ZOTACの手のひらサイズのカード型PC「PI225」の処理性能と発熱をチェック

ZOTACは香港のPC Partner Group Limited傘下のコンピューター、周辺機器メーカー。もともとはグラフィックカード専門メーカーとして設立されたが、現在はゲーミング、オフィス向けのオリジナルPC、ミニPCなどを販売している。今回レビューする「ZBOX P」シリーズの「PI225」は、同社のミニPCの中でも最薄・最小となるカード型PCだ。

ZOTAC「ZBOX P」シリーズ「PI225」(税別価格2万9800円別)

フットプリントはクレジットカードの約1.3倍

ZBOX Pシリーズ PI225の最大の特徴はなんと言ってもそのサイズ。国際規格「ID-1」で定められたクレジットカードのサイズである縦53.98×横85.60×厚さ0.76mmに対して、本製品のサイズは縦63×横95.4×厚さ8mm、重さは80g。フットプリントで比較するPI225はクレジットカードの約1.3倍の大きさということになる。

クレジットカードとほぼ同サイズのSuicaカードと並べてみると、本製品の小ささを実感できる

低価格PC向けのCeleronプロセッサーを採用

OSは64ビット版Windows 10 Pro、CPUはGemini Lake世代のIntel Celeron Processor N4000(2コア2スレッド、1.10~2.60GHz、TDP6W)を採用。メモリーは4GB(LPDDR4)、ストレージは64GB(eMMC)を搭載している。

Celeronは低価格PC向けのプロセッサーであり、処理性能の高さは期待できないが、64GBのストレージを搭載している。あまり多くのアプリをインストールせず、大容量データをmicroSDメモリーカードに保存すれば、本体ストレージの容量が足らなくて「Windows Update」を実行できないことは当面ないはずだ。

パッケージには、本体、VESAマウント、固定ネジ、ACアダプター、ユニバーサルプラグ×4、OSリカバリー用USBメモリー、クイックスタートガイド、ユーザーマニュアル、保証書、USB 3.0 Type-C変換アダプターが付属する

カード型だがアダプターを使えばインターフェースは十分

本製品はカード型だが、インターフェースはUSB Type-C×2、microSDメモリーカードスロット、DC電源入力端子と必要最低限のインターフェースが備えられている。またUSB 3.0 Type-C変換アダプターを装着すれば、USB Type-A×2、HDMI端子を増設可能だ。ネットワーク機能は、IEEE802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth 5に対応している。

本体表面には「ZOTAC」のロゴが入っている

本体裏面には認証情報や型番、シリアルナンバーなどが記載されている

本体上面(上)にはmicroSDメモリーカードスロット、本体下面(下)には電源ボタンが配置されている

本体右側面(上)にはDC電源入力端子、本体左側面(下)にはUSB Type-C端子が2基用意されている

USB 3.0 Type-C変換アダプターにはUSB Type-A×2、HDMI端子が備えられている

スマートに設置するならBluetoothキーボード&マウスがお勧め

今回本製品を使用するにあたって、モバイルディスプレーとUSB Type-Cケーブルで接続し、USB 3.0 Type-C変換アダプターを装着してキーボードとマウス用のUSBドングルを取り付けた。ただし、Bluetooth対応キーボードとマウスを使えば、USB 3.0 Type-C変換アダプターは不要となりもっとスマートに運用できる。

これが今回のテスト環境。もしUSB 3.0 Type-C変換アダプターなしでテレビなどと接続したい場合には、「USB Type-C to HDMI変換ケーブル」などを用意しよう

Bluetoothキーボードとマウスをペアリングすれば、USB 3.0 Type-C変換アダプターなしのスマートな環境を構築できる

ベンチマークスコアは低め、ブラウジングや動画視聴用途ならOK

最後に処理性能をチェックしてみよう。デフォルトのBIOS設定では「Features」→「CPU Configuration」→「CPU Power Management」→「Turbo Mode」が「Disabled(無効)」になっていたので「Enabled(有効)」に変更したうえでベンチマークを実施している。

さて、CPU、OpenGLベンチマーク「CINEBENCH R15.0」のCPUスコアは119cbにとどまった。これは最新のCore i5、i7プロセッサーの1コアにも満たないスコアだ。

しかし、Chromium ベースの新しい「Microsoft Edge」をインストールしてみたところ、ブラウジングでは5秒前後でトップページが表示され、YouTubeも動画の読み込みや全画面表示への切り替えに時間がかかるものの再生自体はスムーズだ。用途を限定すればなんとか実用的に活用できるだろう。

CPU、OpenGLベンチマーク「CINEBENCH R15.0」のCPUスコアは119cb

3Dゲームベンチマーク「ファイナルファンタジ-XIV: 漆黒の反逆者 ベンチマ-ク」を「1024×768ドット 標準品質(ノ-トPC)」という設定で実行した際のスコアは1457

ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 7.0.0」のシーケンシャルリード(Q8T1)は306.39MB/秒、シーケンシャルライト(Q8T1)は208.45MB/秒

「ファイナルファンタジ-XIV: 漆黒の反逆者 ベンチマ-ク」実行中、サーモグラフィーカメラで計測したところ表面温度が最大65.1度に達していた(室温24.3度で計測)。室温が高いときはあまり負荷の高い処理は実行しないほうがよさそうだ

自由に参入できるWindowsだからこそ実現できたカード型PC

Macで最もコンパクトなのは幅197×奥行き197×高さ36mmのMac mini。PI225と同じぐらいのサイズの「Mac card」なんて製品が発売されたら注目を集めそうだが、Apple(アップル)が本製品のようなニッチなジャンルに参入するとは思えない。PI225は、ハードウェアメーカーが自由に参入できるWindowsだからこそ実現できたカード型PCと言えるだろう。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。