2021年7月、東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)は、ディープテック創業者の多くが直面していると同社が指摘する問題に取り組むため、新たなプログラムをローンチしている。創業者たちは、インキュベーターやアクセラレータープログラムからプレシード資金を調達できても、アーリーステージのラウンドに進む前に資金ギャップに達してしまうことがある。資金がなければ、どんなに有望なテクノロジーであっても、商用化には時間がかかる。
東京大学をはじめとするアカデミアと連携している独立系ベンチャーファンドであるUTECは、このギャップに対処するために「UTEC Founders Program(UFP)」を開設した。フレキシブルな条件で最大100万ドル(1億円)を投資する「Equity Track(エクイティ トラック)」と、半年ごとに受領者に授与される約5万ドル(500万円、必要に応じ最大10万ドル[1000万円])の非希薄化型(ノン・ダイリューティブ)の助成金である「Grant Track(グラント トラック)」の2つのトラックから成る。
UFPのアプリケーションは、世界中のディープテック研究者や創業者に開かれている。
UTECは5月に約2億7500万ドル(約300億円)規模のファンドを立ち上げ、通常約100万ドルから500万ドル(約1億円~5億円)の小切手を発行している。同社が運用している資産総額は約7億8000万ドル(約850億円)に上る。UTECはサイエンスおよびテクノロジー企業向けの日本最大のベンチャーキャピタルファンドであり、アジア最大のディープテックファンドの1つであると同社は語っている。
ディープテック研究者や起業家からのフィードバックを受けて、同ファンドのパートナーらは、研究者や起業家が潜在的にインパクトのあるテクノロジーを開発したとしても、すぐにシード資金を調達できる状態にない可能性があることを認識した。今回のイニチアチブを通じて、多くのチームが、長いデューデリジェンスのプロセスを待つのではなく、テクノロジーの商用化の準備を続けるための迅速な資金調達からも恩恵を受けることになるだろう。
UTECのプリンシパルで、UFPのリーダーを務める小林宏彰氏とKiran Mysore(キラン・マイソール)氏は、TechCrunchに宛てたeメールの中で次のように述べている。「満たされない市場ニーズに応えるために新製品を生み出す起業家のように、UTECでは、サイエンスおよびテクノロジーの研究者や起業家のために、より機敏な形で新しい投資商品を提供するよう努めています。UFPは、UTECが15年以上にわたって培ってきたディープテック投資の経験と学習を、アーリーステージのテクノロジー商品化イニシアチブにつなげていこうとする試みです」。
Equity Track(エクイティ トラック)は主にシードおよびプレシリーズAのスタートアップを対象としており、SAFE、KISSやJ-KISS(日本版Keep It Simple Security)、転換社債、普通株といったフレキシブルな投資条件を提供している。年間を通して応募を受け付け、合格者には3日以内に一次面接が行われる。マイソール氏によると、デューデリジェンスと投資委員会のプロセスは、最初のインタビューから4週間以内に完了するという。
Grant Track(グラント トラック)は起業前またはアーリーステージのスタートアップを対象としており、資金はプロトタイピング、市場テスト、リクルートメントなどに利用できる。第1期募集は6カ月ごとに行われ、毎回約5チームが選ばれる。第1期の応募締め切りは7月31日で、決定は9月に行われる。
UFPに参加するディープテックチームは、115を超える日本および世界のスタートアップ、学術機関、政府機関、企業からなるUTECのネットワークへのアクセスも獲得することになる。
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画像クレジット:Yuichiro Chino / Getty Images
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(文:Catherine Shu、翻訳:Dragonfly)