Slackは、企業内コミュニケーションを今度こそ転換できるのか

slackdroid_2x1

人生経験を積んだ人ならば、Eメールをやめて、企業内の通信手段を変えようと試みたことが何度かあるだろう。Slackはその最新事例にすぎないが、市場シェアと金を手に入れた。

例えば、今日(米国時間4/1)Slackは2億ドルの資金を38億ドルという巨大な評価額で調達した。同社が開業したのはわずか3年前で、既に5.4億ドルを調達済みだ。これはVCが財布のヒモを締め、スタートアップに価値を証明させようとしている昨今、驚くべき金額だ。Slackの名誉のために書いておくが、同社は人気のプラットフォームを作り、これまで270万人のユーザーを獲得している。

私は今世紀の始めからエンタープライズ市場を見ているが、似たようなコンセプトは2000年代初めにもあり、当時エンタープライズの寵児はインスタントメッセージング(IM)クライアントだった。読者が高価なノートパソコンの上にコーヒーを吹き出す前に言っておくと、IMは今日でいうSlackだった。手軽な通信手段として、電話やEメールを使うことなく同僚と即時に連絡が取れた。

事実、今のSlackとよく似て、IMベンダーたちはクライアントアプリを職場の中心に据えたがった。クライアントに統合すれば、複数のエンタープライズアプリ間を行き来しなくて済むようにもできると。しかし、われわれが現在IMクライアントを使っていないのは、そのビジョンが達成されることはなかったことを意味している。

早送りして2009年頃、企業内コミュニケーションツールの第2の波がEnterprise 2.0と共にやってきた。ブログ、ウィキ、チャットツール(Slackとは変わらない)等のWeb 2.0ツールを企業に持ち込めば、Eメールではなし得なかったユーザーエンゲージメントが実現できる。

ここでも多くのベンダーが現れては消えていった。最も有名なのはおそらくYammerで、同社は2012年に12億ドルでMicrosoftに買われた。このアプローチに対する批判の一つは、他の企業内フローから離れたツールだということだった。従来のIMツールと同じく、Enterprise 2.0ベンダーたちはそのツールに業務を統合しようとした。

しかし、IMと同じく、これらのツールがわれわれの作業形態を変えることはなく、未だに主要なコミュニケーションとしてEメールが使われている。どんなに作業に不向きであっても。

そして今また新しい波がやってきて、今回はSlackがその旗頭だ。シリコンバレーの寵児とは言え、よく見ると過去のツールと大きく変わっていない。ごく基本的なチャットクライアントであり、変ったことと言えば、今われわれはクラウドとモバイルの世界に住んでいるということだ。時間と共に、チャットボットを追加して、外部アプリをチャットクライアントに統合している。ちょうど15年前にIMクライアントがやりたがっていたことを。

われわれは、似たような技術の波が2つ、楽観的な見通しで現れては、企業に根付くことに失敗して消えていくところを見てきた。なぜ投資家たちが、今回は違ってうまくいくと考えるのか、私にはよくわからないが、クラウドとモバイルの組み合わせが、われわれに長年欠けていたものなのかもしれない。

彼らが正しく、今度こそ成功するのかどうかは、時を待つしかないだろう。今日ある人は、他の人々が失敗したことにSlackは成功することに2億ドルを賭けた。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。