VCと創業者たちの2021年に対する見方の違い

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。準備はOK?ここではお金の話、スタートアップの話、IPOの噂話などをお伝えする。

今週は、いつものようにバラバラなセクションを並べるのではなく、一連の大きなテーマやニュースに焦点を当ててお話ししよう。なぜかって?いつものフォーマットに収まりきらないものが多すぎたからだ。オリジナルレイアウトのファンだった方、来週は元に戻るのでご安心を。

今回は、Coinbase(コインベース)の成長、Juked.gg(ジュークドgg)がクラウドファンディングをいかに利用したのか、a16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)のメディアゲームの話、Talkspace(トークスペース)のSPAC、VCや創業者の2021年の予測、そして会社を設立するのに適した場所はどこか、といった話題を取り上げる。

では、詳しく見ていこう。

IPOを控えたコインベースへの入金額が拡大

消費者の支出に関するデータを提供するCardify(カーディファイ)の親会社であるDrop(ドロップ)の、Kazim Rizvi(カジム・リズヴィ)氏のおかげで、米国の暗号通貨プラットフォームCoinbase(コインベース)の入金が、どれほど急速に拡大したのかを知ることができた。Coinbaseが株式公開を申請し、最終的なS-1の申請が期待されている中で、Coinbaseが人びとに対して購入支援を行っている資産への興味が、どれほど急速に高まっているのかについての方向性を知ることができたことには興奮を抑えられない。

それは急速に拡大している。2019年1月の第1週を基準にすると、2020年12月の最終週には、Coinbaseからの入出金額が1回あたり12倍以上になっていた。これは驚異的な成長であり、データは週毎に多少変動があるものの(私たちはそれを正確な数字ではなく、方向性を示すものとして扱っている)、これはBitcoin(ビットコイン)が再びブームとなって、その取引への関心と消費者の需要が高まる中で、Coinbaseのような企業がどれだけうまくいっているかを強調している。

Cardify提供

Cardifyのデータはまた、同時期におけるCoinbaseの新規顧客獲得が大幅に増加し、ビットコインの価格と並行して入金が拡大していることを示している。最近Bitcoinが3万ドル(約311万円)台を突破し、ここしばらくの四半期よりもさらに急激に上昇していることから、この価格上昇がCoinbaseの2020年第4四半期の堅調な推移を助けただけでなく、おそらく2021年第1四半期も、同様に熱狂的な道へと導いたのだろう。

このデータを見るまでの私たちのCoinbaseのS-1に対する興奮度を100とするなら、いまやその興奮度は120だ。

eスポーツのコンテンツに、エクイティクラウドファンディングで100万ドル(約1億円)を調達

eスポーツは超カッコいいし、同意できないというならそれは間違いだ。だがその設問の答えに対して、どちらが正しいのかはここでは関係がない。市場はほぼ、対戦ゲームは時間と注意と投資家のお金を投入する価値があると判断しているからだ。

eスポーツリーグやゲームなどの急増は、バラバラで無秩序な状態へと陥っている。これは伝統的スポーツの世界でESPNが提供してきたような、中央のハブのようなものを欠いているからだ。

しかし心配は無用だ。Juked.ggが、eスポーツのためのコンテンツハブを提供するために、資金調達を行った。これにより、私のような年寄りでもいつトーナメントが開催されるかを知ることができ、インターネット上で日時を探し回ることなく、「League of Legends(リーグ・オブ・レジェンド)」や「Starcraft 2(スタークラフト2)」のプロプレイを楽しむことができる。

Juked.ggは500 Startupsの卒業生だ(そのクラスについての詳細はこちら)。Republicプラットフォームで100万ドル(約1億円)を少し超える資金を調達したJuked.ggは、大きな計画を練っている最中だ。

