Zoomでの会話を自動で文字起こしする難聴者の新しいスタートアップ「Scribe」

Optimizely(オプティマイズリー)の共同創業者Dan Siroker(ダン・シロカー)氏は、自身の新しいスタートアップScribe(スクライブ)のアイデアはいくつかの個人的な体験に端を発していると話した。そして、Scribeの初のプロダクトはZoom(ズーム)にフォーカスしているが、そうした個人的な体験はまったくZoomに関連していなかったとも述べた。

シロカー氏は、耳が聞こえなくなり始め、補聴器を装着した時に初めて「ひらめき」を得て、失うだろうと思っていた聴覚が回復したことを回想した。

「それは本当に、体が自然に失うものを増強するための機会について考えさせる閃光でした」と話した。

また同氏は、特に自身がアファンタジア(頭の中に視覚的イメージを描けないこと)を抱えていて、それは「特定の物事を記憶しておくことを難しく」するため、記憶は明らかな増強するものの候補だったと付け加えた。

シロカー氏が2010年にPete Koomen(ピート・クーメン)氏とOptimizelyを設立し、2017年にCEO職から退き、そして同スタートアップが2020年Episerverに買収されたと書くと、思い出す人もいるかもいるかもしれない(そしていまEpiserverそのものがOptimizelyにブランド変更されている)。

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早送りして現在に目を向けると、シロカー氏はいまScribeのCEOだ。同社は初のプロダクトのサインアップを受け付けている。そのプロダクトをZoomミーティングに統合すると、ミーティングを検索可能なものに、そして筆記録をシェアできるものに変える。

シロカー氏は筆者とのZoomコールの際にそれをデモンストレートしてみせてくれた。Scribeはミーティングに追加の参加者として現れ、リアルタイムの筆記録を作成しながら録画と録音をする。ミーティングの間、あるいは終了後にユーザーは筆記録を編集したり、録画の関連する部分を視聴したり、重要な箇所にハイライトをつけたりできる。

テクノロジー的な視点からいうと、これらはすべて飛躍的な前進ではなさそうだ。しかし筆者はエクスペリエンスのシームレスさに感激した。追加の参加者を加えるだけで、フル録画でき、後にそしてこの記事を書く間にも確認するのに使える検索可能な会話の筆記録を手にすることができた。

画像クレジット:Scribe

Scribeはミーティングを録画するが、テープレコーダーというよりノート取りの代わりであって欲しいとシロカー氏は話した。

「あなたと私がミーティングにいて、私がペンと紙を持ってそのミーティングに参加し、あなたが言っていることを紙に書きます。それは完全に社会的に受け入れられることです。ある意味、相手を喜ばせるものでもあります。その代わり、テープレコーダーを持ち込んであなたの前にどすっと置いて録音を始めると、もしかするとこうした経験を持っているかもしれませんが、それはかなり異なるもののように感じます」。

シロカー氏の主張の要点は、Scribeのレコーディングと筆記録は編集でき、いつでも個々の構成要素をオンにしたりオフにしたりできるということだ。

「これは永久記録ではありません。ミーティングを持つ時のように作る、ちょうどGoogle Docのような共有アーティファクトで、いつでも戻って変更を加えられます」。

とはいえ、Scribeが恥ずかしいコメントを録音することは可能で、録音はミーティング参加者をトラブルに陥れる事態を引き起こすかもしれない(結局、リークされた企業のミーティング録音は数多くの刺激的なニュースになってきた)。シロカー氏はそれが「一般的ではない」ことを望んでいるが、もし時々起こるとすればある種のさらなる透明性と責任を生み出すかもしれないと主張する。

ScribeはOpenAIのCEO、Sam Altman(サム・アルトマン)氏がリードしたラウンド、そしてFirst Round Capitalがリードしたラウンドで計500万ドル(約5億4000万円)を調達した。

画像クレジット:Scribe

シロカー氏は、ZoomをScribeにとって単に「上陸拠点」としてとらえていると筆者に語った。次に同社はGoogle MeetやMicrosoft Teamsのようなプロダクトのサポートを追加する。ゆくゆくは、組織のための新たな「集合精神」の構築を同氏は望んでいる。そこでは、会話や知識が検索可能なためにみんなが「よりスマートで向上している」。

「どこで考えるかに本当に左右されるものを追求するところでは、我々は最大のポジティブな影響を人々の暮らしにもたらすことができます」と同氏は述べた。「配偶者と交わす個人的な会話に適用するのは難しいですが、価値とプライバシーとコントロールの正しいバランスを求めれば、実際にはウィンウィンの方法でこれを人々に浸透させることができるかもしれません」。

そしてもしScribeが幅広いコンテクストにある情報を我々が記録したり思い起こしたりするのをサポートするというミッションを実際に達成すれば、我々の物事を記憶するという自然な能力に影響を及ぼすのではないか。

「イエスというのが答えで、それはオーケーだと思います」とシロカー氏は答えた。「あなたの脳のエネルギーは限られています。何週間か前に誰かが言ったことを覚えておくことは、コンピューターでもできることです。それを行うのになぜあなたの大事な脳のサイクルを無駄遣いするのでしょうか」。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Scribeビデオ会議Zoom文字起こし資金調達

画像クレジット:P Getty Images

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(文:Anthony Ha、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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