SpaceX(スペースX)は米国時間1月20日、Crew Dragon宇宙船の安全システムの重要なテストを完了した。テストではFalcon 9を使ってCrew Dragonを打ち上げたが、乗組員は搭乗しなかった。その後、打ち上げは意図的に中断され、空中脱出(IFA)システムを起動させて、打ち上げプロセスの約1分半後にCrew Dragonがロケットから分離した。
意図したとおり、Dragonカプセルは8基のSuper Dracoエンジンを点火し、ロケットから素早く分離した。実際のミッションでは、ロケットが万一故障した場合に搭乗した宇宙飛行士の安全を確保することになる。Crew Dragonエンジンはわずか7.5秒で半マイル(0.8km)飛行し、この加速中は宇宙飛行士に最大4G(地上重力の4倍)を与える。
Crew Dragonは、安全な距離に達したらパラシュートを開いて大西洋に着水し、カプセルの回収が実施される。実際の緊急事態では、空軍のエリート救助チームが可能な限り迅速に乗員を救出するが、今回のデモはカプセルを無傷かつ安全に回収することが主な目的であるため、その回収には2時間以上かかる可能性がある。
打ち上げられたFalcon 9ロケットは過去3回のミッションで使用されたもので、かつSpaceXが有人ミッションを想定して設計した最初のFalcon 9である。そして予定どおり、Falcon 9はCrew Dragonが分離すると大量の燃料とともに爆発した。
スペースXがCrew Dragonの有人飛行の準備がほぼ整ったことを実証したのは、これが初めてではない。2015年には、地上でのパッド・アボート試験に成功し、打ち上げ前に安全にミッションを中止できることを実証した。Crew DragonのSuper Dracoも、昨年11月に地上でのスタティック・ファイア・テストに成功した。SpaceXは2019年のSuper Dracoの初期テストでも致命的なエラーに遭遇したが、その後NASAと協力して原因を特定して間違いが繰り返されないように修正した。
SpaceXは昨年Crew Dragonによる完全な無人打ち上げのデモミッションも実施し、Falcon 9によってカプセルが打ち上げられ、軌道に投入されてランデブーし、国際宇宙ステーション(ISS)とドッキングし、地球に帰還した。これは、最初の宇宙飛行士をISSへと輸送する商用サービス前のチェックとなり、今年中には実際にミッションが行われるはずだ。
同社のCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏は、NASAとSpaceXが主催したミッション後の記者会見で、テストは基本的に計画どおりに実施され、これは有人ミッションに向けて順調な経過だと伝えた。
「全体的に見て、完璧なミッションだった」 とマスク氏は語った。そして「予想どおりの結果で、すごく興奮してる。これは本当に素晴らしい」を続けた。そして「これまでの経過はすべてが完璧に見える」とマスク氏はつけ加えた。「しかし、我々は宇宙船を物理的に回収し、テレメトリ(遠隔モニタ)に現れていない問題を確認する必要がある」とも述べた。
[原文へ]
(翻訳:塚本直樹 Twitter)