忘れるのは簡単だが、Salesforce(セールスフォース)は2020年末におおよそ280億ドル(約3兆1240億円)でSlack(スラック)を買収し、この取引はまだ完了していない。完了がいつになるのか正確なところはわからないが、Slackは最終的にSalesforceの一部になるのを待つ間も、新たな機能を加えてプロダクト計画を発展させ続けている。
ちょうど米国時間6月30日朝、Slackはこのところ話していた新しいツールを正式に発表した。ここには、6月30日から利用できるようになったSlack Huddlesという音声ツールや、ビデオメッセージ、Slack Atlasというディレクトリーサービスが含まれる。
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これらのツールは、取引完了時にSlackがSalesforceの一部になったとき、プラットフォームの機能性を高めるのに役立つと証明されるはずだ。Salesforceのプラットフォームに統合されたとき、Huddlesやビデオツール(あるいは会社内部と外部組織の閲覧向けのSlack Atlasすら)の統合がどのように機能するか想像するのは難しいことではない
SlackのCEOであるStewart Butterfield(スチュワート・バターフィールド)氏は、コミュニケーションに関する当局の制限があるためにSlackとSalesforceはまだ協業を始めていないと話すが、これらのツールがSalesforce Service CloudやSales Cloudなどと連携して機能し、ユーザーがSalesforceにあるデータをSlackのコミュニケーション能力と合体させ始めるのを必ず目にするはずだ。
「(Salesforceの)大きなSoRから(Slackの)コミュニケーションへのワークフロー、そして会話が行われているところにデータを表示するといったところに変化があります。セールスやマーケティング、サポートなど顧客とのやり取りにおいてこれらの機能を間接的に活用することに多くのポテンシャルがあると考えています」とバターフィールド氏は述べた。
2020年導入された、社外の人とやり取りできるようになるSlack ConnectをSalesforceが利用するかもしれない、とも同氏は話した。
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「Slack Connect内に全機能をそろえています。会話をきちんと開始する、問題を解決する、(顧客と)コミュニケーションを取るもっといい方法としてビデオを使うのにHuddlesを活用したときに得られるものと同じメリットを手にします」と同氏は説明した。
これらの発表は、仕事の未来、そして買収がらみのものとに分けられるようだ。Salesforceのプレジデント兼COOのBret Taylor(ブレット・テイラー)氏は、買収を発表した2020年12月にその取引についてTechCrunchに語ったとき、その点を確かに認識していたようだ。同氏は2社が仕事のフェースを変えることに直接取り組んでいるとみている。
「Customer 360向けの次世代インターフェースになるためにSlackが本当に欲しいというとき、我々が意味するところは2社のシステムを合体させるということです。我々が現在身を置いている、どこででもデジタルで働ける世界ではチームが分散していて、どのようにこうしたシステム周辺でチームを集めるのでしょう。コラボレーションはかつてないほど重要になっています」とテイラー氏は述べた。
CRM Essentialsの創業者でプリンシパルアナリストのBrent Leary(ブレント・リアリー)氏は、2社が一緒になることで仕事方法の未来が明らかに出現する、と話す。「自宅からミーティングやコラボレーションを行うためにウェブカメラとマイクの前でますます多くの時間を費やすようになっているとき、今日のSlackの発表のような動きは、仕事の将来に関しトレンドとなっているものに応えるものです」とリアリー氏は話した。
Huddlesは、多すぎるミーティングや意見のタイピングによるスクリーン疲れをSlackがなんとかしようとしている1例だ。「こうした『オーディオファースト』の能力により、うまく機能させようと追加で何かすることなしに、ただ口で伝えられるようにして要点が得られれば、意図するところをタイプしようとしなくてもよくなります」と同氏は話した。
さらにリアリー氏は「ただ人々が話せるようにするだけでなく、人々に話しかけながら沸き起こる感情や心の状態をより理解して、チャットのテキストの裏にある意図や感情を推測しなくてもいいようにします」と付け加えた。
EngadgetでKarissa Bell(カリサ・ベル)氏が指摘したように、Huddlesはビジネスの文脈でDiscordのチャット機能のようにも働く 。これはSalesforceのプラットフォームに統合されたときにSalesforceツールにとってかなり有用かもしれない。
当局が買収を精査している間、Slackはプラットフォームやプロダクトの開発を続けている。巨大な買収取引が完了しても、Slackはもちろん独立会社として引き続き事業を展開するが、クロスプラットフォームの統合がかなり行われるのは確かだろう。
そうした統合がどのようなものになり得るのか、たとえ経営陣が公に語れなくても、買収取引が完了した暁にはSalesforceとSlackでは、さらには概して仕事の将来にとって、これらの新しいツールがもたらす可能性について多くの刺激があるはずだ。
カテゴリー:ネットサービス
タグ:Slack、Salesforce、買収
画像クレジット:Bloomberg / Getty Images
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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi)