UberのIPOはそれほど巨額にならないかもしれない

Uberは今年後半に、米国の歴史に残るものの一つとなるIPOで100億ドルを調達することが予想されている。株式発行により、この配車大手の企業価値は760億ドル(この額は最新のプライベートファイナンシングからはじきだされたものだ)〜1200億ドル(ウォール・ストリートの金融機関が考えている非常に大きな数字だ)あたりになりそうだ。

The Informationの新たなレポートでは、Uberの当初の時価総額は900億ドルになると見定めている。この数字を算出するにあたって、The Informationは2017年にUberが債権者に提供した非公開の書類を分析した。この書類では、“純収益を2019年までに142億ドルへと倍増させる”と予測している。それからThe InformationはUberの複数の収入パターンを描き、そして投資家が言うところの最も近い比較対象であるGrubHubとUberを比較した。

UberはThe Informationの分析についてのコメントを拒否した。

これまでの道のり

Uberは先月、待望されているIPOの書類を内々に提出した。これにより、米国内における競争相手であるLyftとの株式公開に向けたレースの火蓋が切って落とされた。2社の状況に詳しい情報筋によると、LyftはUberの数時間前に書類を提出した。Travis Kalanickによって2009年に設立されたUberは借り入れとエクイティファンディングで約200億ドルをこれまでに調達した。ソフトバンクが最大の株主で、資本構成リストにはトヨタ、T. Rowe Price、 Fidelity、TPG Growthなどその他多くが名を連ねている。Uberの1200億ドルという非常に大きな企業価値についての疑念はどうかといえば、Uberがもうかっておらず、これまでも、そして現在も金を使い続けていることを考えると、この驚くような数字の達成は不可能のようだ。

大型のIPOというのはもちろん投資家を喜ばせるものだ。たとえば、The Wall Street Journalによると、First Round Capitalは2010年と2011年に実施されたUberの最初のラウンドで160万ドルを出資した。企業価値1200億ドルとなった場合、First Roundが保有する株式の価値はおおよそ50億ドルとなる。しかしながら、このベンチャーキャピタル会社は株式のいくらかをベンチマークでソフトバンクに売却していて、売却していなければ価値140億ドルになっていただろう。

Uberが政治面そして規制面での困難を乗り越えるのをサポートすることを2011年に取り交わしたUberの初期投資家Bradley Tuskは価値1億ドルとも言われる株式を保有している。彼もまた保有していた株式の42%をソフトバンクに転売した、と最近TechCrunchに語った。

Tuskは「私は120という数字に非常に満足している」と語った。「しかし…少し驚いている。本当にアグレッシブな数字だ」。

「Uberに出資している投資家はみな、初期のAmazonに投資した人のように、将来を見て長期的に投資している」とTuskは付け加えた。「一つには[UberのCEO、Dara Khosrowshahiが]うまくやっていて、Uberを単なる配車企業ではなくモビリティ企業として成長させていることが挙げられる」。

Uber Technologies IncのCEO,Dara Kowsrowshahi (撮影: Anindito Mukherjee/Bloomberg via Getty Images)

将来への長期的投資

Uberは1年以内に株式を公開するという選択をし、史上最も高値のユニコーンIPOとなるだろう。このTechCrunchサイトで詳しく報じてきたように、LyftとUberどちらも株式を発行する計画で、SlackやPinterestも同様だ。しかしこれら企業の多くが、株式市場が急激に下がる前に株式公開の決断を下している。軟調な株式市場は、ユニコーン企業がVCに保護された快適な場所から出てこようとするのを消極的にさせてしまうかもしれない。

ウォール街の投資家がUberの本当の価値を吟味し始めれば、Uberは彼らからさらに精密な調査を受けることになる。The Informationによると、Amazonが長らく利益よりも成長を優先してきたように、幸いにもUberは、“もし望むのなら、米国と発展マーケットでのマーケティング支出を減らしたり、自動運転車開発の財源でパートナーを探したりして、現金の栓をオンにするための明らかなレバー”を持っている。「そうしたレバーをひくことは売上の成長を3分の1ほどスローダウンさせてしまうかもしれないー純収益の33%の成長が2019年には22%成長に落ち込むかもしれない。[しかし]これは年間20億ドルの節約につながる」。

2018年第3四半期の決算では、Uberはプロフォルマ・ベースで9億3900万ドルの損失と、修正済みEBITDAで前年四半期から21%増の5億2700万ドルの損失を計上した。第3四半期の売上は前年同期比5%増の29億5000万ドルで、前年比では38%のアップとなった。

「我々の事業規模としてはグローバルで力強い四半期だった」とUberのCFO、Nelson Chaiは声明文で述べた。「今後IPOがあり、食品、貨物運輸、電動バイクとスクーターを含むプラットフォーム全体で、そして我々が引き続き主導権を握っているインドと中東というポテンシャルの高いマーケットで、将来の成長に投資している」。

我々はUberの評価額について何日でもあれこれ推測できるが、Uberの値がどれくらいになるのかは最終的に金融市場が決める。差し当たって我々ができることといえば、Uberが証券登録届出書S-1を大衆に開示するのを待つことだろう。

イメージクレジット: Bloomberg / Contributor / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

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TechCrunch Japan

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