SpaceXは、StarshipとSuper Heavyの、間もなく実施される試験積載量での打ち上げのための環境評価準備書を整えた。環境評価の準備を行い完了させることは、完成間近なSpaceXの完全再利用型大積載量ロケットの第1弾となるSuper Heavyにとっても、このシステムの第2弾となる宇宙船コンポーネントであるStarshipにとっても、実際の打ち上げの可否を左右する重要な鍵となる。
すでにSpaceXは、Starshipのプロトタイプを飛ばす準備を進めている。SpaceXのCEOElon Musk(イーロン・マスク)氏の楽観的なスケジュールが合えば、「2〜3カ月後」の打ち上げられる予定だ。Starshipを小型化し、同機に搭載予定のRaptorエンジンのテスト用に作られたデモ機のStarHopperによる地上繋留なしの「ホップ」(跳躍)程度の低高度飛行試験は、先日、成功させた。しかし、SpaceXは、その打ち上げ計画の実施が周囲の環境に及ぼす影響を真剣に考慮していることも示す必要がある。
StarshipとSuper Heavyはフロリダから打ち上げられる、しかしSpaceXには、NASAから借り受けているFalcon 9とFalcon Heavyの打ち上げに使用しているケネディ宇宙センター第39発射施設に、2つ目の発射台を建設する計画もある。39A発射台から打ち上げられたStarshipは、今の予定では、ケープカナベラル空軍基地近く(フロリダ州、米東海岸)にあるFalconの第一段ブースターの着陸に現在使用しているゾーン1(LZ-1)に帰還することになっている。Super Heavyは、東海岸と西海岸の打ち上げミッションの条件にもよるが、飛行経路に沿って無人操縦の台船の上に着陸する。これは、SpaceXが現在使用している「Of Course I Still Love You」(もちろん今でも愛してる)と「Just Read The Instructions」(いいから説明書を読め)の2隻の双子の回収台船と同じようなものだ。
Starshipを打ち上げ場のずっと近くに戻したいSpaceXは、ゆくゆくは、第39発射施設内の39A発射台の近くに着陸場を建設したいと考えている。だがそのためには、その実現可能性と影響を詳しく研究して判断する必要があるため、SpaceXでは、今のところはその計画を先送りすることにしている。
「NASAが設計し、人類初の月面着陸を達成した39A発射台は、幅広いミッションに対応できるインフラを備えた、世界でもっとも有能な打ち上げ台のひとつです」と、SpaceXの広報担当者はTechCrunchに宛てた声明の中で述べている。「Starshipの開発を加速させつつ、SpaceXはパートナーたちと共同で、過去の偉業と進歩した新たな宇宙技術の上に、39A発射台の基盤設備を強化し続けます」。
環境評価準備書の中で、SpaceXは、StarshipとSuper Heavyの打ち上げと着陸を、ケープカナベラル空軍基地のSLC-40と、バンデンバーグ空軍基地(カリフォルニア州、米西海岸)のSLC-4打ち上げ場で行う可能性も検討していると述べている。しかし、SLC-40にはこれらを実施できるだけの広さがない。またSLC-4の場合は、打ち上げ場に戻るために長い道のりを移動しなければならない(巨大なロケットが陸路で米国を縦断することになる)。
最後にSpaceXは、将来的に「StarshipとSuper Heavyをテキサス州キャメロン郡の施設で建造し打ち上げる」考えも示した。テキサスの打ち上げ場には、SpeceXの要となるロケットとエンジンの開発施設に近いという利点がある。性能的に高度に安定した打ち上げと着陸が行える再利用型のシステムの開発に成功すれば、大きな水域から離れているという欠点は相殺されるだろう。ただしこれらの計画は、別物として考えるべきだ。そのため、近い将来、テキサスからStarshipのフルスケールの打ち上げがあると期待するのはまだ早い。
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(翻訳:金井哲夫)