Y Combinatorの最新のデモデーでは乳がんを発見するウェアラブルから代替肉製品向け産業用サプライチェーンの構築まで多くのチームが多様なイノベーションを競った。ここでは1日目でわれわれが注目した10チームを紹介する(YC Demo Day 2018に登場した全63社の紹介はこちら)。
Oxygen
フリーランサーは口コミによるいっときのブームとその後の落ち込みというサイクルに縛られがちだ。 Oxygenは収入のないフリーランサーに簡単な審査で資金を融資する。 内国歳入庁1099号による契約社員は既存の金融システムの融資から閉め出されているが全体として1.4兆ドルもの収入がある。Oxygenはこうした社員の雇用者にも進んで融資する。Oxygenはモバイルバンキングだが手数料は一定だ。与信審査には機械学習アルゴリズムが用いられる。万国の契約社員よ、団結せよ!
注目の理由: オンライン・レンディングに新たな市場を開く可能性がある。適切に運営されればこの市場は数十億ドル規模に成長するはず
Higia
EVAとよばれるウェアラブル・デバイスは女性の胸部をサーマルスキャンし、非侵襲的方法で乳がんを発見できるものとHigiaでは期待している。スポーツブラなどの下にも装着可能で、現在のスクリーニングでは見逃されれがちな乳がんの早期発見に役立つ。同社はすでに今年中にアメリカで発売の予定。価格は299ドル。スタンフォード大学で治験中。
注目の理由: このツールが消費者に負担をかけない手頃な価格で実際に乳がんを早期発見できるとなれば市場は大きい。投資家にとっても世界にとっても朗報となるはず。
C16 Biosciences
パーム(ヤシ)油は食用その他日常生活のあらゆる面で大量につかわれているが、製造過程で熱帯雨林の破壊などさまざまな環境問題を引き起こしている。C16 Biosciencesは温室効果ガスの大幅削減など世界規模でパーム油による環境破壊の防止を目指す。C16では醸造テクノロジーを利用による工業的なパーム油の製造によりコストも20%安くできると期待している。
C16はすでに多数の化粧品、食品企業と提携しており、これらの企業は合計で年間12億ドルもパーム油を購入しているという。
注目の理由: ベンチャー投資のサイクルでは最近、「クリーンテック」が再浮上している。もともと伝統と実績がある醸造技術をベースにしたテクノロジーをパーム油製造に応用した点が新しい。
JITX
JITXは回路基板の設計サービス。現在は熟練した専門家が手作業で回路基板をデザインしているが、JITXのソフトウェアではこれを機械学習に置き換えようとしている。ハードウェア・メーカーにとっては時間とコストの大幅節減となる。JITXはすでに回路基板の自動設計システムを販売しており、HPを含め(さらにもう1社の有力企業は匿名)多数の企業がユーザーとなっている。バークレーを本拠としており、市場は92億ドルといわれる。コストはマニュアル設計の20%程度。
注目の理由: このスタートアップはすでに投資家の間にセンセーションを巻き起こしている。最新のラウンドでは$80万ドルを調達する予定だが、予定の3倍の投資家が殺到したという噂だ。簡単に言って、あらゆるハードウェアの基礎を製造する技術を大きく改良するテクノロジーだ。
HoneyLove
HoneyLoveは安価で実際に効果がある製品によりシェイプウェア〔体型補正下着〕市場をディスラプトしようとしている。
89ドルからのプロダクトは シームに補強材が内蔵されており、(鯨のヒゲなどによる)ボーンを内蔵した昔のコルセットに似た構造だ。HoneyLoveの補強材は柔らかい繊維のチューブの中に通されており、不快感を与えない。これにより装着時にずり上がったりずり下がったりすることを防いでいるという。同社はすでに50万ドルの売上を得ている。
注目の理由: 市場が大きいだけでなく、同社の成長ぶりは今後に強く期待させるものがある。
Camelot
Camelotはeスポーツを対象とするギャンブルを目的としたモバイル・アプリだ。ビデオゲームとスポーツギャンブルの交差点は高い利益を生むことが間違いない分野だ。
注目の理由: スポーツ・ギャンブルはすでに少なくとも10億ドル級のビジネスを生んでいることからしても、eスポーツのギャンブルも同程度の成長が見込める。
Inokyo
Inokyo〔トウキョウと似た発音〕はAmazon Goに似たキャッシャーレス店舗を実現しようとするスタートアップだ。多数のカメラが店内の消費者をモニターし、棚から何を取り出したかを認識する。ストアからの出入りの際にそれぞれ1度ずつモバイルアプリに表示されるQRコードをスキャンさせるだけで支払いは完了だ。
最初の店舗は最近マウンテンビューのカストロストリートにオープンした。スナック、昆布茶、プロテインパウダー、入浴剤などを売っている。
注目の理由: AmazonやAlibabaが独自技術で開発したキャッシュレス・ストアのテクノロジーをホワイトレーベル化して広く販売するというビジネスモデルは一般店舗に魅力的。大きな市場を開拓できるかもしれない。
Hepatx
Hepatxは重症の肝炎のあたらしい治療法の提供を目指す。慢性肝炎の患者はアメリカで390万人も存在し、毎年4万人の死亡原因となっている。同社では肝細胞に再生医療テクノロジーを適用して治療をする。肝細胞再生は肝臓全体の移植に比べてコストと死亡率を押さえる効果が期待できる。アメリカで肝臓移植が必要な患者は20万人もいるが、実際に移植を受けられるのは数千人に過ぎない。Hepatxは患者の脂肪細胞から肝細胞を再生し、患者の肝臓に戻すことによって肝機能の再生を図る。
注目の理由: 新しく肝細胞を作り出すというのは文字どおり生死を分ける重要なテクノロジーだ。ファウンダーチームは優秀であり、初期の治験結果も有望だ。ホームランになる可能性十分。
Cambridge Glycoscience
代替甘味料でクッキーなどを焼こうとして失敗したことはないだろうか? 甘みを真似することはできても高温でカラメル化したり飴化したりするのは砂糖に特有の現象だ。そこでYCのスタートアップ、Cambridge Glycoscienceでは文字通りおいしい解決策を提案している。 同社の代替甘味料は味を損ねずに低カロリーの料理をメインストリームにできる。コーンシロップなんか投げ捨てて新しい甘味料を試してみよう。同社の製造プロセスは大量生産に向いており、イノベーションの多くの部分は特許によって保護されている。
注目の理由: FortuneがLancetを引用した記事によれば74%前後のパッケージ食品や飲料にはなんらかの甘味料が使用されており、マーケットの規模は1000億ドルと見積もられている。 Cambridge Glycoscienceがその一部を代替できるなら大いに有望なスタートアップといえるだろう。
Seattle Food Tech
自然肉よりおいしい植物製の代替肉はもはや現実のものとなりつつある。投資家は何千万ドルもの資金をこの分野につぎ込んでいる。Seattle Food Techは植物性代替肉を大量生産するためのプロセスを低コストで構築できるようにることを目標としている。
「われわれは植物性チキンナゲットを製造するプロセスに宇宙航空テクノロジーを応用している」とCEOのChristie Lagallyは述べている。Lagallyは元ボーイング社のエンジニアでテクニカル・プロジェクト・マネージャーを務めた。
注目の理由: Seattle Food Techは代替肉の製造という大きなマーケットで産業レベルのサプライチェーンを確立できる可能性がある。
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