Tiger Globalが同社最大のベンチャーファンドを約7351億円でクローズ

我々と同じように、資金調達の発表に目を通している人なら、2021年はあることに気づいたかもしれない。多数のメガラウンドが行われている中、Tiger Global(タイガー・グローバル)という投資会社が、その多くに共同リードとして参加しているのだ。

今週だけでも半ダースほどの企業の資金調達で、このニューヨークを本拠とする大手投資会社はリードまたは共同リードを務め、あるいは小切手を切っている。それらの中には、D1 Capital(D1キャピタル)と共同で主導し3億ドル(約332億円)のシリーズCラウンドを行ったHighRadius(ハイラディウス)や、Tiger Globalが主導した延長シリーズCで1億9200万ドル(約212億円)を調達したCityblock Health(シティブロック・ヘルス)、1億2500万ドル(約138億円)のシリーズDラウンドでTiger Globalからフォローオンチェックを受けた6sense(シックスセンス)などがある。さらにTiger Globalは、創業5年目のAIチップメーカーであるGroq(グロック)の3億ドルの資金調達ラウンドを共同リードする交渉を行っているとも報じられている。

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その資金がどこから来ているのかと不思議に思う人もいるかも知れない。Tiger Globalは2020年1月に、13番目のベンチャーファンド(迷信的な理由から「XIV」と名付けられた)のために37億5000万ドル(約4146億円)を調達するという手紙を投資家に送ったのだが、新たに米国証券取引委員会に提出された書類によると、この新しいファンドはその2倍近い金額、66億5000万ドル(約7351億円)でクローズしたばかりであることがわかる。

この金額はこの市場においても、またTiger Globalにとっても莫大な数字だ。同社は2020年、12番目のファンドを37億5000万ドルの資本コミットメントでクローズしたばかりだ。

さらなる情報を求め、我々は1月に同社の資金調達計画を取材したが、その際にも記したように、Tiger Globalは潜在的なリミテッドパートナーに対して強力な提案をしているように見えた。

その直近の成果としては、ポートフォリオ企業であるStripe(ストライプ)が2021月3月に6億ドル(約663億円)の資金調達を完了し、評価額を950億ドル(約1兆502億円)に伸ばした。また、Tiger Globalが株式の10%を保有していたゲーム会社のRoblox(ロブロックス)は、直接上場して上場企業となった。同社の時価総額は現在380億ドル(約4兆2050億円)だ。

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2020年には、ポートフォリオ企業の多くが上場するか買収されており、その中には中国の大手化粧品ブランド「Perfect Diary(完美日記)」の親会社で、設立5年を迎えるYatsen Holding(逸仙控股)や、クラウドベースのデータウェアハウス企業であるSnowflake(スノーフレイク)、オハイオ州コロンバスに本社を置く保険会社で6年近く前に設立されたRoot insurance(ルート・インシュアランス)などがある。

M&Aに関しては、2020年はTiger Globalが出資する少なくとも3つの企業が大手ハイテク企業に吸収された。Postmates(ポストメイツ)はUberに26億5000万ドル(約2932億円)で全株式売却。Credit Karma(クレジット・カーマ)はIntuit(インテュイット)へ現金と株式による70億ドル(約7745億円)で売却された。顧客サービスプラットフォームとチャットボットに注力するKustomer(カスタマー)はFacebook(フェイスブック)に10億ドル(約1106億円)で買収されている。

ヘッジファンド運用をルーツとするTiger Globalは、ヘッジファンドのパイオニアであるJulian Robertson(ジュリアン・ロバートソン)氏の下でTiger Management(タイガー・マネジメント)に勤務していたChase Coleman(チェイス・コールマン)氏と、Blackstone Group(ブラックストーン・グループ)に3年間勤務した後、2002年に入社したScott Shleifer(スコット・シュライファー)氏が中心となり、2003年にプライベートエクイティ事業を開始。後にビジネスに大きく貢献することになるLee Fixel(リー・フィクセル)氏が2006年に加わった。

シュライファー氏は中国を、フィクセル氏はインドを担当し、その他のサポートチーム(現在、22名の投資プロフェッショナルが在籍)は、ブラジルやロシアでの案件発掘を支援していたが、その後は米国におけるチャンスをより積極的に狙うようになった。

すべての投資判断は、最終的に3人それぞれが行っていた。フィクセル氏は2019年に退社し、自身の投資会社、Addition(アディション)を起ち上げた。現在はシュライファー氏とコールマン氏のみが会社の意思決定者を務めている。

Tiger Globalの投資家には、政府系ファンド、財団、基金、年金、そして自社の従業員が混在しており、現時点では従業員がまとめて同社の最大の投資家であると考えられている。

Tiger Globalのこれまでの最大の成功例としては、電子商取引大手のJD.comに2億ドル(約221億円)を賭けて50億ドル(約5530億万円)の利益を生み出したことなどが挙げられる。WSJによると、2018年に上場した中国のオンラインサービス・プラットフォーム、Meituan(美団)でも10億ドル(約1106億円)以上の利益を上げている。

また、Tiger GlobalはコネクテッドフィットネスのPeloton(ペロトン)への投資を通じて巨額の利益を得ており、Pelotonが2019年にIPOした時にはその20%を保有していた。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Tiger Global Management投資

画像クレジット:Jeenah Moon/Bloomberg / Getty Images

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(文:Connie Loizos、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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