Snapchatを使っていて一番不便なのは、音声付きのスナップが送られてきたのに、うっかり聞き漏らしてしまうことがあることだ。騒々しいところで開いてしまったり、あるいは音がならないようにしているときに開いてしまったりする。Snapchatがリリースした最新版に搭載されたリプレイ機能は、そうした問題にも対処しようとするものなのかもしれない。1日に1度、送られてきたスナップをもう1度再生することができるようにするものだ。しかしこれがむしろ大きな問題を引き起こすことになる。自らの特徴である「はかなさ」(短期で消滅する性質:ephemerality)を失ってしまうことになるのだ。
Snapchatが大いに流行することになった要因は、送受信するメッセージ(スナップ)を一瞬だけ見ることが出来るという性質によるものだった。「瞬間」に集中する必要があり、それがためにコミュニケーションに集中することともなった。
しかし今回投入された「リプレイ」機能があれば、漫然と対処することが可能となってしまう。アプリケーションを開いたままにしていて、かつ他のスナップが送られてくる前であれば「すごいな。ちょっと際どくてナイスじゃん。もう一度見てみよう」などということが可能になるのだ。
もちろんFacebookのタイムライン投稿のように、永久に残ってしまうというものではない。しかしこれまでのように気軽になんでも送るようなことはできなくなる。構図はちゃんとしていただろうかとか、髪が乱れていたのではなかろうかなどと気になってしまう。
これまでSnapchatで送られるスナップは、一度だけ閲覧されてあとは記憶の中に残るのみとなるものだった。記憶というのは曖昧なものであり、それがために気軽になんでも送ることができたのだ。こんな写真を送ると何を言われるだろうなどということを気にする必要もあまりなかった。そうした性質のおかげで、馬鹿馬鹿しい内容で盛り上がったり、あるいは少々際どいスナップを送り合って笑い合ったりできたのだ。ちょっとしたおふざけ写真が後々までひと目にさらされるような危険性については考える必要がなかった。
これからはスナップの内容が再チェックされてしまうようになるわけだ。あるいは誰かに見せたり、さらには再生の様子を他のカメラで撮影したり、あるいはスクリーンショットに残したりすることもしやすくなってしまう。シモネタ絡みで楽しんでいた人たちは、少々使いにくさを感じてしまうことになるだろう。他の人に見せられたり、あるいはカメラで記録されたりする可能性がある中、際どい写真などは送りたくないと考えるのが普通だろう。
冒頭にも書いたが、リプレイが便利である場面というのも確かにある。しかしUI面でも機能面でも、あまりにひどいデザインであるように思える。機能を使うにはメニュー階層を深くたどって「Manage Additional Services」というメニューを発見して、そこから行う必要がある。ちなみにこの設定でリプレイが可能になるのは自分の端末上(人から送られてきたスナップを見る場合)であり、自分が送るメッセージをリプレイ可能性を設定するものではない。自分の送る画像やビデオのリプレイ可否を設定する方法は用意されていないのだ。
Snapchatは10月にもStories機能を発表し、短い時間で消滅するという自らの特徴とは違う方向への進化を模索しているように見える。これは24時間以内なら何度でも見られる形式でパブリックに、あるいは友人に対してスナップを公開するものだ。24時間たてば、スナップは消え去ることとなる。リプレイもこの流れにあるものと考えることが出来るかもしれない。しかしStoriesでは、何度でも閲覧可能とする設定を行うのは送信者側だった。リプレイでは、受信者が送信者の意図に関わらず、繰り返してスナップを見ることが出来るようになっているのだ。
リプレイの目的が、ビデオを見るのにうっかり音声をオフにしてしまっていたとかそうした事情に対処しようとするものなのであれば、送られてきたスナップがビデオなのか写真なのかを明示するようにすれば良いと思う(Update:実は区別されていたそうだ。赤が写真で、紫がビデオを示すのだそうだ。しかしもっとわかりやすく示してくれても良さそうなものだと思う)。間違って開いてしまって、よく見ないうちに消滅時間になってしまうということに対処しようとするのであれば、スナップを開くときの仕組みを考え直せば良いだけの話だと思う。
問題に対処しようという、ある種の「好意」からの機能変更であるにせよ、Snapchatは人気を集めた自らの特徴を捨ててしまうような形で変化してしまっている。これが正しい方向性だと思っているのなら、CEOのEvan Spiegelはちょっと考えなおした方がいい。Snapchat自体があっという間に消え去らないうちに、リプレイ機能については考えなおした方が良いように思う。
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(翻訳:Maeda, H)