Slack買収の噂が渦巻く中、セールスフォースの大型買収6件をチェックしてみた

先週SalesforceがSlack買収を考えているという噂が流れた。米国時間11月30日、CNBCは「買収はほとんど完了しており、明日にも発表される可能性がある」と報じている(CNBC記事)。実現すれば超大型買収になるはずだが、SlackはSalesforceにとって最初の大規模な買収ではない。我々はこの機会にSalesforceの大型買収を確認しておくことが必要だろうと考えた。

Salesforceはすでに年間収入が200億ドル(2.1兆円)を超えている。同社は過去に多数の買収を行って収入を拡大し、さらに大きな市場を獲得してきた。

過去最大の買収は、昨年、2019年のTableau買収で価格は157億ドル(約1兆6000億円)だった。 これによりSalesforceは、同社に欠けていたデータ視覚化テクノロジーを獲得した。巨大な既存市場を持つSalesforceはデータ視覚化のニーズに不足することはなく、この買収は売上拡大に大きく貢献した。さる8月にTechCrunchとのインタビューでSalesforceのCEO、プレジデントを務めるBret Taylor(ブレット・テイラー)氏はTableau買収が同社の成長を実現する重要な要素だと語っている。ちなみに同氏自身、2016年の7億5000万ドル(約780億円)のQuip買収を機にSalesforceに加わった。テイラー氏はこう述べている。

Tableauはビジネス面でもテクノロジー面でも戦略的に重要な要素です。企業がデジタル化するに従って、顧客ニーズを的確に理解するためにデータを視覚化して理解することが必須になってきました。これは今後ますます重要になります。

Salesforceの大型買収案件の2位には2018年の65億ドル(約6800億円)のMuleSoft買収(未訳記事)だ。Salesforceはこの買収でエンタープライズ向けSaaS企業としてそれまで持っていなかったデータへのアクセスが可能になったMuleSoftを活用して、事業部ごとのオンプレミスや複数のクラウドに分散して存在するデータを統合することが可能になった。TableauとMuleSoftという2つのメガディールを組み合わせることによって、エンタープライズデータを視覚化し、スマートCRMアシスタントのSalesforce Einsteinサービスにさらにデータを供給できるようになった。

2016年には28億ドル(約2900億円)でeコマースのDemandwareを買収した。同社はSalesforceに組み込まれてCommerceCloudになった。すると2020年のパンデミックで大小の企業がビジネスをオンラインに移行することを余儀なくされた。このためeコマースプラットフォームは飛躍的に重要性を増すこととなった。

2013年には25億ドル(約2600億ドル)でExactTargetを買収(未着)したが、これはSalesforceとして初のビリオンダラー(10億ドル級)買収となった。これが後にMarketingCloudに発展する。この買収により電子メールを利用したマーケティング事業に参入した。パンデミックで顧客と非対面でコミュニケーションを維持することが重要になった2020年にデジタルマーケティングの重要性は再度増大している。

2019年にはMuleSoftの買収完了の数日にSalesforceはまた財布を開き、ClickSoftware買収(未訳記事)に13億5000万ドル(約1400億円)を支払った。これはカスタマーサービスとフィールドサービスを含むサービスクラウドを重視することを意味した。 この買収自体はフィールドサービスに関するもので、同社は出張メンテナンスなどのフィールドサービスを重用な事業とする顧客多数にアクセスできるようになった。

最新のビリオンダラー級買収は(Slack買収の噂を別にすれば)、2020年初頭に13億3000万ドル(約1400億円)のVlocity買収だ。Vlocity買収は、SalesforceのコアビジネスであるCRM(顧客関係管理)分野に対する強化策だった。 このプラットフォーム上に構築された通信、メディア、エネルギーなどのバーティカル市場をSalesforceに統合することができた。適合性は極めて高かったといえる。 Vlocityのプラットフォームを使用することでSalesforceはこれらのバーティカルの構築、強化を継続することができ、専門市場における地位の強化につながった。

現時点ではまだ断定はできないが、Slackの買収が実現する可能性は高い。Salesforceの買収攻勢が続く中、Slack買収が実現すればTableau買収よりさらに巨大なものとなることが予想される。

【TechCrunch Japan編集部】円表示は2020年12月1日現在の104.3円による概算

関連記事
Salesforceによる買収検討との報道を受けてSlack株価が急騰中
セールスフォースはどのようにして2兆円超の年換算売上高を予定より早く達成したのか
Salesforceがワードプロセッサアプリを提供するQuipを7億5000万ドルで買収
SalesforceがDemandwareを28億ドルで買収、Eコマースに参入
セールスフォースが顧客管理システム開発のVlocityを約1460億円で買収

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Salesforce買収

画像クレジット:MediaNews Group/The Mercury News / Getty Images

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。