実現できるということがわかったので、その道を探ってみることにしたのは当然でした」。

この時点で、元々の共同創業者たちは他のプロジェクトに移り、Dunnに舵取りを任せた。

この新しいプロジェクトは、今日の技術のネガティブな性質故に、彼にアピールした。

「注意喚起経済(the attention economy)のお陰で、人びとは気を散らされ、ストレスがかかり、孤独で抑うつが進んでいます」とDunnは言う。「ビッグテクノロジーが人間的デザインに向かって、意味のあるリーダーシップを取ることはありません。そしてより健康的なデジタル習慣を身につけることは、長い時間のかかる、手作業の多い、繰り返しプロセスであるために、人びとはどうすれば良いのか迷っているのです」と彼は付け加えた。

Siempoは現在ベータ版で、この問題に対して、自分が携帯電話に中毒しすぎているのではないかと疑っている人たちにアピールする筈の、一連の機能を提供することを目指している。

Play Storeからランチャーをダウンロードしたあと、Siempoをデフォルトのホームアプリとして設定することができる。つまりスマートフォンメーカーの用意した出来合いのものの代わりに、人間的にデザインされたインターフェイスとやり取りできるようになるということだ。

デバイスへの執着度を軽減するために、Siempoは魅力的で心理的な中毒性の高い技法たちのいくつかを逆手にとっている。そうした技法は携帯電話のOSやモバイルアプリに、そのアプリの魅力を高めるためのエンジニアリングに専心する開発者たちによって組み込まれてきたものだ(ただし、そうした決定の倫理に対する理解が、完全に行われてきたわけではない)。

全てのOSプラットフォームや、Facebookのような大規模なソーシャルメディア企業は、長年に渡り携帯電話に継続的にチェックインするユーザーたちに何らかの報酬を与えるシステムを作り続けてきた。こうしたドーパミン駆動フィードバックループは、スマートフォン中毒のサイクルを作り出し、ユーザーは自分の意志以外に戦うためのツールを持たないままなのだ。

世界はいまやこの間違いに目覚めつつあるところだ、その中にはこうしたシステムを最初に構築した人びとも含まれている。

例えばFacebookの元社長Sean Parkerは、Facebookのデザインが人間精神の弱点につけこんでユーザーの中毒を悪化させたと語り、また元ユーザー獲得部門の責任者で今はVCに転じたChamath Palihapitiyaは、Facebookが現在のような存在になったことに対する「甚大な罪悪感」を感じていることを告白している。また一方、元GoogleのエグゼクティブであるTristan Harrisは「人類に最大の関心を払ための技術再編」を目指し、Center for Humane Technologyという団体を設立した。

そして、デジタルウェルネスは、今や数百万人に及ぶムーブメントだ

Siempoは、よりバランスの取れた技術の使用に焦点を当てた、幅広いセルフケアのカテゴリに当てはまるアプリなのだ。

Siempoの仕組み

インストールが終わると、Siempoはホームスクリーンを、バッジアイコンやカラフルなコーポレートロゴなどのない、穏やかなインターフェースにする。ここで、携帯電話をアンロックしたときに現れるメッセージをパーソナライズすることができる(たとえば「今日の格言」など)、そして今度の水曜日に出されるアップデートによってカスタムバックグラウンド画像や、ダークモードなどを設定することができるようになる。

主要機能の1つは、通知をバッチ処理する方法を利用者が指定可能にすることだ。

アプリに通知タイミングを自由に選ばせるのではなく、ユーザーが好むタイミングで通知が送られるように電話を設定することができる。たとえば30分に1度とか、毎正時と共にとか、あるいは本当にやる気なら、1日に1度とか(とはいえ、もし必要なら、そうした制限を飛び越えて通知を行うアプリを指定することはできる)。

Siempoはまた、気の散ることからユーザーを遠ざけるための、多くのデザインテクニックを活用している。例えばアプリアイコンをグレイスケール化して、ブランドを剥ぎ取るなどの手法だ。

さらに、ランチャーは、階層化されたメニューシステムの中にアプリを整理して、気を散らすアプリが3ページ目以降に現れるようにする。そしてそれらのアプリが見に行く度にランダムに配置が変わるようにすることで、無意識のうちに開いて使ってしまうことを防ぐ。

「どのアプリの利用度を減らしたいのかを認識するだけで、アプリとの関係性が大きく変わるという報告がユーザーから上がってきています」とDunnは指摘する。

このアプリは上記で紹介したCenter for Humane Technologyによって、人道的デザインの一例として推奨されている。

SiempoはBackstage Capitalを始めとする投資家たちから、そのプロジェクトに対する資金を調達している。これまでのところSiempoは、ハードウェアプロジェクトで55万5000ドル、ソフトウェアでは40万ドルを調達している。

このアプリはベータ版期間中は無料だが、月額1ドル以上好きなだけの金額を支払うサブスクリプションモデルになる予定だ。このためこのアプリは支払い能力を心配せず、誰にでも手の届くものとなる。同社は、いくつかのスタートアップスマートフォンブランドとも話していて、デフォルトのインターフェースに採用される計画もあると語る。

Dunnは、長期的にはSiempoの経験が、様々なプラットフォームに及ぶと考えている。

「Siempoは、スマートフォン、デスクトップ、タブレット、ウェアラブルなどの、すべてのツールを統一したレイヤーとなり、集中が途切れることを防ぎ、無意識のうちのアプリ利用が無いようにして、心の健康を改善します」と彼は言う。Siempoが成し遂げられるものの可能性を語りながら「ユーザーの行動を学び、彼らの目標や意図をサポートするために、デジタル世界を調整することができるAIインターフェイスを構築する機会に、とても興奮しています」とDunnは付け加えた。

「私たちは善であり、信頼され、影響力のあるテクノロジー企業でありたいと願っています。ユーザーの側に立ち、その幸福とプライバシーを尊重する会社です」と彼は言う。

このアプリはGoogle Playから入手可能である。Androidプラットフォームが、このレベルと変更とカスタマイズを行うことを可能にしているからだ。将来的には、内容に手を加えられたバージョンがiOS向けにも登場するかもしれない。

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[原文へ] (翻訳:sako)