SpaceXが地方ブロードバンド推進基金から920億円獲得、ファイバー網を引けない地域でのStarlink衛星サービスに期待

FCC(米連邦通信委員会)は、地方部デジタル機会基金フェーズⅠ入札の結果を公表した(FCCリリース)。この基金は難しい名称に聞こえるが、サービスが十分に提供されていない地方に安定したインターネット接続を提供するブロードバンドプロバイダーに資金を分配するというものだ。ここにはSpaceX(スペースX)に割り当てられた8億8500万ドル(約920億円)が含まれる。同社のStarlink衛星サービスはファイバー網を敷くことが現実的ではない地方にとってゲームチェンジャーとなり得る。

SpaceXより多くの資金を獲得したのはたったの3社だ。Charter(チャーター)の12億2000万ドル(約1270億円)、ミネソタ州とアイオワ州のプロバイダーLTD Broadband(LTDブロードバンド)の13億2000万ドル(約1370億円)、そして公共事業の集合体Rural Electric Cooperate Consortium(地方部電気協同組合コンソーシアム)の11億ドル(約1140億円)だ。これら3社は基本的に従来型の有線ブロードバンドを提供し、資金受領者リストを一読したところ他に衛星ブロードバンドのプロバイダーはないようだ(合計180の入札者が資金提供対象として選ばれた)。

92億ドル(約9570億円)の入札(FCCリリース)では、企業が特定のエリアにどのくらいのサービスを提供できるかを求めている。下りが100Mbs、上りが20Mbs以上というのが理想だ。この入札で地方の企業は、現在では銅が使われているファイバー網を敷くのに必要な巨額の資金を得ることができ、また複数の州にまたがる未整備地域では数億ドル(数百億円)もの大きな開発プロジェクトが展開される。

SpaceXのStarlinkには、地方に暮らす人にインターネットを提供するのに大型建設プロジェクトは不要という利点がある。必要なものはパラボラアンテナで、急速に拡大している地球低軌道衛星ネットワークに現在カバーされているエリア向けのサービスだ。つまり、同社は理論的には多くの競合他社より一歩先を行くことができる。

Starlinkはまだ本格提供されておらず小規模なテスト展開のみだが、SpaceXによるとテストは極めてうまくいっているとのことだ。このサービスのベータテスター第1陣は毎月99ドル(約1万300円)の使用料と、1度限りの設置費用500ドル(約5万2000円)を払うことになる。しかし商業サービスの価格がどれくらいになるのかはまだわかっていない(おそらくもう少し安くなると思われる)。

FCCの入札で8億8500万ドルを確保するために、SpaceXはリーズナブルな価格で同社が網羅するエリアにしっかりとしたサービスを提供できることを示す必要があった。そのため現行のブロードバンドサービスと同じような価格になると思われる。同様の価格帯でサービスを提供できる衛星ブロードバンドプロバイダーは他にない。SwarmはIoT接続を月5ドル(約520円)で提供しているが、これはまったく異なるカテゴリーだ。

しかし、FCCは巨額の小切手でElon Musk(イーロン・マスク)氏のドアをノックしたわけではない。同社は約束したロケーションで「断続的な構築要件」を示さなければならず、それを受けて資金が配分される、これは数年続き、若いインターネットプロバイダーが立ち上げの厳しさや不確実性が続く間も事業を継続するのに貢献するはずだ。FCCの基金が底を突く頃には、理想的には企業は数百万の契約者を抱えているはずだ。

今回はフェーズⅠの入札で、新しいインターネットサービスを最も必要としているエリアを対象にしている。フェーズⅡでは、サービスを提供できる企業が1社はあるが競争がない「少しはサービスが提供されている」エリアを対象とする。SpaceXがそこで事業を推進できるかどうか(あるいはそうしたいのか)は不明だが、こうしたどちらかというと達成が困難なマーケットでは限定的な役割に止まるxかもしれない。

地方のブロードバンド拡大の推進は、間もなく職を退くFCC委員長Ajit Pai(アジート・パイ)氏が特に関心を寄せてきたものだった。同氏はこの取り組みははこれまでのところ成功していると述べた。

我々はこのイノベーティブで画期的な入札を、テクノロジー的に中立なものになるよう、そして高速、低遅延のサービス提供を優先するものになるようにしました。税金を最大限有効活用すること、ネットワークが消費者の増大するブロードバンド需要に合うものになることを目的とし、我々の戦略がうまくいったことが結果に表れています。この入札はデジタル格差を埋めるためにこれまで取られた1つの対策としては最大のものであり、現在も続くユニバーサルなサービスに向けた取り組みにおいてFCCにとって大きな成功です。この入札を期日までに終わらせようと長らく懸命に取り組んだ職員に感謝しています。

入札で選ばれた事業者の一覧はFCCのプレスリリースで閲覧できる。

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カテゴリー:ネットサービス
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画像クレジット:SpaceX

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(翻訳:Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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