〔この記事はJason Rowleyの執筆〕
今週、WeWorkは中国における子会社、WeWork ChinaがSoftBank、Temasek Holdings他から5億ドルの追加投資を得たことを発表した。これにより中国法人の価値は1年前の10億ドル(投資後会社評価額)から50億ドルにアップした。WeWork Chinaは前回の投資ラウンドをほぼ1年前、2017年の7月に発表している。
SoftBankが同一会社に複数回投資することはめったにない。この記事の執筆時点で、Crunchbaseのデータによれば、SoftBank自身は144社に175回の投資を行っている。このうち、2回以上SoftBankから投資を受けた会社は23社だ。 このうちWeWorkは、中国法人も加えて、合計4回の投資を受けており、SoftBankの投資として最多となっている。
こうした実績から判断すると、SoftBankの戦略は各ビジネス分野におけるトップ企業に投資することのようだ。株式の持ち分として会社評価額の何パーセントにあたるのか外部から判断しにくい場合もあるが、SoftBankからの投資は各企業における最大の投資であることが多い。
たとえばWeWorkの場合を見てみよう。WeWork本体と現地法人、WeWork China、WeWork Indiaなどを含め、SoftBankの投資は単独出資であるか、投資ラウンドをリードしているかだ。また投資シンジケートの一員である場合もその中で最大級の金額を出資している。
特に市場拡大のチャンスが大きい分野の場合、SoftBankはその地域でリーダーの会社に投資することが多い。 なるほど世界征服というのは難しい企てだが、SoftBankは非常に巨大なので、ある事業分野について各地域のトップ企業の相当部分を所有することができる。結果としてSoftBankがその分野の世界のシェアのトップを握るチャンスが生まれる。
これは大胆な戦略だ。リスクも大きいし、巨額の資金を必要とする。しかしSoftBankは多くの急成長市場で最大の金額をコミットする投資家となっている。
不動産は投資テーマの一つに過ぎない
WeWorkはSoftBankの不動産投資の一例だが、下に掲げた表に同社の不動産、建設関係の投資の代表的なものをまとめてある。 順位はSoftBank(単独の場合、シンジケートの一員の場合双方を含む)の投資額だ。また関与したラウンド中に占めるSoftBankの投資額の比率も掲げておいた。
しかし、成長中の大型市場で成功を収めているトップ・スタートアップに巨額の投資を行うというSoftBankの戦略は不動産分野に限られない。オンライン・コマース、ロジスティクス、保険、ヘルスケア、そして大きな注目を集めたところではライドシェアとオンデマンド交通機関にもSoftBankは大型投資を行っている。
また人工知能スタートアップ分野で大きなポートフォリオを持っていることも見逃せない。SoftBankはNvidia、Improbable、Brain Corporation、Pentuumなどに投資している。またMapboxやCruise Automationに投資していることはSoftBank自身の自動運転車プロジェクト、SB Driveにも有利だろう。
SoftBankは古いものもすべてリニューアルしていく戦略の一例だ。 1990年代後半、SoftBankとファウンダーの孫正義はすでにテクノロジー分野で最大の投資家の一人だった。当時も現在同様、孫正義はSoftBankのポートフォリオをいわばバーチャル・シリコンバレー化しようとしていた。つまり投資先企業同士が協力することによってビジネス上のシナジー生むプラットフォームの構築だ。投資テーマを絞り込むSoftBankの戦略を見ると、今日、こうした大胆で愛他的な構想が実現する可能性は十分にある。しかし孫正義はテクノロジー投資の第1ラウンドではドットコム・バブルの崩壊で多額の損失を被ったことが知られている。第2ラウンドでSoftBankが成功するかどうかは今後に待たねばならないだろう。
画像:Ufuk ZIVANA / Shutterstock
[原文へ]
(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)