Visa(ビザ)は米国時間1月13日、金融サービスAPIスタートアップであるPlaid(プレイド)を53億ドル(約5800億円)で買収すると発表した。
Plaidは金融サービスAPIを開発している。Stripe(ストライプ)が支払いのために提供しているサービスと似ているが、こちらのサービスは支払いを容易にする代わりに、開発者が銀行やその他の金融情報をより簡単に共有できるようにする。Visaのような会社にとっては意味のあるサービスだ。
このスタートアップは、銀行業務だけでなくより広範な金融サービスと投資に移行するために、2年前にQuovoを買収している。もともとのアイデアは、金融サービスプロバイダーたちに対して、より包括的なプラットフォームを提供することだった。創業者たちは、その買収時にブログ記事に以下のように書いている。「これまで様々な金融アプリケーション群が、Plaidを主に当座預金口座と普通預金口座とのやり取りに使用してきました。Quovoを買収することにより、私たちはより幅広いクラスの資産に対して機能を拡張することになります」。
買収は規制当局の承認待ちで、今後3〜6ヵ月で完了する予定だ。
買収価格
今回のPlaidの出口価格は、これまで合計で3億1000万ドル(約341億円)を投じてきた投資家たちにとって大勝利となるものだった。これまでのラウンドで最も重要だったのは、2018年後半に行われた2億5000万ドル(約275億円)の投入だった。IndexとKleinerがそのラウンドを主導し、Plaidを26億5000万ドル(約2920億円)、すなわち今回の最終買収価格の50%だと評価していた(この比率が偶然だとは思えない)。
後に明らかになったが、そのときにはMastercardとVisaもラウンドに参加していた。TechCrunchは2019年に、2つのペイメントの巨人たちが「ラウンドに静かに参加した」と報告している。
これらの投資が、Visaに十分な情報取得権を与えられるほど十分な金額だったのかは、はっきりしない。だがクレジットカードの巨人である両社は、投資を行う前に比べて、Plaidが何をしていたかについてより多くの情報を得ている。ともあれ、Plaidは未公開会社として上手くやっているのだと推測することはできる。なにしろ自らのコアビジネスと競合させないために、あるいは主要な競合他社から遠ざけるために買収する場合を除いて、ある企業に対して数十億ドルにも及ぶ評価額のさらに倍額を支払う者はいないからだ。
今回のPlaidは、その両方かもしれない。
Twilioとの比較
Plaidはしばしば、縁の下の力持ちとして活動し、他のプレーヤーのビジネスを支援するAPI提供企業であるTwilioと比較される。アーリーステージにいるNoyoは、ヘルスケア情報と保険のためのAPIで同様のことを行っている。前述のとおり、Stripeは似ているサービスを提供しているが、彼らがカバーするのはペイメントだ。こうしたモデルは、公開会社として急騰したTwilioにとって有利だ。Plaidの巨大なエグジットは、この種のスタートアップにさらなる輝きを与えることだろう。
ただし、Twilioとは異なり、Plaidはまだプライベートな状態で購入されたため、その数字を詳細に見ることができなかった。利益率の高い収益が、この先伸びて行くと予想される。それは公開、未公開を問わず、すべての企業が切望していることだ。
しかしながらVisaは、この取引に対してさらに何かを求めている可能性がある。つまり、現在Visaが事業を展開している世界を再発明しようとする成長率の高い非公開企業たちの視点を、同社は手に入れたということだ。Plaidの買収は、Visaの危機に対する保険であり、またどの企業を買収すれば良いかを知る方法でもある。
しかし現段階においては、この買収はPlaidの株主(や従業員)たちにとっての勝利だ。
[原文へ]
(翻訳:sako)