Snopesは独自のクラウドファンディングで2020年の偽情報戦争に備える

2020年はおそらくここ数十年で最も激しく厳しい選挙の1つになると予想される。演説台やステージ上だけでなく、現代政治の真の戦場であるインターネット上でも争われることになる。古くからあるのファクトチェッカーであるSnopes(スノープス)も戦いに身を投じる。Snopesは、クラウドファンディングの導入を試み、真実は二の次になっているインターネットプラットフォームに依存しない運営を目指している。

TechCrunchが同社から最後に聞いた話は、ファクトチェックに関するFacebook(フェイスブック)との提携からの出直しだ。提携は、悲惨という言葉では強すぎるが、機能不全だったとは言える。優先順位が明らかに一致しなかったため、Snopesは自社の将来、特にファクトチェックに興味がない会社からお金をもらわずにミッションを遂行する環境を確保するにはどうすればよいのか慎重に考えた。

新しい計画では、Snopesのウェブサイトのかなりの読者が、何年もの間無料で使用していたサービスに対し少額の現金を支払うつもりがあるか見極める。現在のところ、標準的なノベルティ購入型の支援スキームがある(40ドル=約4400円でシャツとマグカップがもらえる)が、定期購読料金やその他のサポート手段はもうすぐ発表される。

「サイトの開設以来、我々がチェックした対象から見た我々の外観から資金調達の方法まで、すべてが長くゆっくりとした進化のプロセスだった。今回のことも、そのプロセスのほんの一部にすぎない」とサイト開設者のDavid Mikkelson(デイビッド・ミケルソン)氏は語った。「我々は、ただ道に導かれるまま進むだけだ」。

ここ数年で、Google、Facebook、Appleなど、ユーザーに実際にニュースを配信するサイトの近くには道が通っていないことが明らかになった。Snopesを新しい方向に率いたオペレーション担当副社長のVinny Green(ビニー・グリーン)氏は、上記の企業が現在行っていることを「信頼性の劇場」と呼んだ。

「FacebookのPRスタッフの人数が世界中の正式なファクトチェッカーよりも多いという事実は、状況の不均衡を示している」と同氏は述べた。「Apple NewsとGoogle Newsには、オンラインで健全な内容を流す使命や義務がない。流されるコンテンツの信憑性と信頼性の確保に関心を持つ誰かが立ち上がる必要がある。だから我々が立ち上がる。だが、資金とその調達先へのアクセスだけは、我々自身で拡大するものだ」。

そのため、グリーン氏とSnopesのチームは、クラウドファンディングのための独自のインフラを構築した。KickstarterやPatreonのようなものは避け、目的に合ったものを作った。出来上がった仕組みは、他のサイトでプロジェクトを支援している人なら誰でもなじみがあるものだ。Snopesの場合、コミュニティからの資金募集と見返りとしてのノベルティ付与が可能な汎用システムとして機能するように拡張可能になっている。

数日前のキャンペーン開始以来、すでに1000人の支持者を得ており、その半数だけが見返りとしてノベルティを求めた。この初めての取り組みは、口コミで存在を広め、バグを取り除くことを目的としている。2020年初めに定期購読料金のほか、新しいプロジェクトに紐付いた資金調達のオプションが登場する予定だ。

「ファクトチェックを行う組織はあるが、ファクトチェックを行うビジネスは多くない」とグリーン氏は述べた。企業は情報をそのまま流してしまう傾向があるか、Facebookのように「パートナーシップ」に素直に同意する傾向がある。巨大な資金力と影響力のある会社がパートナーシップという形でお金と注意を払ったのだから、偽情報に反対していると主張できるわけだ。

「数十億ドル(数千億円)規模のプラットフォームが、なぜ30の物事をチェックするのに月額3万ドル(約330万円)をファクトチェッカーに払うのか、本当に疑ってみる必要がある。Facebookのファクトチェックパートナーシップの主な目的は、彼らのプラットフォームで虚偽の情報の受け取りや表示を防ぐことではないことは明らかだ。それは二次的、三次的な目的だった。信頼できる情報のみを提示することは、彼らのビジネスモデルに反している」。

トラフィックとフィードバックは、Snopesが世界中の多くの人々に評価されていることを示している。なぜSnopesは自らを直接支えられないのか。

「情報を暴くという点では、2020年は大変なことになるだろうが、プラットフォームのビジネスモデルは改善しないだろう」とグリーン氏は語った。「トラフィックが増加し、従来の測定基準ではより大きく見える。一方、批判や歪曲のない情報をオンラインで消費したいという欲求もあると思う」。

ブラウザ拡張機能も計画されている

そのため、クラウドファンディングインフラがいくつかのことを可能にするとSnopesは考えている。第1に、最近報告されたようなFacebookページの不正なネットワークや、右翼メディアであるEpoch Timesへのリンクが疑われる偽のアカウントなどに関して、調査作業を直接サポートできる。Facebookは12月20日、その不正ネットワークの削除を発表し、「我々の調査によればこの動きは、米国に拠点を置くメディア組織であるEpoch Media Groupと、ベトナムで同組織のために活動する個人とつながりがある」と述べた。

Snopesについては言及されていないが、同社は不正なネットワークについて記述したメールが何百回も開かれたと指摘する。これは問題となっている会社間の関係を理解するヒントになるはずだ。このような調査に関するフォローアップや費用の支援目的で、読者に5ドル(約550円)をチップとして寄付してもらうことは、小さいながらも重要な変化を生み出す素晴らしい方法だ。読者はチップだけでなく情報提供もできる。

第2に、Snopesのスタッフが調査の過程で集めた膨大な情報に基づいて作成されるニュースアグリゲーターを正当化し、強化することができる。「包括的ではないが、アップロードした内容は保証できる」とグリーン氏は述べた。先行バージョンは来年春に立ち上げる。

また、サイトの最新版ウェブアプリの導入や、コミュニティからフィードバックとデータを取得する方法の改善なども計画されている。「我々には20億人のユーザーはいない。我々はユニコーンでもないが、我々にもできることがある」とグリーン氏は言う。

広告収入が枯渇し、サイトが潜在的な資金提供者と敵対関係にある場合、他に選択肢はあるだろうか。Snopesのニュースルームのスタッフは12人以下という非常に小さなビジネスだ。既に20年間にわたって使ったりやめたりを繰り返してきたユーザーなら、もう1つ定期購入を増やす余地があるかもしれない。

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(翻訳:Mizoguchi)

投稿者:

TechCrunch Japan

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