Uberの致命的な事故に関する集計結果は低い値を示しているが、重要な数字が除外されている

Uberがリリースしたばかりの米国内安全性報告書 は、致命的な事故の件数をある程度詳しく述べている。良いニュースは、走行距離(マイル)あたりの全体の致命的事故発生率が、全国平均の約半分であることだ。しかし、レポートに含まれるものと除外されるものに関して、いくつかの不可解な選択がなされている。

画像クレジット:</strong>ANTHONY WALLACE

レポートの作成のために、Uberはドライバー、ユーザー、そして保険会社から得られた、事故の内部レポートを収集し、米国全土の自動車死亡事故を追跡するデータベースであるFatality Analysis Reporting System(FARS)と比較している。このような手段を用いることで、Uberは2017年と2018年の合計で、合わせて107人の死者を出した97件の致命的事故を報告している。

同社はこれに先立ち、2018年の1年だけでも米国では3万6000人以上の人間が車の事故で死んでいることを指摘しているため、合計値そのものにはあまり意味がない。そこで、彼らは(他の組織もこの分野で行っているように)これらの事故を走行距離に対する発生率として報告している。10万マイル(約16万km)の走行あたり1回の衝突事故はそれほど悪いものには聞こえない(なにしろたった1回なのだ)。しかしUberの発表した数字に近い10億マイルあたり10回という衝突事故数は、それよりもはるかに優れている(一部の人にとってこれは疑いようもなくはっきりしたことだが、その他の人にとってはそうでもないかもしれない)。

実際の数値を見ると2017年には、82億マイル(約132億km)を超える走行距離の中で「Uber関連」の死亡者は49人だった、これは1億マイル(約1億6000万km)あたり約0.59人である。これが2018年には、103億マイル(約166億km)を超える距離で58人、つまり1億マイルあたり約0.57人だった。全国平均値は1億マイルあたり1.1人を超えているので、全体でみたときの1走行マイルあたりの死亡者数は全国平均の約半分ということになる。

これらの事故は、一般に全国平均よりも遅い速度下で発生し、夜間の都市の照明のある場所でより多く発生していた。ライドシェアサービスは都市に集中し、より短距離で低速な移動に重点がおかれていることを考えると、これは理にかなっている。

この結果は結構なことだが、残念な点がいくつか見受けられる。

第1に、明らかに、致命的でない事故については一切言及されていない。これらを追跡して分類するのは確かに困難だが、それらをまったく含めないのは奇妙に思える。死亡事故率から予想できるように、Uberによる軽い衝突事故や腕の骨折などのより重度の事故が全国平均よりも低いならば、なぜそう書かないのだろう。

これについて尋ねてみたところUberの広報担当者は、致命的ではない事故は、致命的なクラッシュほどは明確に定義または追跡されていないので、一貫して報告することが困難なのだと答えた。それは一理あるが、それでも重要な部分を見逃しているような感じを受ける。致命的な事故は比較的まれなので、むしろ致命的でない事故に関するデータが他の知見を提供してくれるかもしれないからだ。

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第2に、Uberには「Uber関連」事故に関する独自の定義がある。当然のことながら、この定義には、ドライバーが乗客のピックアップに向かうときや、車に乗客が乗っているときが含まれている。上記で触れたすべての走行距離と事故は、乗客ピックアップの途中または乗車中のものだ。

しかし、ドライバーが少なくない時間を「デッドヘッディング」(配車を待ちながら走り回ること)に費やしていることはよく知られている。時間帯によって大幅に事情は異なるために、正確にどれだけの時間かを見積もることは難しいが、私はUberがこの時間を除外した決定が正しいとは思わない。結局のところ、タクシードライバーたちは乗客を求めて走っているときは勤務中であり、Uberドライバーたちも目的地を行き来して、乗客を捕まえやすい場所へと移動し続ける必要がある。車に乗客を乗せていない状態で運転することは、間違いなくUberドライバーであることの主要な部分だ。

デッドヘッディングに費やす時間がそれほど長くなく、その間に発生した事故の数が少なかったということは十分に有り得る。しかし、他の解釈も可能だ。私はUberがこのデータを開示することは重要だと考えている。都市や市民は、配車サービスが交通などに与える影響に関心を持っているし、車は乗客にサービスを行っていないときに単に消えてしまったり、事故に遭わなくなったりするわけではないからだ。

Uberにこれについて尋ねたところ広報担当者は、ドライバーは乗客を乗せていなかった場合には事故を報告しない可能性があるため、サービス中に関わる事故データのほうおが「より信頼性が高い」と答えた。だが特に致命的な事故の場合は、いずれにせよ報告は挙がってくるはずなので、その回答も正しいものとは思えない。さらにUberは、FARSのデータを、事故に巻き込まれたドライバーがUber上でオンラインであったかどうかの内部メトリックと比較できるため、データの信頼性はまったく同じとはいかなくとも似たようなものになるはずだ。

広報担当者はまた、ドライバーは特定の瞬間にUberで「オンライン」になっているかもしれないが、実際にはLyftなどの別の配車サービスを使用して誰かを乗せているかもしれないとも説明した。もしそうなら、事故があった場合には、レポートはほぼ確実に他のサービスに行くだろう。それは理解できるが、それでもここには欠けている点があるように感じる。いずれにしても、デッドヘッディング中の走行距離は上で使った合計には含まれていないので、数字をまったく引き出すことができない。従って「オンラインではあるが配車されていない」状況の走行距離は、今のところ一種の盲点のままだ。

完全なレポートはここで読める。

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(翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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