TableauのCEOアダム・セリプスキー氏がAWSの経営者として論理的な選択だった理由

AWSのCEOであるAndy Jassy(アンディ・ジャシー)氏が米国時間3月23日、Tableau(タブロー)のCEOであるAdam Selipsky(アダム・セリプスキー)氏がAWSのトップとして復帰することを社員へのメールで発表したとき、それはおそらく多くの人が考えた選択肢ではなかっただろう。しかし、この2、3日の間に話を聞いた業界ウォッチャーにとっては、考えてみれば完全に納得のいく動きだった。

Gartner(ガートナー)のアナリストであるEd Anderson(エド・アンダーソン)氏は、ジャシー氏にとって組織カルチャーとの相性は見逃せない適性だったのだろう、と語る。セリプスキー氏は11年間、この部門の構築に貢献した。彼はジャシー氏がよく知る人物であり、10年以上一緒に仕事をしてきた仲間だ。彼なら新しい役割に難なくステップアップして、収益性の高い事業を構築し続けることを任せられるだろう、とも。

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アンダーソン氏は、AWSが160億ドル(約1兆7500億)のランレートで1年を締めくくった2016年にセリプスキー氏が去った後、AWSの事業規模と範囲は大きく変化したかもしれないが、組織の文化的ダイナミクスはそれほど変わっていないという。

「この役割で成功するには、AWSの将来の成長に対するビジョンに加えて、Amazon(アマゾン) / AWSの文化を深く理解することが必要です。アダム(・セリプスキー)は、以前AWSにいたことから、すでにAWSの文化を知っています。確かに、彼が辞めた時にはAWSは今より小規模なビジネスでしたが、基本的な構造や戦略は整っていましたし、文化も当時から目立って進化したわけではありません」とアンダーソン氏は筆者に話してくれた。

Madrona Venture GroupのマネージングディレクターであるMatt McIlwain(マット・マキルウェイン)氏は、セリプスキー氏がAWSを離れた後に得た経験は、戻ってきたときに貴重なものになるだろう、と述べている。

「アダム(・セリプスキー)は、Tableauをデスクトップ型のライセンスソフトウェア企業から、クラウド型のサブスクリプションソフトウェア企業へと変革し、成功させました。彼は営業・マーケティングのリーダーとして、スタートアップの顧客から突破してAWSをパブリッククラウドの主要なエンタープライズソリューションに成長させるのに貢献した人物です。その文化にリーダーとして戻ってくるわけです」と同氏は語った。

Constellation ResearchのアナリストであるHolger Mueller(ホルガー・ミューラー)氏は、セリプスキー氏のビジネス経験が他の候補者よりも有利に働いたという。「(内部候補である)Matt Garman(マット・ガーマン)氏やPeter DeSantis(ピーター・デサンティス)氏よりも、彼のビジネス感覚が勝っていた。また、Salesforceがどのように機能しているかについての見識も役に立ち、評価されているかもしれません」とミューラー氏は指摘している。

Tableauとそれを2019年に157億ドル(約1兆7000億円)で買収したSalesforceから離れることについて、CRM Essentialsの創設者兼主席アナリストであるBrent Leary(ブレント・リアリー)氏は、このように買収された企業のCEOが他のことをするために離れるのは時間の問題だったと考えている。実際、それがもっと早く起こらなかったことに驚いているという。

「Salesforceは数々の有名企業を買収してきたことで一流のCEOを次々と集めていますが、その全員が永遠に残るとは考えられません。また、アダム・セリプスキー氏がTableauのCEOになる前にAWSに在籍していたことを考えると、今回の動きは非常に理にかなっています。Amazonは仲間の1人を呼び戻すことができ、しかも彼は自らの力で大成功を収めたCEOでもあるのですから」とリアリー氏は語った。

セリプスキー氏は良い選択だというのが共通の意見だが、彼はこれから重責を担うことになる。AWS事業部は現在、500億ドル(約5兆5000億円)を超えるランレートで大企業のような成長を続けている。そのような実績を引き継ぎ、ジャシー氏も近くで見守る中、セリプスキー氏は部署が今まで通り回っていくよう仕事を任せながら、独自のポジションも確立していかねばならない。

それが何であれ、変化というものは不安を呼び起こす。顧客や社員に安心感を与え、未来を切り開いていけるかどうかは、彼にかかっている。ミッションは同じ、新しいボスだと。

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画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Aya Nakazato)

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TechCrunch Japan

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