YouTubeはケーブルテレビ*よりも大きい。もっと正確に言うと、YouTubeは18-49歳という中心的な年齢層において、合衆国のどのケーブルネットワークよりも視聴者数が多い。Googleは昨日行われた決算報告の場でそう述べた。昨日は市場筋の期待を上回る2015Q2の結果によりGoogleの株価は跳ね上がったが、YouTubeの好調と、とくにモバイルの視聴者数の増大が、それに大輪の花を添えていた。〔*: ケーブルテレビ, アメリカ人の主なテレビ視聴方式。〕
GoogleのCBO Omid Kordestaniによると、YouTubeのホームページのビジターは前年比で3倍以上に増加し、また彼らのビデオ視聴時間もこれまで以上に長くなっている。視聴時間の対前年増加率は60%となり、これは過去最速の成長である。そして、とりわけモバイルの視聴時間は倍以上に増加している。
モバイルの一回のアクセスにおけるユーザの平均滞留時間は40分を超え、昨年より50%以上増加した。
これらの数字は、広義のビデオコンテンツの消費の仕方が大きく変わったことを表している。すなわち、リビングルームで大画面のテレビを見る時間が減り、携帯電話やタブレットなどそのほかのプラットホームへ視聴行動が移行している。とくにYouTubeの平均滞留時間の長さは、そこがもはや、友だちなどに教えられた特定のビデオだけを見る場所ではなく、複数のビデオを連続的に見る場になっていることを、示している。
YouTube自身もこのところ、おすすめ機能を充実し、またユーザが自分の好みに合ったビデオを見つけるためのツールを提供するなどして、ビデオコンテンツの発見プラットホームの性格を強めているが、それらの策の成功も、滞留時間の増加に貢献しているものと思われる。
とくに若い人たちにとっては、今やYouTubeがテレビの代わりだ。Miner & Co.の最近の調査によると、テレビはもはや子どもたちが真っ先に挙げるエンタテイメントではなく、親たちの57%が、子どもたちはテレビよりもモバイルデバイスでビデオを見ることを好む、と報告している。また、タブレットがある家庭の58%で、子どもたちも自分のタブレットを持っているが、その半分は“しつけ”のために親にタブレットを取り上げられて、代わりにテレビを見ている。
この調査報告書は、“今の子どもたちにとってテレビは罰だ”、と皮肉な書き方をしている。
今ティーンたちのあいだでは、ハリウッドのメジャー級のスターよりも、YouTubeのスターに人気があり、ティーンに対する彼らの影響力も大きい。しかし、テレビよりもモバイルの小さな画面でYouTubeを見る、という移行が起きているのは、子どもたちだけではない。スマートフォンの大画面化や、4Gの普及、そしてコンテンツの質の向上、といった最近の動向に伴って、大人たちの視聴も増加している。
eMarketerのデータによると、合衆国の成人は2015年に、一日に5時間31分、広義のビデオコンテンツを見ているが、そのうち1時間16分は、コンピュータやモバイルデバイスやゲーム機の画面だ。また合衆国成人のモバイルでビデオを見る時間は、2014年の1日30分から今年は39分に増加している。
テレビの視聴が減って、モバイルOTTやインターネット上のYouTube時間が増えるということは、企業が投ずる広告費もそっちへ移行していることを、意味している。
Googleの広告販促イベント”BrandCast”(テレビ業界の用語で言えば“upfront”)は、昨年に比べて今年、コミットメントが3倍に増加した、とGoogleは主張している。そしてYouTube上に広告を出稿する企業数は、昨年に比べ40%あまり増加している。またYouTube上の上位100社のアドバタイザーの一社平均広告費は、前年比で6%以上伸びている。
今年の初めにWall St. Journal紙は、YouTubeはまだ赤字だと報じたが、実際には赤字というより、2014年は約40億ドルの売上で損益ほぼゼロだ(赤字でも黒字でもない)。
Googleは昨日、YouTubeの収益性に関する質問をかわし、CFO Ruth Poratは、利益額を個々のプロダクトごとに分類して公表することはしない、と述べた。しかしそのとき同時に彼女は、YouTubeの視聴者数の急増によって、アドバタイザーのドルがテレビからYouTubeへ移行し始めている、と述べ、“これで察してください”という顔をした。
そしてPoratは、“この機会に乗じてもっと大きな広告予算がYouTubeに割かれるよう、努力したい”、と語った。