TikTok(ティックトック)は米国時間7月23日、2億ドル(約214億円)のファンドを発表した。米国のトップクリエイターの収入を補い、次のCharli D’Amelio(チャーリー・ダミリオ)の発掘を狙う。
この「TikTok Creator Fund」(ティックトック・クリエイターファンド)は、プラットフォーム上の「適格」クリエイターが生計を立てるのを助けることが目的だと同社は述べた。現在のところ対象条件は、18歳以上で、フォロワーに関し一定の基準(まだ明らかにされていない)を満たし、TikTokのコミュニティガイドラインに沿ったオリジナルコンテンツを一貫して投稿していることだ。TikTokは来月から、米国を拠点とするクリエイターからの申請受け付けを始め、来年資金を分配する。
支払宣言は、TikTokと中国の親会社であるByteDance(バイトダンス)にとって重要なタイミングで行われた。TikTokは売上高で最大の市場である米国で、ユーザーデータの取り扱いと中国とのつながりに関して高まる批判に直面している。トランプ政権からは人気アプリを全面的に禁止するよう求める声が出ている。
それに応えてTikTokは米国に対し、フレンドリーな側面を強調する動きを見せている。米国でさらに1万人のスタッフを増員すると誓った(Axios記事)。今週流れ始めた噂(The Information記事)では、米国の投資家がTikTok事業の過半数の株式をByteDanceから買い戻し、中国の手から会社の支配権を取り戻すことを検討しているという。
なお、後半部分は反応を見るためのテストなのか、単なる噂なのか明らかではない。一方、ByteDanceとTikTokの最近のPR方法を見ると、2社がつながっていないことを手を尽くして示そうとしていることがわかる。中国の広報担当者はTikTok関連の質問に答えず、報道陣への対応を米国チームに行わせている。
TikTokの米国事業担当GMであるVanessa Pappas(バネッサ・パパス)氏はブログ投稿で「ByteDanceはCreator Fundを2億ドル(約214億円)から始め、今後増額する計画だ」と述べている。同氏はTikTokが個々のクリエイターに支払う金額をどう決めるか、支払いを受けるために追加の条件を設けるかについては明らかにしなかった。なお現在、クリエイターが適格となるために必要なフォロワーの数について質問中で情報を入手次第更新する。
TikTokはすでにクリエイターをブランド提携契約やスポンサー契約の締結で支援しており、ライブストリームの収益化をもたらしている。TikTokには教師をプラットフォームに紹介する5000万ドル(約54億円)のCreative Learning Fund(クリエイティブラーニングファンド)もあり、すでに米国の約1000人の教師が使用している。また、Creator Marketplace(クリエイターマーケットプレイス)は、ブランドとクリエイターをつなぎ、有料キャンペーンでコラボレーションする。
「クリエイターはTikTok Creator Fundを通じて追加の収入を得ることができる。追加の収入はクリエイターが投入した時間、配慮、貢献によって決まる。クリエイターはそのアイデアで視聴者を触発し、クリエイティブなつながりを築くために努力する」と同氏は語る。
TikTokは現在、米国で約1400人の従業員を雇用している。最近、世界でインストールが20億回というマイルストーンを達成した。同社によると昨年米国でのユーザーは2600万人を数えた。
Chuck Schumer(チャック・シュマー)上院議員とTom Cotton(トム・コットン)上院議員を含む数人の議員はこの数カ月、TikTokのユーザーデータが中国政府に共有される可能性があると懸念を表明している。中国に本社を置くByteDanceは、ユーザーのデータを中国政府と共有しないこと、米国のユーザーデータを米国とシンガポールに保存することを表明している。下院は今週初め、連邦政府職員が政府発行のデバイスでのTikTok使用禁止に関し投票(Reuters記事)し、336対71票となった。
今年5月にDisney(ディズニー)のストリーミング担当幹部だったKevin Mayer(ケビン・メイヤー)氏を最高経営責任者に任命(未訳記事)したTikTokは、自社がケイマン諸島の法人企業であると主張(The NewYork Times記事)している。
今のところTikTokが立ち上げるプログラムの狙いは、正面切って米国で消火活動を行うことのようだ。他国の市場でクリエイターの収入を補うために何をしているのか尋ねたが、コメントの要求には応じなかった。
TikTokが2億人を超えるユーザーと100万人を超えるクリエイターを抱えるインドは、サイバーセキュリティ上の懸念を理由に先月末、中国企業が開発したTikTokなど58のアプリを禁止した。隣国のパキスタンは、今週初めに「不道徳、わいせつ、下品なコンテンツ」と見なしたものについて「最終警告」をTikTokに通達した。
画像クレジット:Joe Scarnici / Getty Images
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(翻訳:Mizoguchi)