昨年5月にSoftBankは1000億ドルを目標とするVision Fundになんと930億ドルもの出資を確保して組成を完了した。このニュースはテクノロジー界に大きな衝撃を与えた。しかも日本のテレコムの巨人は第2次の組成の準備を進めている。またSoftBankの発表(PDF)によれば、Vision Fundの総額の3分の1がすでに投資されている。
先月、この投資の大きな部分、77億ドルがライドシェアリングのUberに投じられた(SoftBankも12億ドルを直接投資している)。これに先立って2017年には、45.8億ドルを投資することで中国のDidi(滴滴)と合意している。ただし、この後者の投資はVision Fundの兄弟分でVision Fundの投資先と競合する可能性がある企業への投資を扱う総額60億ドルのDelta fundからとなる。
今朝発表された資料にはVision Fundが275億ドルを投資済みだとあるが、これは2017年12月31を終期とする9ヶ月におけるデータなので最近のUberへの投資は含まれていない。アメリカのライドシェアリングへの投資を加算すると、投資総額は350億ドルとなる。
Uber以外の企業への投資には、ARM、Nvidia、Flipkart、Paytmの親会社One97 Communication、OYO Rooms、Improbableなどが含まれる。最近の投資には犬の散歩アプリ、Wagへの3億ドル、ドイツの中古車マーケットプレイス、Auto1への5.6億ドルがある。どちらも今年に入ってからの投資であるためSoftBankが発表した資料には含まれていない。
Vision Fundは「 300年間成長し続ける会社」にするというSoftBankの戦略の一部だ。このため各カテゴリーごとに世界市場での勝者を発見し、支援するというコンセプトだ。SoftBankは投資先企業と協調しテレコムとAIに関連するサービスとテクノロジーの発展を目指す。Vision Fundの投資家はApple、Qualcomm、UAE〔アラブ首長国連邦〕のMubadala Investment Company、サウジアラビアのPID上場ファンド、Foxconn、Foxconn傘下のSharpなどだ。
Vision Fundという巨人が登場したことはアメリカにおける後期ステージのベンチャー投資の構図を大きく変えた。Sequoiaなどの有力ベンチャーキャピタルは急ぎ大型ファンドの組成を始め、Vision Fundに対抗しようとしている。
Vision Fundの影響はすでに各方面に感じられている。Wagへの投資の場合、Vision Fundは投資額を3億ドル以上にすべきだと強く主張したため、NEA(New Enterprise Associates)とKleiner Perkinsはラウンドへの参加を断念したという。両社とも当初Wagに強い関心を示していた。結局、Vision Fundは単独で投資を行ったが、他の投資案件でも同様の例が見られるという。
テクノロジー投資の分野では前代未聞の額のファンドだが、もちろん「先んずれば人を制する」ともいう。
Battery Venturesのジェネラル・パートナー、Roger LeeはTechCrunchのインタビューに対して、同社の最新の大型ファンドについて説明する中で、Vision Fundは「投資における優れたパートナーであり、あるカテゴリーのリーダーとなる可能性のある企業にとって(出資者として)重要な候補となる」と述べている。Battery VenturesはWagに当初から投資していた。
Leeはまた「SoftBankが投資しているジャンルには数多くのライバルが活動しており、それぞれ大きな価値を生んでいる。また〔出資者を探す場合も〕SoftBankが唯一のオプションというわけではない。上場を控えた後期ステージのスタートアップへの投資を専門としてきた投資家は多数いる」とも語っている。
SoftBankによれば、Vision Fundはすでに23億ドルの利益を上げているとしている。これは主としてNvidiaの株価上昇によるものだ。1000億ドルのファンド全体が目指すリターンはもちろんはるかに大きいものだろう。
画像:Tomohiro Ohsumi/Getty Images
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)