Slopeが「グローバルB2B決済のStripe」を目指し、初めての資金調達

Alice Deng(アリス・デン)氏とLawrence Murata(ローレンス・ムラタ)氏は、人工知能企業で働いていたときに、それぞれ自身のファミリービジネスからヒントを得て、Slope(スロープ)を創業した。同社は「今買って後で払う(BNPL)」サービスを企業が簡単に提供できるようにする。

「世界的なパンデミックの前、サプライヤーは請求書の日付から30日以内に支払うという条件を延長したりしていましたが、その程度では中小企業にとって信用を築くのは難しいのです」とムラタ氏はTechCrunchに話した。

「世界的な大流行により、企業間決済のオンライン化が加速しました。私たちは、支払いをオンライン化し、企業の資金調達を容易にすることで企業に力を与えたいと考えました」とムラタ氏は語った。

企業は数秒で承認を得ると、分割払いを提示することができる。顧客は支払いの際、自分に合った支払い方法を選べる。Slopeは、融資、引受、債権回収を担当し、製品やサービスが提供されたときに企業に支払う。

Slopeの仕組み。画像クレジット:Slope

デン氏とムラタ氏はY Combinatorで2回創業しており、直近では2021年のサマーコホートに参加した。参加したときは今の会社ではなかったが、方向転換して現在のSlopeのビジネスモデルを作り、8月に立ち上げた。

すでに同社は、過去30日間で取扱高が15倍になるなど、驚異的なペースで成長している。この3カ月間で、米国、カナダ、メキシコ、インド、シンガポールの販売業者の顧客を獲得した。近々、中国、ブラジル、ヨーロッパの販売業者がウェイティングリストに加わる予定だ。

同社は11月22日、Global Founders Capitalのほか、Dropbox、DoorDash、Opendoor、Plaid、PlanGrid、Mercury、Pilotの創業者らからシードで800万ドル(約9億円)を調達したと発表した。今回の資金調達の目的は、Slopeのチームを拡大し、顧客中心の体験を実現するためのインフラを構築し、ウェイティングリストの販売業者にサービス提供を開始することだ。

世界のB2B決済市場は、2020年には8700億ドル(約99兆円)だったのが、2028年には1兆9000億ドル(約217兆円)に達すると予測されている。同時に、127兆ドル(1京4500兆円)の決済フローがB2B決済によるものだと推定され、これも2028年までに200兆ドル(2京2800兆円)に増加すると予想されている。

「我々のビジョンは、グローバルB2BのStripe(ストライプ)になることです」とデン氏は話す。「B2Bで勝利するためには、AffirmやAfterpayのようなB2Cプレーヤーが取り組む必要がなかった、グローバルなクロスボーダー取引のインフラと中核となる技術を構築する必要があります」

また、デン氏とムラタ氏は何百もの中小企業にBNPLの必要性を聞き取り調査し、Slopeが製品を開発する前から既に契約を結ぶ結果となったが、これは市場に大きなニーズがあることを証明するものだとデン氏は指摘する。

Global Founders CapitalのパートナーDon Stalter(ドン・スタルター)氏はSlopeの成長について、「最初から印象的で、今のステージとチームの規模からして、私たちがこれまでに見てきた世界的な急成長企業の1つです」と語る。

企業はこれまで事業融資を銀行に頼ってきたが、それは「ジャンキーなプロセス」だった。テクノロジーを駆使し、そのプロセスを5倍の速さで改善できる企業は大きなディスラプターになり、100倍にできれば革命を起こすことができる、とスタルター氏は付け加えた。

その大きなB2B決済市場を狙い、ビジネスの可能性を広げる人工知能と新しいテクノロジーで攻めることで、デン氏とローレンス氏にはそれができるとスタルター氏は確信している。

画像クレジット:Slope

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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