野心的な宇宙観光旅行会社Virgin Galacticは、その事業を米国ニューメキシコ州のSpaceport America(宇宙港アメリカ)に移す準備ができたことを発表した。そこから同社の最初の商用フライトが離陸する予定だ。「ついにVirgin Galacticがニューメキシコ州にやってきました。世界を良いものにしていくために、共にここから宇宙へ飛び立ちましょう」とVirginの創業者リチャード・ブランソン氏は記者会見で語った。
Virgin Galacticとニューメキシコ州は、現時点では世界唯一の宇宙港の創設に協力していたので、この計画自体は唐突な話ではない。しかし、テストと研究開発用の格納庫から、実際の顧客が宇宙船に乗る場所への移動は、大きな節目となる。
本日の発表をもって、ニューメキシコ州は、私たちのこの美しい惑星で宇宙に定期的に人間を派遣する最初の場所の1つになるのです。私たちは宇宙船と運用チームをニューメキシコ州の@Spaceport_NMに移動させている最中です。
私はVirgin Galactic(VG)のCEOであるジョージ・ホワイトサイド(George Whitesides)氏に、動きが実際のところ何を意味するのか、そしてもちろんそれが本当はいつ行われるのかについて話を聞いた。
「私たちは、何年も前に行なった、世界初の専用宇宙港に商用の宇宙路線(Spaceline)を就航させるという約束を、果たしつあるところです」と彼は私に語った。「それは結局何を意味するのでしょう?まずは、宇宙飛行機(ホワイトナイトツーなどの発射用飛行機)が移動するということです。そしてそれらの宇宙飛行機を運用するために必要な様々な品々が集まってきます。そして、宇宙飛行機を運用するすべての人々、そしていわゆる顧客対応スタッフがいます。さらに、宇宙路線の運営に関連するサプライチェーン関係者と、核となるインフラストラクチャ関係者をすべて揃えることになります」。
現時点では、このかなり複雑なリストは実際には最大約100人程度になるだけだ。残りの従業員たちの大部分は、R&Dと新しい宇宙飛行機のエンジニアリングがThe Spaceship Companyとして継続される、カリフォルニア州モハーベに残ることになる。
「商用サービスに移行していく過程で、私たちは次に来ることについてより考えるようになっています。たとえば極超音速や、ポイントツーポイントの宇宙飛行などです」とホワイトサイド氏は語った。
とはいえ、VGは現在の宇宙船をまだ完成させていない。エンジニアが必要だと思うものに応じて、あと少々手を入れるところがあるだろう。しかしそれは「膨大な数」ではない。
ホワイトサイド氏によれば、現在のモハーベの施設からSpaceport Americaへの移動は、いくつかの理由から行われているのだという。まず第一に宇宙船はほぼ完成している。
「最後に行ったフライトで、私たちは基本的に、宇宙船機体の内装を含む完全な商業的なプロフィールをお見せしました」と彼は語る。「私たちは単に、宇宙に上がって降りてきたというだけではありません。ベス(フライトインストラクターのBeth Moses)が客席に搭乗していたので、彼女が乗客の役割を果たしてくれました。彼女は何度も起き上がって、歩き回ったので、私たちの客室の状態をチェックすることができたのです。こうしたことから、おそらく私たちは引っ越しを始めることができる段階に来たのだろうと考え始めたのです」。
FAAやその他の当局から課せられた事務手続きは順調に進んでいる。宇宙港に関しても、少なくとも滑走路、燃料インフラ、通信機器などのような大変な部分の準備は整っている。現在は、内装のために、カーペットの色を選び、壁掛けディスプレイや冷蔵庫を買う必要に迫られているようだ。
「しかし、関わるひとたちの視点がこのためには大切です」とホワイトサイド氏は続けた。「だれもが家族をもち、子どもがいます。私たちが考えていたのは、夏の間に引っ越すのが良いのではないかということでした。そうすれば学年の途中で学校を変わる必要がありませんからね(米国は9月から新学年に切り替わる)。いまから移動を開始すれば、従業員たちはニューメキシコ州のコミュニティに、より簡単に溶け込むことができるでしょう。そこで私たちは『よし今やろう』と決めたのです。それは大胆な選択であり、大きなことではありますが、正しいことなのです」。
そして、VMS EveとVSS Unityといった宇宙飛行機(弾道宇宙船を上空へ運ぶ役割を果たす)の方はどうだろう?どのように現地にやってくるのだろうか?
「それが空中発射システムの優れた点です」とホワイトサイド氏は言う。「ある意味で最も簡単な部分なのです。他のものがすべて落ち着いたら、お互いの目を深く覗き込んで『準備はできたか?』と言うことでしょう。そうしたら宇宙船を搭載して出発するだけです。それは宇宙船そのものよりも長い距離を飛行するように作られています。ですからその日の運行はモハーベで始まり、ニューメキシコで終わることになるでしょう」。
そこは素敵な拠点になるだろう。イギリスのFoster&Partnersによって設計された宇宙港は、砂漠から立ち上がる極めて目立つ形状をしていて、商業宇宙路線を運営するのに必要な、すべての設備を備えているに違いない。おそらくその目的に使われる世界で唯一の場所だ。その目的として使われてこそ意味がある。
「私達は水平に離着陸を行うので、地上から見ると、運用上は基本的に空港のように見えます。これまでで、もっともクールな空港ですが、空港であることは間違いありません」とホワイトサイド氏は語る。「大きくて美しい滑走路があります。しかし同時に地球から宇宙への通信リンクである特別なアンテナにも気が付かれるでしょう。管制塔の代わりに司令室がありますし、もちろん酸化剤のタンクやロケット推進に関わるインフラなどの、特別な地上タンク設備もあります」。
宇宙港を取り囲む空域もまた、地表から無限の高さまでずっと制限されている。これは、フライトが複数の飛行レベルにまたがる場合に役立つ。「そして、この場所はすでに標高1マイル(約1600メートル)なのですが、それは資産ということです」とホワイトサイド氏は述べた。宇宙に1マイル近い…まあ少しは便利だろう。だが悪い話ではない。
実際の移動作業は夏の間に行われるだろう。残りのテストフライトはまだ予定されていないが、すぐに動きはあるだろう。そしてそして初の商用フライトが決まったとき、間違いなくそのことを耳にすることになるだろう。
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(翻訳:sako)