タクシー業界は規制が強く、既存事業者の効率も良い東京にUberが参入するのは難しいだろうというのが業界の観測だったが、新たな施策として8月5日16時から、東京都内でタクシーの配車サービスを開始する。これまでは都心部を中心にハイヤーのみを配車していたが、今後は都内全域で空車中のタクシーとユーザーをマッチングする。
東京ハイヤー・タクシー協会が毎年公表しているレポートによれば、都内にタクシーは約4万5000台あり、その数はハイヤーの約13倍。Uberは配車可能なタクシーの台数を明かしていないが、ハイヤーと比べて呼び出せる台数は相当数増えることが予想される。料金もハイヤーより安いので、ユーザーとしては選択肢が広がりそうだ。
Uberは2014年3月に六本木や渋谷などの都内一部でハイヤーの配車を開始。今回スタートしたのは、提携事業者のタクシーを配車する「uberTAXI(ウーバータクシー)」と、提携事業者の高級車種タクシーを配車する「uberTAXILUX(ウーバータクシーラックス)」の2サービス。世界のUberの中で前者はアジア初、後者は世界初となる。
サービス展開にあたってUberはタクシーを自前で保有せず、第2種旅行業者として、提携事業者とユーザーを結ぶ「仲介業者」となって配車する。
uberTAXIはアプリのマップ上から乗降車位置を指定して配車でき、事前に登録する決済情報によって降車時の支払いも不要となる。料金はタクシーのメーターに加えて、提携各社の規定に準ずる迎車料がかかる。つまり、料金は通常のタクシー配車時と変わらないということだ。料金面以外は、既存のハイヤー配車サービス「uberBLACK」の体験をタクシーに置き換えるものといえるだろう。
サービス内容は、タクシー大手の日本交通が提供する「全国タクシー配車」アプリとも似ている。全国タクシー配車は、日本交通だけでなく全国117提携事業者が保有する約2万台のタクシーに採用され、アプリ経由の売り上げだけで40億円を突破している。Uber Japan執行役員社長の髙橋正巳氏は、「全国タクシー配車を利用する事業者とも手を結んでいく」と言い、Uberと提携するメリットを次のように話す。
「都心はすぐにタクシーが捕まえられるので想像できないかもしれないが、都内のタクシーの実車率は43%と半数以下。uberTAXIでは、ドライバーが車両に搭載したUberのシステムで空車であることを登録すれば、スキマ時間に近くのUberのユーザーに乗車してもらって実車率を高めることができる。日本交通のアプリを導入している事業者のドライバーは、Uberと使い分けるかたちになるのではないか。」
なお、Uberと提携する事業者数やタクシーの台数、事業者が支払う手数料や契約内容はすべてブラックボックスとなっている。
世界初のサービスとなるuberTAXILUXは、タクシーよりもちょっとリッチな車種を配車できる。車種はトヨタクラウンロイヤルシリーズ、BMW7シリーズ、Lexus LS、トヨタアルファードなど。高橋氏の言葉を借りれば、「流しで拾おうとすると、運が良くなければ止められないタクシー」だ。料金はメーターと迎車料に加えて、ユーザーがUberに支払う手数料として500円がかかる。
タクシー配車の対応でサービス拡大に期待
Uberのサービス提供エリアは、台数の確保が困難なハイヤーのみを配車している際は渋谷や六本木、山手線の特定エリアなど「一部都心」だったが、タクシー配車に対応したことで「都内一円」に広がることになる。その先には、東京以外の国内主要都市での展開も視野にあるのかもしれない。この点について高橋氏に聞くと、「まずは東京でサービスを軌道に乗せたい」と前置きした上で、「東京に限定しなければならない理由はない」と可能性を否定しなかった。
さらに、いちユーザーとしてみれば、Uberに登録したドライバー(日本でいう「白タク」)と乗客をマッチングし、タクシーよりも低価格で利用できる「uberX」の上陸も期待したいところではある。日本語サイトに「uberX」のページはあるものの、タクシー業界の猛反発が予想されるし、合法的にサービスを提供するにはいくつもの超えなければならない壁がありそうだ。
ちなみに本日8月5日は、タクシーが日本で誕生した日にちなんで「タクシーの日」でもある。