Exchangeは、Juked.ggの共同創業者でCEOであるBen Goldhaber(ベン・ゴールドハーバー)氏に、同社のこれまでの業績についての話を聞いた。ゴールドハーバー氏によれば、Jukedのユーザー数は2019年後半のローンチ時の500人から、2020年12月には5万人にまで増加しているという。この先Jukedはジャーナリズム、ソーシャル機能、ユーザーが作成したコンテンツなどにさらなる投資を行うかもしれない。Jukedは現在2524人の投資家から100万ドル以上の資金を得たが、そのビジョンが実現していくにつれて、私たちもよりたくさんのものを目にすることになるだろう。投資家の一人ひとりが、分散しながらも成長するエンターテイメントカテゴリーを統一するのに役立つ適切な製品を、Jukedが開発してくれることに期待しているのだ。

A16zによるメディアプッシュ

ここで長々と話すつもりはないが、VCがコンテンツを作ることは新しいことではない。First Round Review(ファーストラウンドレビュー)が世に出たのはいつのことだったろうか?A16zが考えているように見えるものは、規模は違うものの、内容に違いはない。もし興味があるなら、私たちがEquityポッドキャストでこの件について話している。

Talkspaceのおそらく無謀ではないSPAC

少なくとも新進企業と関わることの多いSPAC(特別買収目的会社)をからかうことは楽しいが(12345)、SPACによるデビューがすべて愚かしいものというわけではない。期日の迫ったTalkspaceの取引に関してはここから読むことができる。

重要なのは、このチャートだ。

よく見てほしい!歴史的な収益拡大!粗利率の改善!粗利の上昇!

おそらく、Hudson Executive Investment Corpとの合併後の同社は、14億ドル(約1453億円)もの企業価値は持っていないのではと考える向きもあるだろう。だが、まあ、それは少なくとも本当のビジネスだ。

VCと創業者たちは2021年をどう見ているのか

シードVCのNFXが、先日VCと創業者たちにアンケートをお願いしたが、その中に紹介したいと思うものがあった。興味があればここで全文を読むことができる。

ここでは2つの点を取り上げる。

  1. VCは創業者たちよりも経済に対して強気で、創業者たちの約30%が個人消費は横ばいまたは減少すると予想しているのに対し、これに同意したVCは約17%に止まっている。
  2. そして、ベイエリアを離れるというテーマに対しても、これまた同様に、創業者の35%が考えることがあるとしているのに対して、投資家では20%だけが同じような傾向を示している。これは、投資家はベイエリアに家を持っているのに対し、ほとんどの創業者たちは家を持っていないからだと思う。しかし、金も才能もすべてが去っていくという懸念は和らげてくれるだろう。そうではなさそうだ。

どこで起業すべきか

Initialized Capitalは、創業者が会社を設立するのに最適だと考えている場所についてのデータをまとめた。2020年には、調査対象となった創業者の42%近くがベイエリアだと答えている。2021年にはこの数字は28%強にまで落ち込み、42%が分散型企業を選ぶべきだと答えている。

これはアーリーステージの創業者からよく耳にする話だ。彼らはしばしば、私がマイクロマルチナショナル(零細多国籍)と呼んでいるかたちのものを作ろうとしている。小さな企業が、ある国に数人、そして他の国にまた数人という具合に従業員を抱えていくのだ。このセットアップでうまくやっていけることが、人事ソフトのホットスポットになると思う。

それとは関係なく、ベイエリアでの創業要件は厳しい。そこで創業するメリットはこれからも長く続くだろう。

次回予告

来週のExchangeで紹介するのは:新しい5000万ドル(約52億円)ARR(経常収益)シリーズの最初のエントリーとしてAssembly(アセンブリー)、SimpleNexus(シンプルネクサス)、Picsart(ピクスアート)、OwnBackup(オウンバックアップ)などのインタビューを掲載予定だ、また1億ドル(約104億円)ARRのインタビューもいくつかお届けする。

では、今週はこのあたりで。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:BitcoinIPO

画像クレジット:Nigel Sussman

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(翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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